木曜日の漂浪【第1回】下今市~宇都宮~祖母井
年末。冬のコミケに向けた原稿が忙しすぎて全然出かける隙がなかったので、コミケの直前ながら、半ば無理矢理に漂浪したものである。
~下今市駅
「久しぶりに宇都宮ライトレール乗りに行こう」と思い、東武電車に乗った。神奈川側から宇都宮へ電車で行く場合、一般にはJRの在来線で充分に行ける範疇である(新幹線による時短効果も限定的)。が、自分は東武電車で行くのが最も好きである。
このくらいの下り電車はちょうど埼玉県内の通勤通学ラッシュにあたり、武蔵野線と交錯する新越谷あたりから電車はかなり混雑する。「下りでもこんなに混むのか」と他所の住民からすると意外なところもある。
この時間帯は「区間急行」と「準急」が走っている。どっちが速いのかイマイチよく分からない名前達。
かつて東武には「快速」という長距離電車が走っていた。この急行はその名残で、当時の快速に近いダイヤで北関東を駆け抜ける電車である。
ただ、いつ乗っても座席は埋まっていない。実は混む日があるのかもしれないが・・・何れにしても、適度な混雑で日光方面へ行ける良い電車である。南栗橋まで来るのが面倒ではあるが・・・
この「北関東をひたすら北上する」のが堪らないほど好き。JRほど速度は出ないものの、急行は10分以上無停車の区間も多く、とても軽快。
東武で宇都宮へ行く場合、新栃木駅から支線が分岐するので乗り換える必要があった・・・のですが、あまりにも心地が良いのでそのまま乗車継続。
まぁこっからでも宇都宮へ至るルートはあります。
ちょうど着いたタイミングで下今市駅では車両故障が発生。特急電車がホームを1つ塞いでしまっており、混乱が起きていた。東武ご自慢のSLも発車が遅れるという。バスまで時間があったのでしばらく観察した。
下今市駅は「日光方面」と「鬼怒川方面」の分岐点で、線路構造の都合から、ホーム(線路)が一つ塞がれてしまうと、全部詰まってしまうらしい・・・
下今市→宇都宮ライトレール
駅からバス通りは徒歩5分程度離れている。バスが駅前へ入ってこないのはよくある事である。
意外と新しい観覧車らしいのだが、こういうのがいきなり出現する方がよほど昭和レトロっぽいんですよね・・・
下今市から宇都宮へは路線バスで行くことが可能。時間帯によっては1時間に1本程度ある。・・・が、通しで乗る人は皆無と思われる。時間かかるし、高いし(1320円)、そもそもJRあるし・・・
確かに長い距離のバスは高いのであるが、他に人が全然乗っていないことも多く、実質タクシーみたいな状況と化してしまう事を思えば、安いものである(利用が少なくて存続が不安になるものの・・・)
このようなバス路線の利用状況をログに取るのが結構好きなんです。
宇都宮駅へ到着。
だいぶ数は減ったものの、宇都宮駅前にはまだ古いバス(平成初期くらいの形)がちらほら顔を見せていた。
駅前の餃子屋で無難に昼食。名物の餃子であるが、注文してすぐに出てくる。ので客の回転も早く、多少の行列なら並んでもよい。
宇都宮駅からは久々のライトレール乗車。乗客数が予測を大きく上回るなど快進撃がしばしば報道されている。この日も平日昼間にも関わらずそこそこ混んでいた。
平石電停。車庫最寄で現状はなにもないが、近い内に再開発が予定されている。変化を記録するために下車した。
飛山城跡電停。鬼怒川を渡った所にポツンと設けられた駅で、駅周辺には自販機すらないが、車~電車の乗り換え拠点として意外なほどに繁盛している模様。当初のライトレール整備計画では表立って「乗換拠点」とされていなかった電停だけに、嬉しい誤算というか、人の流れって実際に電車が走り出さないと分からないもんですね。
駅前になにもないので、電車が自由に撮れる。
なんてことない事ですが、開発が進んだ駅前を見ることは多くても、昨今は新線開業も珍しいので、こういったシチュエーションは中々撮れないものです。開発が進んでくるとまた景色も変わりそうなので、今のうちに・・・
宇都宮ライトレール~祖母井
以上のように「利用が盛況」な宇都宮ライトレールであるが、一点、フィーダーバスとの乗換利用推進はあまりうまく行っていない。発表されている利用実績をみても、当初の予想を下回っている。
ライトレール沿線だと「LRT+バス乗継」を想定してた利用者が「歩いて電停まで来てしまう」現象も発生しているようである。現に地図上では駅前に住宅がない「グリーンスタジアム前」などは、地元住民と思しき人が下車し、歩いて去るのを何度となく見ている(近くには住宅街があり、歩くと10分少々か)。電車が12分間隔で走っていながら、バスは1時間に1本なので、歩いてしまうのだろうか。非常に難しい話である。
バスとの乗換利用促進のためと思われるが、乗車時点の宇都宮ライトレールでは「全ての1日券に、バスの往復無料チケットが付属」するキャンペーンが行われていた。かなり異例な事である。
せっかく無料なのでバス往復・・・で、早速「問題点」を見てしまう。「電車とバスの乗換が遠い」のだ。上の写真や、地図をみると電停からバス停は非常に近いのであるが、交通量のある交差点の信号サイクルがかなり長く設定されており、横断に「とても待たされる」のである。
0:00電車から下車
3:00横断歩道(1)が青になり、渡る
4:30横断歩道(2)が青になり、渡る
5:00バス停に到着
以上は実際に移動記録を取ったものであるが「目の前なのに乗換に5分かかる」のである。
また電車側にも問題があり「時刻表にバス乗継接続が明記されていない」のである。個別に接続時刻表が公開されているだけでも有情ではあるが、もう一歩踏み込んだ表記が欲しいものである。
(上記は富山駅・富山港線の時刻表であるが、フィーダーバスへの接続がある電車は、時刻表に明記されている)
そんな乗継を終えてJRバスに乗車。ライトレールが出来る前は宇都宮駅まで行っていた路線が、電停との接続点までに短縮されたものである。しかしガラガラである・・・
バス無料チケットで指定された「芳賀温泉ロマンの湯」で下車。道の駅と温泉が併設された観光スポットの眼の前である。
しかし直に「道の駅」へ行くのはアレだな・・・と思い、市街地を一周する事とした。
たぶん「難読バス停」である祖母井。バス停の付近には不自然な空き地が広がっているが、一昔前は「自動車駅」と呼ばれる駅舎が建っていたそうである。建ってる頃に来たかった・・・
祖母井の市街地は「小ざっぱり」というか綺麗に整備されていた。区画整理が行われたようである。ので、古い商店街の建物はあまり残っていない。
旅行者視点からすれば残念であるが、この状態が現在の「旧市街地」の現実に寄り添った姿なのだと思うし、現に盛業中の店もいくつかあった。
旧市街地をそのまま歩くとバイパス沿い、スーパー等が集まったエリアへ出る。祖母井の実質的な中心部はこちらだろう。
バイパスは交通量も多く、非常に賑やかであった。
と同時に、これは「公共交通を利用せずに生活している世界」である。日本全国で非常によくある風景がここでも見られる。果たしてこれら車利用者のうち数%でもバスや電車を使ってくれればだいぶ変わりそうなのだが、ライトレールの威光はここまで及ぶのだろうか。現時点では惨敗と言った状況である。
飲食店やお土産屋、地元物産店など一通り揃った平均的な道の駅・・・だと思うのだが、平日昼間というのも加味しても、空いていた。
「冬場にジェラート食うか?」はそうなのだが、これを注文してから食べ終わって退店するまで、自分以外に誰も飲食エリアへ来なかった。店員さん(3人)から視線を浴びるので結構緊張感があった。
もう少し流行ってほしいところ。
行きのバスも一人、帰りのバスも一人と、自分以外に全然乗っていなかった。ほぼ空気を運んでいた。「学校が冬休みだから?」と思うも、他の時期に乗った人も「こんなもんだったよ」と言うので、全然乗っていないようだ。
路線バスはエコな乗り物であるが、ガラガラだったらエコでもなんでもないのである・・・。
こんな近くを走っているんだから、ドアtoドアで乗換られないものなのだろうか(例えば軌道敷内にバスが乗り入れるとか)それだけが問題ではないが・・・。
帰りのライトレールもそこそこ混んでおり、本当にライトレール「本体」の方は盛況であった。
宇都宮ライトレールの光と影を感じながら、帰りも東武電車(各停→急行)で時間かけて帰ったのであった。
おわり。