元号が変わったぐらいじゃ、日々の単調さもお前の退屈さも変わらない。

ぼくたち６年４組は、あしたから６年５組になるそうです。

校長先生がかわって、４は不吉な数字だから使わないようにしようといったからです。

前の校長先生はやさしそうなひとでした。でもたまに集会でしゃべるくらいで、ふだんどんなことをしているのかはよく知りません。

あたらしい校長先生がどんなひとなのかも、よく知りません。

今日は６年４組としてすごす最後の日です。でも数字がかわるだけなので、あしたになってもクラスメイトは同じままです。

みんなは放課後になると、校庭に出て、砂に文字をかきはじめました。

「校長先生ばんざい！　４ありがとう！」
「ステキな４だった！」
「いよいよ４がおわってしまう……でも５もがんばろう！」
「もう４でいられないなんて」
「４はほんとによかった！　これからは５よろしく！」

ぼくはかくことが思いつかないので、それをながめていました。すると学級委員長のＳくんがやってきて、こんなにめでたいことなのに！　とずいぶん怒ってしまいました。

これはめでたいことなんだ、とそのときはじめて知りました。

みんなが４にそれほどの想いをもっていたことも、はじめて知りました。

５組になってからの目標をきめよう、とだれかがいいました。５になったら思いやりのあるひとになりたい！　とすかさずひとりがさけびます。

おれは東京のＫ中学校に合格する！　とＳくんがつづきました。

ぼくはちょっとワクワクしはじめました。これまでできなかったことが５になった途端できるようになる、そんな気がしたのです。

夜には先生にないしょで、近所の公園にあつまりました。４から５にかわるしゅん間を、みんなでむかえるのです。

日付がかわって、ぼくたちは６年４組から６年５組になりました。そのときはまだなにも起こりませんでした。それでもみんなが拍手をしているので、なにかのお祝いのような感じがしました。

翌朝、教室の前にはものすごい行列ができていました。６年５組のプレートを撮るために、ほかのクラスのひとが列をなしているのです。

チャイムが鳴って、授業がはじまりました。

それからまたいつものようにチャイムが鳴って、授業が終わりました。

いつまで待っても、特別なことは起こりませんでした。ぼくはあいかわらず算数が苦手でした。４が５にかわっただけなのだから、あたりまえです。

ぼくたちはそのまま卒業をむかえました。春からは地元の公立中学校に通うことになります。６年５組のメンバーはみんなここに進むので、いまは不安もそんなにありません。