【トッキュウジャー】44話~最終話
第44駅「昴ヶ浜へ」
明は昴ヶ浜=キャッスルターミナルへの出陣メンバーには入っていない。明が自分に課した役割は、トッキュウジャーたちが故郷へ帰るために、その後方部隊として彼らを支えることだからだ。取り出したハイパーレッシャーは、トッキュウジャーたちから明への信頼の証である。金色の絆をまとって、明はひとり誇り高く戦いに挑む。
第45駅「君が去ったホーム」
物語の始まりの時、ライトはシャドーラインのクライナーで目を覚ました。他の4人はちゃんとレインボーラインに収容されたのに、なぜライトだけが? 単なるおっちょこちょいや、激しすぎるイマジネーションのせいではない。ゼットがキラキラを垣間見し、それに焦がれたように、ライトもゼットの闇から少なからぬ影響を受けてしまっていたのである。ラスボスの闇を食らっていてもトッキュウジャーとして変身・活動できるあたり、そもそものライトのポテンシャルは物凄いのだろうなあと思わされる。
ライトの乗る列車を追いかけて、子どもの姿になったトカッチたちがホームを走る。それを体いっぱいで押しとどめる明の背中が広く、頼もしいだけに切ない。
第46駅「最後の行き先」
トッキュウジャーの旅の目的。最たるものは、自分たちの故郷を見つけ出し、そこへ帰ること。そして行く道々で醸成されていったのが、シャドータウンの手から街を守り、そこに住む人たちの暮らしを守ること。戦いは自分たちのためであり、誰かの・世界のためでもある。
トッキュウジャーとしての記憶を取り戻したトカッチたちは、燃えてしまったパスの代わりに乗車券を手作りする。彼らが再びレインボーラインに戻ろうとしたのは、自分のためでも、世界のためでもない。乗車券の行先には、迷いのない文字で「ライト」と記されている。スーパーヒーローとしては反則かもしれないが、秘密基地の仲間としてはこれ以上ない満点回答だ。
終着駅「輝いているもの」
シャドーラインは滅びたわけではない。地上への侵攻を一時停止し、闇の中へと戻っただけだ。夜空の星がひときわ明るいように、闇の中にあるからこそキラキラは輝いて見える。共存とまではいわないものの、影の存在もまた、世界のバランスをとるためには必要なのかもしれぬ。
当初より皇帝の許婚であったグリッタは、ノア夫人の目論見とは異なった形であるものの(そして彼女の本意ではないにせよ)、ある意味では当初の予定通り、ゼットの傍にいて彼を支えることとなった。傍にいるとは言っても、彼女の心は一生シュバルツの物であり、ゼットの物にはならない。グリッタの存在がゼットの慰めになるのか、それとも永遠に彼を苛むのかは、神のみぞ知るところである。
死にたがりの明が生きようとしている。
贖罪のためレインボーラインで働いていた明、自らの時間を過去の清算のために費やし、それさえ済ませばもう死んでも構わないと考えていた彼が、生きる場所を求めている。
生きたいと思う気持ちは、未来へ行きたいと強く望む確かなイマジネーションだ。ライトたちとの旅路が、それを彼にもたらしたのだ。
第32駅でライトが渡ったあの踏切は、子ども時代から一歩を踏み出して大人として生きるための境界線であった。文字通り、「一線を越えた」というわけである。
子どもと大人のトカッチら4人は、並んで変身のポーズをして見せる。トッキュウジャーとしての冒険と成長が、彼らの中に確かに存在しているからだ。だが子どもライトと大人ライトがするのはハイタッチだ。一度は大人になろうとし、闇にまで染まりかけたライト。だが家族と仲間たちのイマジネーションが、彼をこの秘密基地まで再びたどり着かせてくれた。ライトは再び子どもとして、彼の時間を生きていくことができるのである。
ハッピーエンドには涙も理屈も似合わない。爽やかな読後感(視聴後感?)の残る、素敵な作品でした。