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【RX】第35話~第40話

第35話「光太郎指名手配!!」

 思い返せばシリーズの最序盤、確かに光太郎は警察に目をつけられていた。つい先日も泥棒の片棒を担いだばかりだし、とうとう年貢の納め時か……と思いきや、例によってすべてはクライシスの陰謀であった。警察のデータベースをハッキングし、光太郎を含む何名もの無罪の人間を犯罪者に仕立て上げたのである。他の方々はともかくとして、光太郎については前々からマークされていたために、より熱烈に捕り物が繰り広げられてしまった可能性がある。光太郎も光太郎で、釈明するでもなくただただ逃亡してしまったために、「女の子を人質に取る卑怯な逃亡犯」に成り果ててしまった。不可抗力とはいえ悪手。
 光太郎のほかに拘束されたのは著名な文化人らである。自衛隊の幹部とかスポーツマンとか、物理的にクライシスに抵抗しそうな人間はもっといるかと思うのだが、そうではなく思想で対抗しそうな人間を選んで陥れているのが興味深い。反乱の芽を摘むために、民衆を啓蒙できそうな頭の良い者を押さえておこうという判断か。

 冤罪に暴言に、大ダメージでぽっきり折れてしまっても不思議ではないと思うのだが、それでも光太郎は己の無実を確信し、あくまでも自力救済でこの事件を解決しようと試みる。体内から心臓を突いてくるウィル鬼に対し、インパクトの瞬間にバイオライダーになるという離れ業で物理攻撃を無力化。死体のふりをしてまんまとアジトへの潜入を果たすと、ハッキングに使われていたコンピュータをばりばり破壊し、警察データベースの修正に成功する。こちら側のコンピュータが生きていないとデータベース側の偽りが継続できないということは、マリバロンたちはデータベース自体を上書きしていたのではなく、常にハッキングをかけ続けて偽りの情報を画面に表示させていたということだろうか。もし相手の中身を書き換えるタイプのハッキングであったら、そのためのツールをあっさり破壊してしまい、光太郎は名誉回復のチャンスを永遠に失うところであった。危なかった……。


第36話「ヒーローは誰だ!?」

 子どもを手玉に取るには憧れ詐欺が一番手っ取り早い、の巻。スポーツ界のヒーローたちを相手の土俵で次々に倒し、名声をほしいままにするグレートマスク。正体も素顔も不明な点では仮面ライダーと一緒だが、ライダーはこっそり人を助けて悪を挫くのがその使命であり、力を誇示したり宣伝したりはしない。それがゆえにライダーの存在は噂や都市伝説の扱いになっており、メディア露出の多いグレートマスクの方が「会いに行けるヒーロー」として子どもたちの注目を集めてしまうのである。RXをヒーローとして慕っている茂でさえ、たまたま通りかかったグレートマスクの試合を興味津々で観戦している。
 さてそのグレートマスクだが、お察しの通りクライシスの手の者である。怪魔異生獣バルンボルン、名前の通りの重量級な見た目はグレートマスクとは正反対だ。グレートマスクはすらっと細いわりにどんな相手にも力負けしないが、本当の姿があのパワータイプだというなら納得の結果。
 グレートマスクに心酔した子どもたちはそろいの制服を着て親衛隊のように彼に付き従っている。もちろんこれもクライシスの洗脳の結果である。クライシス・ユーゲントを結成し、その構成員とするために、子どもたちは集められたのだ。一人のカリスマに憧れた者たちの集団、という図式は何やら元ネタへのわかりやすい目くばせのようでもある。
 グレートマスクがアスリートのみを狙っている以上、光太郎もなかなか手を出しづらい。洗脳された子どもたちを解放してやる必要もある。そこで編み出された奇手が、すでに一度グレートマスクに敗れたプロボクサー・澤田の体内にバイオライダーが潜み、リベンジマッチを行うというものであった。澤田の身体を借りて、RXはグレートマスクと相対する。すっかり親衛隊に取り込まれてしまっていた茂だが、RX扮する澤田のパンチを見て、「あれはライダーパンチだ」と気づき、正気を取り戻す。さすが、RXファンの鏡である。
 かくてバルンボルンは正体をあらわにし、澤田は汚名を返上することに成功した。子どもたちの洗脳も解け、クライシスの企みは見事阻止される。そんな大仕事を成し遂げても、光太郎は手柄を誇らない。なんとなれば、わざわざ喧伝しなくても、身近な理解者はちゃんと見ていてくれるからだ。茂が憧れてくれることは、きっと光太郎にとって大きな励みになっていることだろう。


第37話「牙むく獣人忍者隊」

 霞のジョー、久々登場。いつ身体を壊したんだっけ、とウィキペディアを見たら(しかし何でも載っているなあ)26話とのこと。そういえば瀕死の重傷を負っていたのだった。倒れる前に作ったベーコンエッグとかその後の信彦の一件とかですっかり記憶が飛んでいた。申し訳なしジョー……。しかし復活したとたん亜硫酸ガスを吸わされるわ敵に姿をコピーされるわ、なかなかハードな待遇である。負けるなジョー。
 霧に包まれるように襲われた風神村。上級生に避難誘導を任せ、先生は一人助けを呼びにひた走る。子どもたちだけを残してその場を離れるのは一見不適切なようだが、しかし他に守ってくれるような大人の姿は見えなかったし、子どもが市街地までは知りぬくのは不可能であろうことを考えると、これがベストな判断か。
 すぐさま風神村へ向かう光太郎と玲子だが、追いかけてきたのはなんと吾郎である。戦いの場などちっとも似合わない、どちらかといえば日常パート担当のはずの吾郎なのだが、腹をすかせた子どもたちに思い当たると居てもたってもいられなくなったようだ。料理人は料理人らしく、出来ることを精いっぱいやろうとする姿が頼もしい。

 風神村が襲われたのはクライシス移民計画の一環であった。どうやらクライシスの大気は地球とは組成が違うらしく、クライシス人が地球で息をするためには亜硫酸ガスを大量に放出しなければならないとのこと。四日市ぜんそくの訴訟が患者側の勝利に終わったのが1972年、この第37話が放送されたのが1989年。17年の間が空いているとはいえ、まだまだ記憶に新しい話題ではあったろう。


第38話「白骨ヶ原の妖舞団」

 祭りだ祭りだ~!! クライシスとの縁はあまり結びたくないものだが、クライシス側はそうは思っていないらしい。なにせ治癒の力で信者をかき集め、地下帝国建設のための労働力としてこき使う必要があるのだ。怪魔妖族・天空率いる奇跡の舞踏団は派手に街中を舞い踊り、知名度を上げては次々に信者を獲得していく。
 なぜ地下帝国が必要なのかというと、そこには切実な問題があった。長い準備期間を経てようやくやってきたクライシス本国からの移民第一陣が、地球に降り立った瞬間みな苦しみ、息絶えてしまったのだ。地球の環境はクライシス人にとって毒である。かつて国交があったころの絵馬には、そんなことは少しも描いていなかった。とすると、もしかしてクライシス皇帝の御代になってから環境が激変し、クライシス人たちの身体もそれに合わせて変化してしまったのかもしれない。
 ともあれクライシス人を地球に住まわせるためには、環境の近しい地下に住居を構えることが一番いいように思われた。幹部たちは強化細胞で地球の環境に順化しているが、それを一般国民に支給するだけのリソースはまだ確保されていないらしい。いずれは地上進出もせねばならぬが、とにもかくにも植民地化が急がれる。そのための地下帝国である。そこまでして地球に移住しなくても、と思わなくも無いが、クライシス本国の方でももう土地環境が限界なのだろうか。
 ところで、過去に何度かクライシス人の亡命者やレジスタンスたちが登場し、光太郎たちと顔を合わせていったことがあった。彼らは地球の環境にすっかり順応していたようだが、強化細胞をどこからか手に入れていたのだろうか。だとすると反乱分子はクライシスの機密事項にがっつり食い込み、その現物を手に取れるような位置にいるわけだ。皇帝におかれましては外への侵攻よりも先に内部粛清を行った方がよいのではないかと愚考申し上げる次第。

 ダスマダーに責を負わされそうになるマリバロンだが、そのダスマダーに後ろから刃を与えたものがいた。ほかならぬジャーク将軍である。仮にも皇帝直属の査察官であるダスマダーに手をかけることはあまり賢い選択肢とは思えないが、もともと移民計画がはかばかしい成果を得られていない時点で皇帝のお怒りは確定している。なれば忌々しい査察官などさっさと始末して、気心の知れた部下だけで作戦の完遂を目指した方が精神衛生上よっぽど良いというものだ。


第39話「爆走!ミニ4WD」

 タイムリーなことに、先日「テレビ千鳥」でミニ四駆の特集をしているのを見た。あの流線型の小さなスーパーカーには子どもも大人も虜にする不思議な魅力が詰まっているようだ。
 というわけで、ミニ4WDからのサバゲ―回である。ライドロンそっくりのミニ4WDで大会に出場していた茂だが(車体の改造に関するレギュレーションとか大丈夫だったのだろうか)、あと一歩のところで突如現れたクルマに優勝を奪われてしまう。そのクルマの持ち主、ガテゾーンの扮する老人の招きにより、茂たちはシューティングゲームのアトラクションへ。一番点数を取ったものはあの優勝したミニ4WDをもらえるとあって、みなやる気満々だ。
 光太郎とジョーは玲子に頼まれ、モデルの代役として同じアトラクションへやってきていた。カメラマンの慧眼は称賛に値するが(絶対似合う)、モデルの何たるかについては事前に仕込んでおいた方がよかったかもしれぬ。楽しそうに遊んでいるスナップショットだったらいくらでも撮れそうだが……。
 敵味方に分かれた茂たちと光太郎たち。中でも茂は取り憑かれたように銃を撃ちまくり、ぶっちぎりのスコアを挙げる。さてお待ちかねの商品であるが、茂に与えられたのはミニ4WDなどではなかった。敵を補足するためのヘルメットと、インプットされた相手を殺さずにはいられなくなる怪魔銃。この悪趣味極まりない代物はボスガンの命によって作られたものである。茂と同じように集められた即席ガンマンの子どもたちは、そのまま光太郎たちへの刺客へと仕立て上げられた。
 茂の失踪をクライシスの仕業とにらみ、光太郎たちは奔走する。
 怪魔ロボット・スピングレーとの戦いもはさみつつ、とうとう光太郎たちは子どもらの解放に成功する。ヘルメットさえ外してしまえば洗脳はあっという間に解けるのだ。だが不運なことに、茂のヘルメットはなかなか外れない。迫りくる敵の手に、追い詰められたジョーと玲子は落ちていた銃を手に取る。それが怪魔銃であることを二人は知らなかったのである。
 茂、ジョー、玲子の三人が、RXにその銃口を向ける。茂たちに攻撃をすることなど、RXにはできない。ボスガンは勝利を確信する。弾丸が放たれる。
 茂たちが見たのは、弾丸によって傷つき、真っ赤な血を流すRXの姿であった。
 それをきっかけに自我を取り戻す茂たち。ヘルメットを外した視界の中、RXの腹に血痕は無い。だが確かに茂たちは見たのだ。硬い外皮の中に柔らかい肉と熱い血を持つ、生々しい存在としてのRXの姿を。それは決してゲーム感覚で撃てるようなものではなかった。
 テレビゲームと実際の事件を結び付け、ゲームのプレイ体験が暴力的な事件の発生に影響を及ぼすとする考え方は、かねてよりなんとなく世間に広まっていたように思う。誰が言い出したのか調べることまではしないが、確かに自分の親世代などには、悲しいニュースを見てはゲームの影響を疑っている人もいるようだ。いわく、「ゲームのキャラクターは倒しても血が流れないから、プレイヤーは感覚がマヒしてしまうに違いない」。今回の一件はまさにその思考をそのままなぞっている。ゲーム感覚で人を撃つことに慣れさせ、実際のターゲットを狙撃させる。練習用の的は撃っても壊れるだけで、そこに血液や肉片の飛び散りは発生しない。だから、本当のRXを撃ってそこに血液を見た時、茂は動揺する。
 実際にはゲームをすることと暴力をふるうことの間に直接的な因果関係は無いそうだから、あのまま行ってもいずれボスガンの作戦は失敗に終わっていたのかもしれない。それにしても、英雄の流血=犠牲によって悪の心が打ち払われ、正しい心を取り戻すというのは、なんとも戯画的な構図である。


第40話「ユーレイ団地の罠」

 大規模団地から住民を追い出して、それをそっくりそのまま移民の居住場所に充てようと考えるデスマダー。力づくで追い出すのではなく、わざわざ幽霊騒ぎなどと言う回りくどい手段を使ってまで、住民たちが自発的に出ていくように仕向けたのが心憎いポイントだ。無理やり占拠されたのなら反感も募ろうが、ただただ自分が出て行った後にどんな人間が(あるいは人間以外が)入居しようと、ひとはそこまで関心を持たないものだ。移民がこっそり潜伏するには事を荒立てずに、平和裏に進めるのが一番である。
 デスマダーはついでとばかりにRXの抹殺も企てる。おべっかを言うボスガンの事を信用しているわけではないが、使える者は裏切者であっても使うエコな精神で見事RXのデータ収集に成功する。
 とうのボスガンはジャーク将軍に言われて、デスマダーのスパイとして懐にもぐりこんだつもりである。当然、デスマダーにはとっくに見抜かれている。そうとも知らずに自慢の怪魔獣人ガイナジャグラムを繰り出し、RXの返り討ちにあうボスガン。だがガイナジャグラムの役目はあくまでもデスマダーのための前座にすぎなかったことを知り、憤慨する。自分の立案した作戦で部下が死ぬのは許容できても、他人の作戦のために踏み台にされるのは怒り心頭と言うところ。一瞬隊長としての義憤かとも期待したが、あのボスガンだ、かなり可能性が低そうな気もする。
 集めたデータをもとにコンピュータはRXの弱点をはじき出す。腹部にあるサンバスク、太陽エネルギーを溜めるための重要なパーツだ。ピンポイントでサンバスクを破壊され、RXはリボルケインを引き抜くことすらかなわない。
 絶体絶命と思われたその時、空から強い太陽の光が降り注いだ。体内のキングストーンの力により、RXは見事完全復活を果たす。そして呆然とするデスマダーを斬ることに成功する。
 いい話のようだが、恐ろしい話でもある。サンバスクを破壊してもなお、光太郎はRXであることを強制され続ける。キングストーンがある限り、光太郎は普通の人間として一生を全うすることなどできないのだ。例えば遠い未来で、彼がすべてに絶望し、自ら終止符を打とうとしたとしても、キングストーンはそれを許さないだろう。強制的に太陽のエネルギーを充填し、無傷の状態で光太郎を蘇らせるに違いない。光太郎にはもはや、戦い続ける道しか残されていない。どんなに平凡なふりをしたって、いつかはぼろが出てしまう。
 かつて第2話でキングストーンは「人前でRXの力を使うな」と光太郎に諭した。「人前でその力を使えば、最初は称賛されても次第に疎んじられ、しまいには一人ぼっちになるだろう」。だが、人を助けて悪を討つ以上、その力を100%隠しきることは難しい。キングストーンの予言通り、いつか一人ぼっちになってしまったとき、光太郎は己の宿命を恨むのだろうか。

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