逃げて,自分を救ってくれる言葉を探そう
withnewsに,生きづらさを抱える人に向けて樹木希林さんが書いたメッセージが紹介されていた。
別にこの記事を否定するわけではないし,このメッセージを書いた樹木希林さんを非難する意図もない。決して。
がんを患いながらも生きている樹木希林さんの言葉は,彼女の心の底から出てきたものだと思うし,
「こんな姿になったって おもしろいじゃない」と語る気持ちも汲める。
でも,たとえそうだとしても,これでは救えない人もいる。
彼女のメッセージは,インタビューの内容から察するに「不登校になってしまった/しまいそうな若者」「つらくてつらくて、今まさに死を考えている若者」に向けたメッセージだと読み取れる。
でも,きっとその人に向かって「私もこんなになっても生きているんだから,生きてみようよ」と語りかけて,自殺を思いとどまるのは,きっとほんの一部だろう。
重ねて言うが,だからといって樹木希林さんが悪いわけではまったくないのだ。
彼女は考えに考えて,彼女にとってかけられる最善の言葉を選んだ。
でも,きっとそれですべての自殺がなくなるわけではない,と彼女はきっと理解していると思う。
だから,
「どうしたら伝わるのかしら。本当に無力よね、まったく書けないの」
という言葉を発しているのだと思う。
ひとりの呼びかけで,この世で苦しんでいるすべての人々の苦しみを取り除くことはできない。
苦しんでいるあらゆる人にとっての「救い」となる、万能な解決策は存在しないからだ。
だからこそwithnewsの「withyou」という企画はあるわけだし,この#8月31日の夜にというハッシュタグは存在しているのだ。
あらゆる立場の人が,あらゆる方角から言葉をかけることで,その言葉のどれかが誰かの心の支えになる。
そう願って,こういった企画は実行されているのだ,と思う。
だから,学校が苦しいなら行かなくていい。
職場が嫌なら行くのを放棄していい。
生身の人間と接したくないなら一切の接触を断ってしまっていい。
逃げられる限り逃げながら,自分を救ってくれる言葉をマンガから,小説から,歌から,ゲームから,あるいはこのネットの海から探してほしい。
言葉ならまだ,なんとか自分の好き勝手に選ぶことができる。
たったひとことだけでいい。
自分のことをわかってくれて,自分の心を軽くしてくれて,自分の背中をやさしくさすってくれるような言葉。
あるいは翼になって自分を羽ばたかせる言葉かもしれないし,自分の心を燃え上がらせる炎のような言葉かもしれない。
それにさえ出会うことができれば,あなたの心はきっと,少し癒やされる。
少し癒やされたら,少し休んで,また別の言葉を探してほしい。
この世界のどこかに,きっと自分とわかりあえる人がいる。
心を共有できる人がいる。
そう思うまで回復できたなら,きっともう,生きていけるはずだ。