【映画感想】機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー
※この記事では上映中映画の内容に触れています。これから鑑賞予定の方はご注意ください。
「今回の、『ゼンカイジャー』は~~~~ッ!!」
GW中に、公開されたばかりの映画『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』、通称『ゼンキラセンパイ』を鑑賞してきた。毎月一日のファーストデー(鑑賞料金がとても安い)であること、ゴールデンウィークの真っただ中であることと、二つの理由ではらはらしたものの無事席の予約も取れ、『復活のコアメダル』では出遅れたパンフレットも購入することができた。ありがたい事である。劇場はロビーもシアターもそこそこに混んでおり、限定ポップコーン袋を持った親子連れの姿もちらほら見受けられた。ライダーVシネのような大人展開a.k.a死ネタがあったらどうしようとちょっぴり不安になったが、「まあゼンカイジャーだし大丈夫でしょ」という根拠のない自信と共に着席。『シン・ウルトラマン』や『バブル』などどちらかというと年齢層高目な予告を眺めながら開演を待った。
ふらりとセンパイ、出来るか和カイ!?
お祭り騒ぎはいつものように、セッちゃんの名調子から幕を開ける。あの声を聴くだけで「ゼンカイジャーだなあ」と懐かしさがこみあげてくる。テレビシリーズが終了してから言うほど時間が立っているわけではないのだが、『ドンブラザーズ』の濃厚さならびに喫茶どんぶらの五色田介人を見ていると、全力全開な介人やいい声でよく喋るジュランがどうしても久々に会った旧友みたいに思えてしまうのであった。
「キカイトピアとキラメイトピアのゲートを繋ぐ儀式のため、カナエマストーンを4つ集めてほしい」というマブシーナの依頼により、それぞれの物語が動き出す。充瑠・瀬奈・為朝はカナエマストーンの一つを盗み出したという「金色の海賊」を探し、ゴーカイトピアへ向かう。医師や俳優に比べ比較的自由に動ける3人を選抜したのか、疑わずに行動してくれそうな3人を選抜したのか、それは偽マブシーナのみぞ知る。
カレータイムの邪魔をされたマーベラス(ものもらいは完治したようだ)はキラメイレッドたちと数合打ち合うも、人違いとわかってあっさり矛を収める。平謝りの充瑠たちだが、意外にも協力を申し出るマーベラス。狙いはカナエマストーンというより「金色の海賊」だ。かくてここに全オタクが渇望していた「ゴーカイレッドVSツーカイザー」という夢の対戦カードが実現した。これ! これが見たかった!
「装備やデザインをパクっただけ」「パクられたことをありがたく思え」と大先輩に対しても通常運転のゴールドツイカー一家に対し、ゴーカイレッドはキレるでもなく大人の余裕でひと試合ぶちかます。海賊の先輩というより海賊版の先輩みたいな面もあるし、パクりについてはあまり強く言えないのかもしれぬ。力試しのような応酬の後、「腹が減った」と背を向けたのはマーベラスなりの照れ隠しか。単純にカレーを完食し損ねたからかもしれないが……。
一方のゼンカイジャー御一行様は並行世界を巡る旅から一時帰宅したところ。ブルーンが「旅行」と称していたり、カラフルにもちょくちょく帰っているような様子だったり、旅立った時のテンションそのままに、楽しく旅を続けているようだ。クリスタリアでも宝路直々に接待されていたが、確かに並行世界のワンダー戦隊なら国賓扱いしても不足は無かろう。各世界で土産物なども大量に入手してきたようだ。カレー皿やダイヤクンはともかく、レインボーライン幕の内弁当の賞味期限が気になるところ。スクラッチ製品もあったが、ゲキレントピアのスクラッチとキラメイトピアのスクラッチは異次元同位体みたいな関係になるのだろうか?
ステイシーに事情を説明され、カナエマストーン探しを快諾する介人達。ここで素直に、己を変に卑下することなく介人達を頼ることができるようになったのは、ステイシーにとって大きな成長であり、嬉しい変化だ。キカイトピア復興のため新しい仲間たちと力を合わせていることが、ステイシーをどんどん良い方向へ進ませている。また、介人達に依頼をする場として、他でもないカラフルを選んでいることにもほっこりさせられた。マブシーナをヤツデに紹介する時のステイシーの顔が目に浮かぶようだ。ちょっぴり照れくさそうな、でも晴れがましい笑顔で、カラフルパフェを二つ注文するのだろうなあ。
そこに颯爽と現れた仮面姿の男。「世間を騒がせた快盗さ」と不敵に名乗る彼こそがルパンレッド、魁利である。過去形の口ぶりからして、隠居しかけていたところを引っ張り出されてきたクチか。ワイヤー射出機に細かな傷がいくつも見えて、歴戦の記憶を感じさせるところ。さて、快盗が自らそう名乗るからには盗みを行うものと相場は決まっている。目的の品はブルーンがたまたま拾って持ち帰った奇妙な形の石、つまりはカナエマストーンである。
のちにわかることだが、魁利は「異世界に詳しい仲間」(ノエルか?)からの情報として、トジテンドを巡るきな臭い噂をキャッチし、忠告のためこのゼンカイトピアへやってきたということらしい。なんておせっかいでいい奴なんだ、魁利。まるでどこかのお巡りさんのようではないか。マジーヌの忘れ物を届けに来た宝路も加わり、ポットデウスとDr.イオカル(ネーミングが秀逸。威を借る狐!)の企みが徐々に明らかになっていく。
とにもかくにもカナエマストーンを見つけないことには始まらない。時雨と小夜も合流し、キラメイジャーは宝路がサーチしたカナエマストーンのありかへ急行する。奇しくもそこは魁利を追うゼンカイジャーがカルビワルドと交戦しているまっただ中であった。アバタロウギアの件もあるし、トジルギア、技術のコピーされすぎではないか。汎用性が高すぎるのか。ともあれ「本物のキラメイジャー」の登場にテンション全開、名乗りのポーズまで再現して頑張るゼンカイジャー。だが、二戦隊の奮闘むなしく、カルビワルドの攻撃により、ゼンカイジャーとキラメイジャーは仲良く焼肉屋空間へ飛ばされてしまうのであった。
ひたすら肉焼くために 僕らは巡り合ったと思うから
「焼肉空間」ではなく「焼肉屋空間」である。前者だったら最悪全員焼肉(焼きキカイ)にされていたところだったが、後者だったので助かった。助かったのか?
店長の名札を付けたカルビワルドが言うことには、用意された焼肉フルコースを完食することで通常の世界へ回帰できるのだという。それを聞いて即座に食べ始める介人達。敵から出された食べ物に対して信頼感が強すぎる。つられるようにして着席するキラメイジャーの一同。ガオーンと為朝の焼肉奉行コンビの采配もあり、瞬く間に一同は肉を完食。だが、焼肉地獄はここからがスタートである。
カナエマストーンの力により、完食したはずのテーブルの上だけ時間が巻き戻される。食べたはずの肉がそのままそっくり再出現したため、これでは完食扱いにならず、焼肉屋空間を抜け出すことができない。そしてこの無限ループはカナエマストーンのパワーが残っている限り、いつまでも続くのである。
焼肉屋空間においてはカルビワルドは無敵状態で、物理的な攻撃は一切通らない。となると、やはり脱出のためには焼肉を食べ続けるしかない。サイドメニューを頼んだことを後悔しつつ、一同はひたすら肉を焼き、食らう。メニューにないものでも注文すれば出てくるという法則(万力だって出る)を援用し、サウナスーツだの調理場だのいろいろ工夫を凝らしてはみたものの、人間の胃袋にはどうしても限界がある。そこでひらめいた充瑠が博多南と柿原さんを注文し、食べる人数を増やそうともくろむが、「助っ人の注文はNG」とオーダーを却下されてしまう。というか、おじさまと同級生女子ではそこまで焼肉の戦力にはならなさそうな気がするのだが、きっと充瑠がぱっと思いついた「助けてくれそうな人」がこの二人だったのだろうなあと思うとしみじみしてしまう。博多南さんはともかく、柿原さんとも順調に交友を続けているようで何よりである。
ひらめきが不発に終わったことに落ち込む充瑠だが、それを見た介人がさらにひらめく。取り出したるは全力全開キャノン、これを使えばカルビワルドの力を使わずともセンパイたちを呼び出すことができることを思い出したのだ。
かくて諸センパイ方ならびに食いしん坊アイドルの尽力により、一同は焼肉屋空間を脱出する。デカレンジャーと焼肉の関係、「確かに本編で食べてたなあ」と思ったら実際にCMを持っていたと聞いてびっくり。
居並ぶセンパイ、エモすぎ展カイ!!
そして始まる最後の戦い。キカイトピアでひと暴れしてきた海賊コンビと囚われのマブシーナを無事救出した宝路、一緒に助け出されたステイシーも加わって、これで本当に全員集合である。ステイシーザーとツーカイザーが当然のような顔をしてゼンカイジャーと一緒に並んでいる構図、予告で見た時からじーんとしたが大画面で見ると感動もひとしお。
ボッコワウスの隠し子という触れ込みだったポットデウスだが、実はトジテンド王家とは何の関係もなく、ただ顔が似ていたというだけの理由でDr.イオカルに利用され、騙されていたことが明らかに。真に野望を抱いていたのはDr.イオカルの方であり、カナエマストーンの力と自らの科学力を合わせて、すべての世界を支配しようと企んでいたのだ。
カナエマストーンの力が悪用され、かつてスーパー戦隊に倒されてきた兵士たちがわらわらと湧き出してくる。キラメイジャーとゼンカイジャーを合わせてそこそこの人数がいるとはいえ、さすがに人海戦術で攻められてはらちが明かない。ピンチに陥ったその時、しばらく姿を見なかったゴーカイレッドとルパンレッドが颯爽と現れる。しかも、頼もしい援軍を一通り引き連れての登場だ。歴代の熱血赤戦士たち、セッちゃん命名「センパイジャー」が一人ずつ名乗りをキメるシーンにテンションは最高潮。連れてこられた中にはパトレン1号もいたのだが、横並びになっている時に隣のルパンレッドと微妙な距離を開けて立っていたのがいかにも圭一郎らしく、どこまでも律儀な奴めと嬉しくなってしまう。そしてトッキュウ1号はさっき焼肉も食べていたので、ひとりだけ二回戦めの出場だ。イマジネーション力のトッキュウジャーとひらめき力のキラメイジャーはなんだか相性が良さそうなので、いつか絡んでいるところを見てみたいものである。
ときに、VSモノのお楽しみと言えば戦隊の垣根を超えた協力技である。今回も仲良く一緒に戦う姿を見ることができて嬉しい限りだが、特にゼンカイマジーヌとキラメイピンクの協力攻撃が印象的。マジーヌの箒にぶら下がってクダックたちを遠隔射撃したキラメイピンクが空の旅を実に楽しげに満喫しており、ヘリコが見たらジェラシーでぷんぷんものである。でも小夜が空を好んでいるのはきっとヘリコの影響なので大丈夫。「やっぱり空はいいわね」という独り言みたいな台詞は、その場にいないヘリコを思ってのものに相違ない。
充瑠のひらめいたキラメキゼンカイジュウギアの助けもあり、一同は無事に戦いを終える。ゼンカイザーとツーカイザーがゴーキラメイジャーの胸当てをまとうわけだが、ツーカイザーはキラメイブル―よりキラメイイエローの胸当てを借りた方が色的にあっているような気もしなくもない。金色に青もオーレンフォームみたいでかっこいいからまあいいか。ロボ戦でもキラメイジャーの力を借り、魔進たちの姿をしたエネルギー弾がダイカルビワルドに突進、見事撃破する。これはゼンカイジャーとしての攻撃なので、魔進そのものではなくあくまでも「キラメイジャーをイメージした力」というくくりになるのだろう。
STACY THOUGHT and…
Dr.イオカルは倒され、カルビトピアは元通り解放された。あとに残されたのは傷心のポットデウスだけである。
ポットデウスの出自について、劇中で詳しく語られているわけではないが、わずかな台詞から読み取るに、一人ぼっちであまり幸せではない生活を送っていたようだ。Dr.イオカルはポットデウスにとって初めて得た味方であった。だからほいほい口車に乗せられたし、自分でも調子に乗った。
イオカルに騙されていたことを知って走り去るポットデウスを、ステイシーはもの言いたげな目で見送る。たった一人の見方を失う辛さは、彼もよく知っているところだからだ。ハカイザーの洗脳を解いたのは悩んだ末の決断であり、ステイシーも覚悟の上での行動であったが、ポットデウスは何の前触れもなくその喪失にぶち当たってしまった。
さっきまで敵対していた相手に囲まれ、ひとり怯えるポットデウス。ステイシーが告げたのは断罪の言葉ではなく、「罪を償ったらキカイトピアで働くといい」という更生を促す一言であった。首謀者ではないとはいえ、仮にも自分を幽閉し、キカイトピアを乗っ取らんとした者に対して、少々甘い裁定であるようにも感じてしまう。
ジュランが名裁きだと声をかけていたが、確かに介人やゼンカイジャーの性格ならこの裁定もしっくりくる。逆に、界賊たちならそんな優しい言葉は(少なくとも表立った台詞としては)かけないだろう。かつてのステイシーも、イメージとしては後者に近い。トジテンドの価値観に凝り固まったステイシーであれば、罪人は罪人らしく裁かれるべし、なんなら処刑も辞さないくらいのことは考えそうだ。
だが、介人達と出会い、民主主義のキカイトピアで暮らす今のステイシーは違う。キカイノイドも人間も変わることはできるのだと、彼は身をもって知っている。そして、ステイシーが変わることができたのだから、自分とどこか似た境遇のポットデウスもきっと変わることができると信じている。やらかしたことがなかったことにはならないが、きっちりそれを償えるのであれば、キカイトピアはポットデウスを受け入れるだけの懐の深さを持っている。
すすめ! 不敵に笑うシルエット 七つの海を Catch me if you can
ゼンキラセンパイ見てきた! あのEDが映画のすべてを物語っている気がする 今回はちゃんとパンフも買えました 面白かった〜
— 望戸 (@seamoon15) May 1, 2022
あっという間にエンディングである。『キラメイジャー』のEDと『ゼンカイジャー』のOPをみんなで踊るわけなのだが、それすらも一筋縄ではいかない。激しくリミックスされた2曲はフレーズごと細切れにつなぎ合わされており、テンポゆっくりめの『キラメイジャー』とテンポはやめの『ゼンカイジャー』が文字通り緩急ごちゃまぜに、あたかもジェットコースターがごとく提供される。踊る方もそれぞれの振り付けをそれぞれの速さでこなしつつ、要所ではオリジナリティを出してポーズを決める。下手すると酔ってしまいそうなアップダウンだ。だが、どちらかに寄せるのではなく、それぞれの曲をそのまま活用しながらごりごり力押しで一曲にまとめてしまう感じは、両戦隊かつセンパイジャーのおいしいところを全部ごった煮にしたこの映画にぴったりであるとも言える。それにしても踊ったり編集したりするのが大変そうだ……。魁利は上手くノセれば踊ってくれそうな気もするが、マーベラスをどうやって躍らせたのか、キャスティングした敏腕プロデューサーにコツを聞いてみたいものだ。後輩をダシに煽ったのか?
なお、カメオ出演のナビィとセッちゃんのツーショに大変心躍ったことを申し添える。これ! これが見たかった!(2回目)
というわけで『ゼンキラセンパイ』、大変楽しんで鑑賞しました。マーベラスと魁利が選出されたのは「海賊」と「怪盗」にどっちも「カイ」がついているからかしらん、などとセッちゃんに思いを馳せつつ、焼肉を食べに行く計画を立て始めている今日この頃。