【牙狼】第3話~第8話
第3話「時計」
人ではなく時計を依り代とし、拾った人間を食らっていくホラー。みんな落ちている時計を私物化しすぎである。もっとも、交番に届けたところでお巡りさんが食われるだけの気もするが……。
モラックスの台詞、逆に鋼牙には人間側に肩入れできないだけの理由がある(そしてそれをホラー連中は把握している)のだろうか? もしくはホラーと人間の中間に立ちバランスをとるのが正しい魔戒騎士のありかたなのだろうか。
取り付いた人間を食らうということは、その人間に本来訪れるべきであった未来の時間を丸ごと食うということだ。置時計や掛け時計は空間全体の時間秩序をつかさどっているのに対し、腕時計や懐中時計はそれを持っている個人にだけそっと時間を教えてくれる。ゆえに特定の誰かを食らいたいのであれば、その誰かの時間を指し示すためのパーソナルな時計であらなければならない。
最終的にはひとつの大きな時計塔として、カオルを中に取り込み、鋼牙と交戦したモラックス。建物の中に流れる時間すべてを支配しようとしたようだが、欲をかきすぎたのが裏目に出た。魔戒騎士の未来を丸ごと飲み込むためには、時計塔一つではキャパシティが足りなかったようだ。
第4話「晩餐」
ところで作品のタイトルを漢字で書くべきかアルファベットで書くべきか、しばしば迷って表記ゆれしている。正式には「牙狼―GARO―」だろうか? 140字以内でツイートせねばならないことを考えると、漢字表記が無難かもしれぬ。
ともあれ第4話は病院もの。人の身体を腑分けにしていく行為は、食肉を解体していく様子にも少し似ている。冒頭、手術のお礼に来た患者がさっくりディナーのメインディッシュと化していたが、グルメなドクターはおそらく一番おいしい箇所だけ食べてしまって、残りの部位はナースたちが「片付ける」ことになるようだ。患者が持ってきた手土産のお菓子にはだれも見向きせず、テーブルの上に放置されている。食生活の違いと文化の違い。
カオルの料理はだいぶ独創的。二人分作って一緒に食べたはずなのに、ひとりだけけろりとしているのは、生まれつきよほど胃が丈夫なのか、それとも長年の自炊生活で内臓が鍛えられたのか。まさか冷蔵庫の中身が悪くなっていたわけでもあるまい。
カオルが頑張って貼り付けたお札のおかげで病院をかこっていた結界がなくなり、鋼牙はパズズへ炎の斬撃を見舞う。浄化の炎はパズズに致命傷を与えるとともに、根城としていた病院の看板を焼き尽くす。人助けの裏で人を食うパズズの行為は、何も知らない患者たちにとって恐るべき脅威であったと同時に、パズズが取り憑いたドクターの生前の名誉を著しく汚す所業でもあった。ただまあ、ドクターの名声がパズズの手術の腕により高まったのであれば、何とも言い難いが……。
煽られ耐性の低さは、それだけその事柄が心の中で重要なウェイトを占めているからだろう。魔戒騎士と言えどもクールなだけではなく、人並みの柔らかな部分も持っているのだ。
第5話「月光」
北岡先生ヤッター! でもタクシーのシーンまで確証が持てなかったのは内緒である。人の顔の見分けが致命的につかないタイプなので、鋼牙が毎回おんなじお衣装を着ていてくれるのは大変ありがたい。
というわけでルナーケン回。ホラーが狙うのは三人組の男女。といっても彼らはそれぞれ逃走中の容疑者・その人質・それを追う刑事であり、たまたま結界の中に閉じ込められてしまったのは不幸としか言いようがない。しかも容疑者と刑事は知り合い同士で、なにやら因縁があるらしい。
「証拠は無いがお前が犯人だ」と決めつける刑事と、「殺人を犯す理由が無いから犯人ではない」と主張する容疑者。刑事はドラマのような展開に酔っているように見えるし、容疑者も容疑者で殺された恋人の無念を晴らすでもなく、ただ自分の潔白だけを主張して、そのためには女子高生を人質に取るのも厭わない狂乱ぶり。一番不幸なのは巻き込まれた女子高生だろうなあ。
冴島の屋敷は別に辺鄙な山奥にあるわけでも、深い森の中にあるわけでもなく、都心近く(少なくとも自転車便の営業エリア内)にある立派な大豪邸だ。1話でカオルの描いた絵を「生まれ育ったところに似ている」と評していたから、幼い時は別の場所に住んでいたのだろうか。人間を食うホラーは人口密集地で顕現するのが一番効率がよく、それを狩る魔戒騎士も必然的に都会に住まねばならないという事情かもしれない。
第6話「美貌」
彩りの星どころか、命取りの敵である。不愛想な鋼牙とは真逆で、にこにこと笑顔の胡散臭い好青年だ。チンピラに絡まれたカオルを颯爽と助けたまではよかったが、どうも不穏な雰囲気。
×魔界騎士 → 〇魔戒騎士
あるいは黄金の鎧を纏う鋼牙が有名人なのか。魔戒騎士みんなが金ぴかなのではなく、選ばれし騎士だけが金ぴかということ?
合議や決断といった言葉とは遠いところに居そうな、いつも浮世離れした神官たち。上位存在の神託を伝えるヒューマノイドインターフェース的な存在なのかもしれぬ。
極厚の刃ででもない限り、強い打撃は受け流すに限る。数合の打ち合いは想定していても、まさか石の塊を叩き落とすのは、刀の使い方としては非推奨であろう。研ぎ直しができるのか、不思議な力で修復されるのかは定かでないが、なんにせよ道具は大切に使わねばならぬ。
第7話「銀牙」
昔使っていたパソコンでは憂鬱なハルヒの苗字「涼宮」が一発で変換できず、辞書登録をして使っていた。「すず」を「涼」と変換できなかったのがその理由だが、今試してみたら出来るようになっていてびっくり。便利になったものだ。
さて涼邑零である。西から来たなんて言われると高校生探偵を連想してしまうが、特に関西弁を喋るわけでもなければ地黒でもない。しいて言えば真っ黒なロングコートを夏でも身にまとっている。鋼牙もそうだが、退魔用の呪物でも全身に仕込んでいるのだろうか。
魔戒騎士の系譜の本、武家や貴族の名鑑と思えば確かにそういうものもありそうな感じ。しかし誰が取りまとめて誰が出版しているのか。身体と命を張る仕事なだけに、ちょくちょく当主の入れ替わりなんかもあろうものだが……。
邪気を払って回る零の姿はあまりにも必死で、どこか痛々しさすら感じるほどだ。ホラーの芽を摘んでいるのだから大局で見れば善い行いで、縄張り意識(あるのかは知らないが)を抜きにすれば「ご協力感謝」といったところ。ところで自分の縄張りの方の職務がおろそかになってやしないのか? 存在しないはずの魔戒騎士には担当エリアも何もないのだろうか。
第8話「指輪」
吾郎ちゃんヤッター!(二回目)
びっくり演出にびっくりするたび「もう部屋を薄暗くして見るのはやめよう」と思うのだが、でも煌々と明るい部屋で見るのもなんだか違う気がして、結局はまた電気を消してしまうのであった。
グルメな立神先生ともまた違って、美理の目的はあくまでも美しい指を集めることである。食欲よりも美意識というか、目的意識が優先されている感じ。ただの理性無き食人鬼ではない、ホラーの性質のようなものが垣間見える。
10本の指を集め終わった時、美理はどうするつもりだったのだろう。また右手親指から2ターン目に入るのか、それとも目的達成の充実感の中で自死するのか。
ホラーの理性がもう少し欠けていたら、冷凍庫は美醜様々な指であっという間に埋め尽くされていたのかもしれない。ホラーがホラーであるがゆえに、彼女の美学は徹底されたとも言える。
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