見出し画像

セプテンバーを聴いて泣く女は私くらい

私はSeptemberが苦手だ。
あの有名な曲。軽快な前奏に、ポップなサビ。 とても明るい曲なのに、私はこの曲を聴くと息が詰まってしまう。最後にちゃんと聴いたのはいつだろう。聴こうとする度、途中でやめてしまう。気持ちとは裏腹に、体が勝手に反応してしまう。セプテンバーを聴いて泣く女は私くらいだろうなあ。と、他人事みたいに思う。

好きだった人がよく聴いていた。
あの人が口ずさむセプテンバーが大好きで、ひとりの時も、この曲をよく聴いていた。

ドゥーユーリメンバー。

あなたは覚えてる?
あの春のこと。わたしのこと。
ちょっとは、覚えてるかなあ。

あの人は今でもセプテンバーを聴くだろうか。 ちがう女の人の前でも、この曲を口ずさんでいるんだろうか。
それを思うと、フンッと鼻で笑ってしまう。
あの人にとって私はただの通過点。通過点ですらなかったかもしれない。だけど、私にとってはあの人は大層意味のある人間だったのだ。

あの人といたとき、セプテンバーは大好きな曲だった。だけど今は苦手だ。この曲を聴くと、あの人といて、楽しかったときのことを思い出すから。切ないとか悲しいとかそんな言葉では言い表せないから、息ができなくなる。

いつかあの人を思い出さずにセプテンバーを最後まで聴ける日がくるだろうか。
男は名前を付けて保存、女は上書き保存とよく言ったものではあるけれど、私は到底忘れられそうにない。なので、思い出を瓶詰めしておく。名前を付けて保存、しておく。
思い出が古くなれば、きっと瓶の中で勝手に腐ってくれる。そしたら捨てたらいい。無理に無くさなくたっていい。忘れるまで、忘れない。それくらいでいい。


September  / Earth,Wind&Fire




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?