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【ゴーオンジャー】第49話~第50話(完)

GP-49「最終ケッセン」

ワラワが望むもの 汝ら望むもの
一瞬(ヒトトキ)さえ交わらない
(中略)
すべて変えれば この世は桃源郷(ユートピア)
(中略)
そうワラワ好みの 明日にする
凛と覚悟を 胸に抱いて

ケガレシア(及川奈央)「桃源郷」の歌詞 / 歌詞検索サービス「歌ネット」

 ケッテイバンキの失敗で罷免されるかと思っていたところをやけに優しく労われ、ヨゴシマクリタインの心の広さにニコニコ顔のケガレシアとキタネイダス。だが、偉大なる総裏大臣がそんなに甘い性格であるはずもない。ゴーオンジャーたちとの戦闘のさなか、「クグツカイライ政権」(漢字で書くと「頭痛が痛い」みたいになるな……)によって肉体を操られたふたりは、盾にされたり敵に突っ込まされたりと散々な目に遭う。おまけに「定額給付弾」(いつでも一定の威力が保証されていそう)の巻き添えも食らい、なんとも不憫。
 無情すぎるやり口をなじるキタネイダスたちに対し、ヨゴシマクリタインは「お前たちを使い捨てのウガッツ以上に思ったことは無いナリナ」と一蹴。無限エネルギー発生装置であるデウス・ハグル・マギアと自分一人さえいれば、ヒューマンワールドの侵略など十分であるとのお考えである。確かにそれは思い上がりでもなんでもなく、まったき事実なのだろう。掃治大臣・危官房長官とともに3つのプレーンワールドを制圧してきた実力は伊達ではない。このまま任せておけば、まあ多少盾代わりにはされるかもしれないが、待っているだけで簡単にヒューマンワールドは汚染されるだろう。
 だが、その「明日」は、キタネイダスとケガレシアの「好み」ではない。

 ヘルガイユ宮殿の場所を突き止め、乗り込んできた走輔たち。立ちはだかるヨゴシマクリタインは再び「正義解散」攻撃を行うため、ムゲンゴミバコからおやつのスクラップを取り出そうとする。これはさきにほかのワールドを滅ぼしたときのゴミであり、そのゴミが持つ次元パワーによって「正義解散」は放たれているのだ。
 ヨゴシマクリタインが手にしたゴミバコに、銀色の鞭が巻き付く。
 盾にされ、地面に転がっていたケガレシアだ。彼女は素早くゴミバコをキャッチすると、それをキタネイダスに放る。キタネイダスは自らの杖で、それを粉々に打ち砕く。ムゲンゴミバコの無限の収納力はなくなり、他のワールドのゴミも失われた。もはや「正義解散」を撃つことはできない。
 怒りに声を荒げるヨゴシマクリタインの前に、ふらふらになりながらもキタネイダスたちは立ちはだかる。
「ガイアークに、独裁者は要らないぞよ!」
「ワラワたちが目指したのは、蛮機族全員が気持ちよく暮らす理想のゴミ世界! 仲間を踏みにじるお前に、そんな世界は作れないでおじゃるよ!」
「作れないぞよ!」とキタネイダスも声を重ね、力強く杖を地面に突き立てる。

 かつて、ヒラメキメデスが回想していた。三大臣がヒューマンワールドへの侵攻を開始する際、何の地位も身分もない自分をヨゴシュタインが参謀として取り立て、引き上げてくれたのだと。
 そのヨゴシュタインは、ヒラメキメデスガゴーオンジャーに倒された後、何週にもわたって喪に服し、ずっとその死を引きずり続けていた。よほど思い入れのある部下だったのだろう。
 また、ガイアークの王子から「姫」と呼ばれ求愛されていたケガレシアは、恐らく低からぬ身分であったのではないかと推察されるが、当の彼女は自分の地位をひけらかすようなことは一度もなく、むしろ手ずから部下の蛮機獣にドリンクを作って飲ませてやったりしていた。
 キタネイダスもウガッツから労働状況の改善を要求され、自分のお小遣いで何とかそれをかなえてやろうとするなど、仲間思いの一面を見せている。
 三大臣がヒューマンワールドに打ち立てたかったのは、ケガレシアののたまう通り、蛮機族にとっての桃源郷なのである。人間に害をなすのは主目的ではなく、あくまでも自分たちの住める世界を作るための手段に過ぎない。仲間とともに気持ちよく暮らすために、大臣たちはせっせとヒューマンワールドを改良していく。テラフォーミングならぬジャンクフォーミングである。そうやって苦労して作り上げようとした世界に、独裁政権などもってのほかである。いままでのキタネイダスたちの行動を見返してもわかる通り、彼らが独裁者を戴くなど似合わない。

 その強い思いが、本来なら「一瞬さえ交わらない」はずのゴーオンジャーを利するような行動を彼らに取らせた。交わらないとはいえ、ロムビアコ騒ぎやなんかで人となりはよく知っている相手だ。自分たちでは敵わないヨゴシマクリタインにも、ゴーオンジャーたちなら手が届くのではないか、とキタネイダスたちは期待している。自分たちの理想を歪められ、利用されるくらいなら、いっそすべて終わらせてもらった方がよい。凛と潔いその覚悟は、(彼らの嫌いな表現ではあるが)清々しくすらある。
 ヨゴシマクリタインの凶刃に倒れた二人は、駆け寄ったゴーオンジャーにデウス・ハグル・マギアの存在を告げる。
「仲間と、再会できるの、よかったでおじゃるね」
 あおむけに倒れたまま、ゆっくりと早輝たちを見上げるケガレシアの声はいつになく穏やかだ。
「我らも、仲間の……ヨゴシュタインの、待つ世界へ……」
「ともに、手を携え……旅立つで、おじゃ、る……」
 キタネイダスが伸ばした手に、ケガレシアもその手を伸ばす。だが、その指先が今にも触れようとした瞬間、ふたりの最後の力は尽きる。
 瞼を閉じ、ランプが消え、完全に機能を停止したふたつの機械生命体。力なく地面に落ちた手を、早輝がそっと重ね合わせる。
 どうかヨゴシュタインやヒラメキメデス、ほかのたくさんの部下たちが待つ世界で、「ルネッサーンス!」なんてのほほんと乾杯をしていてほしい。いつもどこか憎めない、かっこよくてかわいい敵役でした。R.I.P。

 さて、一方の走輔たち。はじまりの3人に戻った彼らは悲しみを今だけ腹の底に押し込んで、世界のために突っ走る。ヨゴシマクリタインとの戦闘で自分の武器を弾き飛ばされ、範人や大翔たちの武器を借りてもう一手仕掛けようとするハートがアツい。ただ、その魂のこもった攻撃もキタネイダスたちの肉の壁に阻まれ、ヨゴシマクリタインには届かないのが辛いところ。
 蛮ドーマの大量発生場所からヘルガイユ宮殿の位置を突き止めることに成功し、一路ヘルガイユ宮殿に乗り込む走輔たち。絶海の孤島である宮殿まではエンジンオーで泳いで渡ったようだ。そういえばヒラメキメデスが大芝居を打った回でもざぶざぶ遠泳していたな……。キタネイダスたちの思わぬ助太刀もあり、ついにデウス・ハグル・マギアの前へヨゴシマクリタインを追い詰める。さあ、ここからが反撃開始だ。


GP-FINAL「正義ノロード」

 ヘルガイユ宮殿のいつもの広間に、もういつもの大臣たちの姿はない。代わりとばかりに仁王立ちしたヨゴシマクリタインを相手取って、初っ端から三人の連係プレイが光る。走輔の合図とともに連がラボのハンドルを狙撃して鍵を壊し、駆け寄った早輝は全力でハンドルを捻って重い扉を開ける。何事かと視線を向けたヨゴシマクリタインの隙をついて走輔が斬撃と蹴りをぶち込み、体勢を崩す。たたらを踏んだヨゴシマクリタインをラボへ押し込むように連と早輝が急いで扉を閉め、必死に押さえながらバスオンとベアールのソウルを走輔にパス。走輔はカンカンバーとマンタンガンに3つのソウルをセットし、カンカンカンエクスプレスを発射! 踏切のような見た目だが古代炎神専用と言うわけでもないこの武器の威力はすさまじく、スピードルたちの三連結アタックによってみごとデウス・ハグル・マギアは破壊される。
 ボンパーが見守るモニターの中、無限の蛮ドーマ軍団は次々自爆してゆく。世界は救われたのだ。三者三様で喜ぶ走輔たち。音高くハイタッチした後、その手のひらを見つめてからぎゅっと握り締め、感極まったように額に近づける連の姿が印象的である。喜びと安堵のにじみ出た姿。
 だが、たかがエネルギー発生装置を壊されたくらいで終わる総裏大臣ではない。ヨゴシマクリタインの怒りに呼応するようにエネルギーが逆流をはじめ、宮殿は大きく振動する。「蛮」の一文字が掲げられたプレートが落下し、炎とともに瓦礫の下敷きになっていく。蛮機族としての野望はついえたが、ヨゴシマクリタイン単独の制圧行動はまだ終わっていないのだ。

 島を丸ごと破壊し尽くしたヨゴシマクリタインは、その無数の歯車を新たに組み上げ、自らの身体に取り込むことで、さらに強大な力を手に入れることに成功する。泳ぐエンジンオーが追い付けないほど早く、蜃気楼のように各所に現れては、破壊の限りを尽くすヨゴシマクリタイン。だが、その狼藉を横から咎める者がいる。
 不意の狙撃を受けたヨゴシマクリタインが目にしたのは、小さな4つの人影。さきに「正義解散」させられていた範人達の姿である。走輔がデウス・ハグル・マギアを破壊したことで、彼らを揺らぎに分解・留めていたエネルギーがなくなり、再び実体化することが出来たのだ。そこに走輔たちも合流。ヨゴシマクリタインの攻撃により吹き飛ばされ、メットを踏みつぶされながらも、諦めずに再び変身。さあ、素顔名乗りのお時間ですよ! はい集合! はいかっこいい! 素顔ハイキックちゃんとやるんだ! すげー!

 素顔名乗りどころではない。
 メットをかぶらないまま、一同は戦闘に突入していく。いまだ戻らぬトリプターたちの代わりにウイングスへバスオン・ベアール両ソウルを貸与し、ゴーオンジャー側はスーパーハイウェイバスターにスピードルソウルをセット。ウイングブースターとの重ね撃ちで、ヨゴシマクリタインに大ダメージを与えることに成功する。
「仲間などとくだらないものに負けるナリか……偉大なる、第三次産業革命……!」
 後のないヨゴシマクリタインは巨大化。そこに遅れて復活したバルカたちが到着。一同は相棒と言葉を交わしつつ、エンジンオーG12に合体! 攻撃の余地も与えぬG12グランプリにより撃破したかに思えたが、無数の歯車の集合体と化したヨゴシマクリタインは再び肉体を再生する。
「我は十一次元の覇者! 我を倒すは、いかなる神でも為せぬ技ナリナ!」
 最終独裁宣言・ヨゴシマニフェストブレイクがG12を襲う。だが、G12・ファイナルグランプリによって火の鳥と化したG12は空高く舞い上がり、ヨゴシマクリタインの砲撃をひらりと交わしてどてっ腹に特攻、大穴を開ける。
 画面の奥で振り返り、腕を構えるG12。その姿を画面手前でフレームのように飾っているのは、油にまみれたコードや部品の数々。脈打つように動くそれらは、まさしくヨゴシマクリタインの内臓である。G12の最大攻撃により、もはや自己再生の力は失われたらしい。
 自らの仲間を無下にし、捨て駒のように扱ってきたヨゴシマクリタイン。その彼が、前話ではケガレシア達「仲間」によって足をすくわれ、今話では走輔たちの「仲間」力によって倒される。子どもたちへのメッセージがこれでもかと込められた結末である。持つべきものは仲間なりな。

 だが、その仲間と一緒に居られる時間もそう長くは残されていない。ガイアークという脅威が去った以上、キシャモスたちも含めた炎神はマシンワールドに帰らなければならないのだ。
 別れのシーンは案外あっさりしたものだ。相棒と最後の言葉を交わし、走輔たちはソウルをキャストへセットする。するとウイングトリガーやゴーフォンは光とともに消えてしまい、実体化したスピードルたちは頭にちょこんとボンパーを乗せて、マシンワールドへと帰っていく。
「さようなら、俺たちの相棒!」
 走輔が叫び、軍平は敬礼をし、それぞれが空を見上げて相棒たちを見送る。残された7人の、寂しさと達成感がないまぜになったような表情に、スピードルのナレーションが被る。「そして戦士を卒業した走輔たち7人は、新たな道を走り始めた。それぞれの、夢や人生に向かって」――。

 軍平は特犯係の刑事。範人はピザ屋のバイト。早輝はケーキ屋。大翔と美羽は上流社会の荒波に揉まれ、連は走輔のメカニック、そして走輔はプロレーサーに復帰(ただしカート)。
 決戦から数か月が立ち、それぞれ新しい生活がなじんできたころである。ギンジロー号はどうやら軍平の持ち物になったらしく、「GO-ONGER」のペイントは一部書き換えられて「GUNぺいGER」と無理やりな名前を付けられている。「ぺい」はひらがななんだ……。
 レース場の客席に揃って腰かけ、相棒に思いを馳せる走輔たち。と、そこに突然空からスピードルが現れる。くっついてきたボンパーの説明によると、どうやら蛮機族の生き残りである「大統領」がガンマンワールドに攻め込んだらしい。卒業しても再入学してはいけないなどと言う法はなく、また一度身に染みついた「正義の味方」は簡単に忘れられるようなものではない。というわけで、彼らは再び走り出す。舞い上がる白い鳩達。そして今回限りのエンディングは高らかに歌い上げるのだ。

オレたち旅立ち 新たなこの道
行くぜ相棒 どこまでも
GO-ON!

Project.R(高橋秀幸、谷本貴義、SisterMAYO、高取ヒデアキ、五條真由美、YOFFY、岩崎貴文、IMAJO、大石憲一郎) with 炎神キッズ「炎神ウイニングラン-Type Formula-」の歌詞 / 歌詞検索サービス「歌ネット」


 と言うわけで、『ゴーオンジャー』完走。おつかれさまでした。

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