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街中ですれ違ってもお互い気づかないフリをしようね

恋人の関係って、不思議だ。

知り合いも、友達も、全部飛び越えて、親密になるのに、一度関係が崩れると、友達でも、知り合いでもない、「徹底的な無関係の人」になるのだ。
友達には言わない秘密の話や、恋人にしか見せない表情、顔を寄せ合ってくすくす笑ったことなんかも、全部全部なかったことになる。

私は、それがとてもかなしい。

どうして友達に戻れないんだろう。
最初から友達じゃなかったと言われれば、それはそうだけど、だけど、もう二度と話すこともないの?
一緒にいるとたのしかったから、そばにいたはずなのに、それすらなかったことになるの?

先週、つい最近まで恋人だった人と街中ですれ違った。
相手も私に気づいたと思う。気づかないはずがない距離だった。
だけど、あの人はまっすぐ前を向いて、こちらを見ることすらしなかった。
私は、振り返って遠ざかるあの人の背中をじっと見ていた。
追いかけて声をかけようか、数秒の間にいろんな考えが頭の中を巡った。
結局、声をかけることはできなかった。
だけど、結果的に追いかけなくてよかったんだと思う。

だって、何をどんな顔して話したらいいかわかんない。
言いたいことや聞きたいこと、たくさんあったけど、きっと他人行儀な反応をされて、自分をもっと傷つけるだけだった。
だから、追いかけなくてよかった。
ちゃんとわかってるから、元に戻れないことは。
私は、ただ、この「徹底的な無関係」がかなしいだけなの。

だけど、

これからも、街中ですれ違ってもお互い気づかないフリをしようね。ずっと、そうしようね。
だって私たちはもう、友達でも、知り合いでもないから。

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