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【世界のムーブメント】日本でますます高まる自走力

シーフードレガシーCEOの花岡和佳男です。

昨年秋に開催した「東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)2024」でこのムーブメントの10年史をまとめた通り、日本ではいまやセクターを超えた多くのステークホルダーが本腰を入れて、日本の水産業の持続的成長産業化に取り組んでいます。

2025年、少しずつ、日本の水産業界の持続的繁栄のシルエットが、霞の先に浮かび上がりつつあります。


大手水産2社CEOのリーダーシップ

そんな気配を感じさせる一つ目の出来事が、水産業界紙『みなと新聞』の座談会記事(1月29日)。世界二大水産グループ企業であるマルハニチロとニッスイの両CEOが、水産庁長官にサステナビリティの追求やトレーサビリティ体制の確立等の必要性を訴える、新年特集です。

資源評価の精度向上、科学に基づく資源管理の徹底、デジタルトランスフォーメーション、輸出戦略の実施、小規模沿岸漁業と大規模遠洋漁業との棲み分け……、記事の隅から隅まで大きく頷くものばかり。時代のシフトを強く感じます。

シーフードレガシー創立前、日本の水産業は、身勝手な「乱獲・乱売・乱食」が世界の海洋生態系を破壊しているとして大きな国際批判にさらされていました。また、この世界の声に対して日本のステークホルダーは、「日本の魚食文化を西洋思想に駆逐されるな」と一丸となってディフェンシブあるいはパッシブアグレッシブな対応を貫いていました。

このままでは誰も得をしない。日本のステークホルダーが自分ごととして資源枯渇の課題に向き合わない限り、国内の水産業界は衰退スパイラルから抜け出せないばかりか、日本のグローバルレピュテーションも失墜してしまう、という深刻な危惧や焦りが、私が2015年にシーフードレガシーの創立を決意した背景です。

それから10年の時が経ち、ムーブメントは成熟を続け、いまや日本の水産業界の2大巨塔が、思わず頬をつねりたくなるほどの、力強いリーダーシップを発揮されています。記事を何度も何度も読み返し、日本におけるムーブメントの自走力や、それによる明るい未来の兆しに、心を躍らせました。

改正漁業法の現場浸透を

日本の水産業界の持続的繁栄の兆しを感じたもう一つの出来事は、上記の記事が発行されてから2日後の1月31日に、新漁業法の確実な現場浸透を進めるためのアクションが『G1海洋環境研究会』で始まったことです。

この研究会は、グロービス経営大学院学長の堀義人さんが創立され、セイラーズフォーザシー日本支局理事長の井植美奈子さんと、環境副大臣の小林史明さんがリードされているプラットフォーム。今回の会合には、自民党の水産総合調査会長、小泉進次郎さんも出席されました。

2018年に70年ぶりの大改正が行われ、2020年にロードマップの作成とともに実施が始まった新漁業法。私は当時、多くの先輩方のご指導やお力添えをいただきながら、内閣府の規制改革推進会議  水産ワーキンググループの専門委員等の立場から、微力ながらこの漁業法大改正に貢献しました。

新漁業法とそのロードマップは、目標数値も時間軸も達成のためのアプローチも明確で、良いものに出来上がっていると思います。「これで日本の水産業界の未来が拓ける」と大いに興奮したことを覚えています。それなのに、2025年の今になってもまだ業界に浸透しておらず、資源回復も成長産業化も実現できていません。

この間、私にとってはどこか不完全燃焼な状態がずっと続いていました。そういうものだと自分に無理に言い聞かせることも何度もありました。いま、この「G1海洋環境研究会」のアドバイザリーボードの一員として、もう一度これに手を伸ばせる機会をいただけていることに感謝しています。そして、時代のまた新たなフェーズの到来に、身震いがしています。

1月31日 G1海洋環境研究会の様子

描かれる次のビジョン

いま、ここまで成長した今の日本のムーブメントに必要なのは、ステークホルダーの調整能力に長けた、確実な履行を行うことのできるキャパシティでしょう。シーフードレガシーはスタッフ一同、業界随一の専門知識とグローバルCSOネットワークを駆使し、皆様と手を取り合いながら、今後も国内でのこの前進に全力で貢献していきます。

それと同時に、実は私の頭には次のビジョンが鮮やかに描かれ始めています。それは、このムーブメントの東アジア展開。

東アジアは、世界最大の水産物の生産地域かつ最大の消費地域です。この地域で効果的な解決策の実施が急がれなければ、世界人口が増える中、持続可能な海のフードシステムが築かれることはないと言って良いでしょう。日本のこれまでの努力が水泡に帰してしまう可能性さえあると思っています。

また、日本の津々浦々の漁村の多様性を後世に残す観点から見ても、国内の水産業界の視野を広げ、成長産業化に成功する世界の水産システムと歯車を噛み合わせていくことが、不可欠となってきているのは自明でしょう。

そこで、政府主体では実現し得ない韓国・台湾・中国・日本のイニシアチブをCSO連携を主体に紡ぎ合わせ、東アジア規模で「マーケットトランスフォーメーション(市場の変革)」と「ポリシーシフト(政策転換)」の歯車を噛み合わせていこうと、動いています。

2月3日、その一環として、極寒のソウルを訪れました。次のポストではそのソウル出張について記します。

今回も最後までお付き合いくださり、有難うございました。

少し前になりますが、今年もシーフードレガシーの有志で築地の波除神社に初詣に行ってきました

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