【RX】9~12話

第9話「マリバロンの妖術」

 サボテンは生きている回。亡き母の遺したサボテンを大切にいつくしむ少女・チグサのもとに現れたのは、自らを母と名乗る不思議なサボテン。しかしその声はマリバロンのものであり、サボテンに酷似した怪魔異生獣アッチペッチーを通じてチグサに語り掛けていたのである。
 チグサは母の記憶がないわけではない。サボテンを大切にする母の姿が思い出に残るくらいには、母とともに時を過ごしている。いくらマリバロンの声真似が上手でも、しっかり聞けば違う声だと看破できたかもしれない。だが、半ば祈るように、チグサはアッチペッチーが母だと信じようとする。「サボテンとお話ができる」と自負していても、それはあくまで比喩であって、サボテンはチグサにやさしく話しかけたり、彼女の名前を呼んだりはしないのだ。
 ところで光太郎は玲子から預かったサボテンを危うく枯らしかけ、あろうことか盗まれた振りでごまかそうとすらする。ゴメンナサイのできないヒーロー爆誕の瞬間である。大事なサボテンだからこそ水をやりすぎてしまう気持ちもわからないではないが、預かり物を勝手に捨てるのはよろしくない。見とがめてくれたチグサに感謝すべき。


第10話「ニセ者でドッキリ」

 怪魔異生獣ドグマログマ(ドグラマグラが元ネタか?)は、勉強ができてスポーツ万能。本物の茂にはできないことを次々とやって見せ、おかげで周囲の茂に対する評価はうなぎのぼりだ。面白くないのは本物の茂ばかりである。両親も友達も、偽茂を茂本人だと信じてちっとも疑わない。
 しかし妹だけが偽茂に気づく。嫌いなはずのトマトをむしゃむしゃ齧っているのがおかしいと、しかし喜びの渦中にある家族には言えずに、光太郎にだけこっそり打ち明ける。
 大人たちもガールフレンドも、常に茂を採点するような目つきでしげしげ眺めている。だからこそ茂が万能少年と化したことを無邪気に喜び、評価を大きく上方修正する。対して妹にとって、茂はどんなことをしてもただの茂である。だからこそ、良くなった見てくれに惑わされずに、一点のほころびを見つけることができたのだ。


第11話「スクラップの反乱」

 手に負えなくて廃棄されていたと言う割には、案外素直にRX討伐へ出張ってきたスクライド。乳母車や家具家電など、まだ使えるのに捨てられスクラップになるばかりのものたちを自在に操り、RXへ猛攻を仕掛ける。実はこのスクラップ達、ただの鉄くずではない。周囲にいた人間を取り込み、その生命エネルギーによってスクライドに動かされているのである。スクラップの中にある一台の自転車には、マサキ少年が取り込まれている。彼は五段変速の新しい自転車が欲しいあまりに、まだ使える今までの自転車を捨ててしまおうとしたのだ。
 スクライドの全身はダクトテープのような金属の帯でぐるぐる巻きにされており、あたかもミイラのような様相である。胸部から発射するのもこの金属テープだ。誰だ感熱紙なんて言ったやつ。
 スクラップ達が大挙して人間を襲う様子は、まだ使えるはずのものを安易に捨てる消費社会への逆襲のようにも見える。スクライド自身もスクラップの墓場から蘇ったミイラ男だ。まさにタイトル通り、「スクラップの反乱」である。

 スクライドに手痛くやられた光太郎は、地価の秘密ガレージで傷の手当てをする。その様子をみたアクロバッターとライドロンは「イタムカ」「ダイジョブカ」と主をねぎらう。マシンと人との信頼関係が見えてほっこり。さらに、傷をおして戦いに赴こうとする光太郎を「ドウシテモイクノカ」「ソノキズデ、タタカエルカ?」とその場にとどめようとすらする。なんという主思い! 光太郎を心配するあまり、時にその意に反した動きすらする。神秘の力で生命を得た2台は、確実にその自我を成長させている。


第12話「夢の中の暗殺者」

 佐原一家および玲子が光太郎の弱点と見切ったクライシス。抜本的な手を打たないとまたすぐに皆が狙われてしまうと悩んだ光太郎は、思い切って玲子にある頼みごとをする。それは、彼女の夢の中に佐原一家を呼び出すことだった。
 自分を倒せば皆が巻き添えになると脅すズノー陣に対し、RXは焦りの一つも見せずに難なくとどめを刺す。佐原一家の姿は夢から消え、RXは玲子を伴って辛くもその場から脱出することに成功した。
 まさか自分のウィークポイントをわざわざ危険にさらすとも思えず、クライシスでは「佐原一家も玲子も南光太郎のウィークポイントではない」という結論に達する。光太郎の賭けは見事に成功し、将来における敵襲から自分の大切な人たちを遠ざけることに成功する。

 玲子と光太郎を監視する怪しい男。その正体はクライシス帝国のゲリラ組織に属する兵士、クライシス人のガルであった。彼は独自にズノー陣を追っていたようで、光太郎に対ズノー陣用の装置を託し、息絶える。どうやらRXの名前はクライシス帝国内でもちょっと聞こえる存在になっているらしいが、その正体が南光太郎であるということはまだクライシス幹部たちしか知らないようだ。
 光太郎とガルを追い詰めるため、マリバロン様も御自ら御出陣。強盗に入られた不憫な婦人を演じて警察を手玉に取り、あと一歩のところでガルの反撃にあう。光太郎ひとりだったら押し包まれて逮捕されていたかもしれないと思うと、ガルがその場にいてくれたことは大変な幸運であった。

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