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反トラスト法違反の疑い、$Vの株価は大丈夫?

さて、$Vの反トラスト違反調査のニュースがあってから、株価は6%下落しました。ニュース詳細や時系列、罰金について調べてみました。原典に当たるよう心掛けましたが、結局有意義な結論には至っていないのでご容赦ください(笑) 

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▮ ビザを米司法省が調査、反トラスト法違反の疑い

3月19日、「ビザが司法省により反トラスト法違反の疑いで調査が行われる」旨のプレス及び適時開示(a securities filing)がありました。

Item 7.01 Regulation FD Disclosure.

The U.S. Department of Justice has informed Visa of its plans to open an investigation into Visa’s U.S. debit practices. While Visa has not yet received a Civil Investigative Demand, we have received a notice to preserve relevant documents related to the investigation. We believe Visa’s U.S. debit practices are in compliance with applicable laws. Visa is cooperating with the Department of Justice.

The Wall Street Journal

関係者によると、ビザが加盟店に対し、デビットカードの決済をより安価なカードネットワーク経由で実施することを制限していないかについて、司法省の反トラスト部門が情報を収集している。

なお、適時開示の公開日時は3/19 JST 2:13 amということになります。

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  ※EST 米国東部標準時とJST 日本標準時の時差は 14時間


▮ 株価は6%も下落、やどかりはロング

3/19、$Vの株価は6%も下落していました。

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やどかりは、反トラスト法違反のニュースなど知らないまま、たまたま株価をチェックしていたら大きな下げを発見しました。そこで、まずは成行でINして、その後さらに指値を入れて寝ました。

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The Wall Street Journalの記事が初レポートだったようなのですが、当該記事には、”Updated March 19, 2021 5:06 pm”と記載されています。

The Wall Street Journal, which first reported the news, said the Justice Department’s antitrust division was looking in to whether Visa limited merchants’ ability to route debit-card transactions over card networks that are often less expensive.

株価はそれよりも早く動いているので、それより前の時刻で速報が出たのでしょうか… 

いずれにせよ、

機関投資家の素早い売りの動きには、到底対抗できないな…

と実感した次第です。

その時は、特にニュースもなくてテクニカルで下がったのかと思っていましたが、今思うと危ないロングですね💦

会社の価値を長期的に損なうような事象が起きていたとしたら危なかったです。

というか、本件が会社の価値を長期的に損なうのかどうかよくわかりません。

以下、罰金という観点から調べてみましたが、将来に渡ってカルテルが禁止された場合、どのくらい売上にインパクトがあるのかは分析しきれませんでした。


▮ 罰金になる可能性はあるのか?

👉このまま、司法省の調査→訴訟→罰金となった場合、1億ドル以下の罰金が原則。

ただし、さらに追加される可能性がある。実際、2012年には矢崎総研に対して、4億7,000万ドル(約360億円)の罰金が下った。

👉ビザのトップラインは210億ドル・利益は100億ドルで、罰金額は1%に満たない

Visa annual revenue for 2020 was $21.846B
Visa annual net income for 2020 was $10.866B


というか$Vの営業利益率60%って高い!

一度ネットワークを築いてしまうと、本当に強いビジネスモデルなのだな…

Visa Inc.の業績推移

↑ https://strainer.jp/companies/6527/performance より

以下、反トラスト法について詳述しています。


▮ アメリカの厳しい反トラスト法

ついでにアメリカの反トラスト法についても調べました。

👉アメリカでは、自由競争とその前提となる公正な取引を重んじる。そのため、カルテル(価格協定)が悪と捉えられ、反トラスト法で禁止されている。反トラスト法違反の罰金は高額になりえる。実際、日本の矢崎総研が、ワイヤーハーネスの価格カルテルに関与し、約360億円の罰金を食らった。

2012年、矢崎総研らに対して、4億7,000万ドルもの罰金が課されました。

〈日本の自動車部品メーカーの矢崎総業(本社・東京)ほか数社は、10年にわたりワイヤーハーネス(自動車内の電気系統をつなぐ専用の電線)の価格カルテルに関与していたと認めた。
 反トラスト法違反によって、矢崎総業には4億7000万ドル(約360億円)の罰金が科される。不正にかかわった矢崎の幹部4人には15ヵ月~2年間の禁錮刑(作業義務のない刑務所拘置)が科される〉
米国駐在のビジネスマンの間でよく言われるのが、『同じ業種でゴルフをしてはいけない』。一緒にゴルフをしただけで、『価格協定の話をしたのではないか』と疑われてしまうんです。
アメリカには『繁栄は自由競争がもたらす』という考えがあって、その拠り所に公正な取引がある。アメリカにとってカルテルは『アイデンティティを脅かす』ほどの悪なんです。その感覚が日本人とまったく違う。多大な損失と犠牲者を出して、そのことを骨身に染みて理解しました」

以上、週刊現代2012年2月7日付記事より

👉カルテルを規制するのは、シャーマン法1条

【シャーマン法1条】
 各州間の又は外国との取引又は通商を制限するすべての契約、トラストその他の形態による結合又は共謀は違法であると宣言される。

👉反トラスト法違反の罰則:原則は1億ドル以下の罰金だが、違法行為による利益または損失の2倍まで増額される

シャーマン法1条違反の罰則は、法人は1億ドル以下の罰金、個人は100万ドル以下の罰金または10年以下の禁錮(または双方)と定められていますが、特別法により、罰金額は、違法行為による利益または損失の2倍まで増額され得ます。そして、量刑ガイドラインでは、影響を受けた通商量の20%を基準として罰金額を決定することとされています。

以上につき、Business Lawyer 諸外国におけるカルテル規制と執行状況(吉村 幸祐弁護士)より


▮ $Vは2020年10月にも反トラスト騒動:Plaidの買収で訴えられ、結局断念

👉VISAは、2020年11月に、フィンテックスタートアップPlaidの買収計画でDOJに訴えられた

The Department of Justice has filed an antitrust lawsuit challenging Visa’s proposed $5.3 billion acquisition of Plaid.

👉VISAは、Plaidとは競争関係にはないと主張

“As we explained to the DOJ, Plaid is not a payments company. …Plaid is a data network that enables individuals to connect their financial accounts to the apps and services they use to manage their financial lives, and its capabilities complement Visa’s.”

👉PlaidのプロダクトであるAPIはVenmoなどに使われている

Companies like Venmo, Acorns and Betterment are just some of the big startups and fintech services that use Plaid to build their services.

以上につき、DOJ files antitrust lawsuit challenging Visa’s $5.3 billion acquisition of Plaidより

👉しかし、VISAは訴訟継続を嫌煙し、結局買収交渉を打ち切った

. The department sued Visa in November over the Plaid deal, alleging that the acquisition would allow Visa to unlawfully maintain a monopoly in online debit, where the department said it holds a roughly 70% market share.
Plaid was developing an innovative, cheaper payment technology that could have been a threat to Visa, the government alleged. Visa called the lawsuit misguided, saying Plaid wasn’t in fact a competitor.
The companies dropped the deal in January, citing the potential length and complexity of litigation.

以上につき、Visa Faces Antitrust Investigation Over Debit-Card Practicesより


その他参考文献:

DOJとカード決済3会社との攻防:THE PERSISTENCE OF ANTITRUST CONTROVERSY AND LITIGATION IN CREDIT CARD NETWO

対応方法:Safeguarding Your Rights in US and EU
Antitrust/Competition Investigations



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