知ってて損はない歯科衛生士が語る埋伏智歯抜歯の話
親知らずについての説明はとりあえずウイキペディアで。
歯科衛生士学校在学中より個人で口腔外科研修
私は40年前に歯科衛生士の国家資格を取得しました。
入学当初は2年制の専門学校で正直2年間で資格が取れるのは嬉しかったし、学校も国家試験は当時100%の合格率だったので普通に勉強していればとりあえず歯科衛生士になれるのかな?と安易な気持ちでした。
学校に入学したら、高校より授業数が多いし(土曜日もある)専門科目試験がすごく大変。2年生に進級できない人もたくさんいたし途中で学校を辞める人も。2年生になると実習で個人開業の歯科医院に行き、歯科医の先生が何を言っているのかわからず、アシスタントも出来ず。2年生の夏休みに近くの病院の口腔外科のOBに知り合いがいてその方に頼んで勉強させてもらいに行った。もちろん無給。ものすごく忙しくて猫の手も借りたいほど(患者数は1日200名)。こんな私でも掃除や患者さんの誘導などで役に立った。研修医の歯科医3名もいてとても優しかった。昼間は口腔外科、夜は夜間やっているゴルフの練習場で小遣い稼ぎのアルバイト。
この口腔外科は一般の歯科医院からの紹介で手術が多い。手術日は週3日。午後の予約制。
夏休みも後半に入ると徐々にいろんな事を任せていただけるようになった。
一番手術で多いのは埋伏智歯の抜歯「8番埋伏EXT(エキスト)」手術前トレーに手術で使う器材を用意する。だいたいその日その日で10~13人分。歯肉を切開するメスから縫合する器材まで。最初はただただスピード感をもって器材の間違え、抜けがないようにメモを見ながら、先輩に確認してもらいながら用意をした。
手術前のカンファレスでその日の患者さんのレントゲン画像をみんなで診る。上司の先生が誰がどの患者さんを担当するか決める。私は最初見学だけだったが、40日間の夏休みも終盤となった頃初めてアシスタントにつかせてもらった。患者さんが緊張しないようにユニット(治療椅子)に誘導し、手術の手順を説明し、手術中の注意事項、手術後の注意事項も言えるようになった。短い夏休みで反省がたくさん。その後無事に合格したものの、口腔外科に勤務したいという希望があったが、とにかく新人は下働き(1つ上の先輩をみてそう思った)それではダメだとなぜか思った私は無給でいいので使ってほしいと週3の手術がある日だけもちろん午前中の一般診療から手伝わせてもらった。他の日は一般の歯科医院でアルバイト。時代はバブル真っ最中。口腔外科のOBの先生はみんなお金持ちで貧乏な私になぜかおごってくださる。
口腔外科手術は埋伏智歯だけではなく、入院が必要な口腔内の病気(ガン)交通事故の外傷。症例がたくさん。難しい手術の時は最優先で見学できた。手術室に入り障がい者の全身麻酔下における治療のアシスタントもやらせていただいた。
たぶん埋伏智歯抜歯に関しては症例数も多くかなり勉強したと思う。
親知らず(第3大臼歯)・埋伏智歯を抜歯する前に読んでほしい
埋伏智歯をこれから抜歯予定の方。抜歯予定でない人も是非。
20代になったらまず、自分に埋伏智歯があるのか普段の一般の歯科医院でレントゲン(パントモという全体を撮る)を撮った写真にあるかないかだけ確認してもらいたい。
私の水平埋伏智歯抜歯物語
私は歯科衛生士の学生のうちから、埋伏智歯が顔を出さないうちから右下1本あるとわかっていたのでいつかこれが少しでも顔を出したら抜いていただこうと覚悟していた。あるうちは毎日気になっていた。(案外ストレス)
口を開ける際に智歯がある側は少し違和感がある。埋伏智歯の手前の歯(第2大臼歯)と埋伏智歯が接する小さな接点がわかるようになるとそこがむし歯にならないように毎回歯磨きの際には最初に磨くように気を付けた。たまに自分で探針という器具でその接点を探ってみたりした。
ある日とうとうその埋伏智歯が顔をのぞかせた。いよいよだと覚悟する。
抜歯する前にむし歯にならないように気を付けたほうがいい。
今はワンタフトブラシもあるので磨きやすいと思う。
なぜかというと、むし歯になってしまった歯は細菌だらけなので抜歯したあとは当然出血しその血液中に細菌が入り込み炎症を起こし治癒するのに時間がかかる。
私が抜歯するタイミングには修行先の口腔外科は卒業し(就職したかったがその年の募集はなかった)一般歯科に就職が決まっていたので就職先で抜歯していただいた。
抜歯の手順はわかりきっているのですが、いざ患者さんの立場になるとこんなに不安なんだなということがよくわかった。
目の前を器具が行ったり来たりするだけでも怖いだろうな・・・
先生と歯科衛生士が何を話しているかわからないので怖い・・・
器具を置く音・・・
もちろん目隠ししますが、しないところでは目は開けずに左手(手首だけ)を少し挙げて合図してください。歯科衛生士はいつも気にしていますよ。(右手は先生に当たってしまい危険)
勤務先の歯科医院では麻酔前に消炎鎮痛剤(痛み止め)を飲ませる。抜歯したあとにその薬がちょうど効くからという理由で。それと鼻から笑気ガスを吸わせリラックスした状態にしてから麻酔をかける。麻酔は伝達麻酔(針が長くて太い)。
途中で痛かったら局所麻酔を追加。※笑気ガスは保険適応
笑気ガスと麻酔が効いている間は押されている感じと歯を削って分割したキーンという感じとメキメキという歯を抜いている際に感じる嫌な感じ。手術時間はユニット(治療台)に寝ている時間は約30分。スムーズに終わった。術後100%の酸素を吸い、綿花で圧迫止血し、しばらく安静。約1時間の帰宅の道のり。次の日は普通に仕事。休み前でもよかったのだが、万が一何かがあった場合先生に相談できると思ったのであえてその日に抜歯した。帰宅後の麻酔が切れてからは痛みが出始めたので痛み止めを追加で飲んだ。痛くなってから飲むのではなく時間時間で切らさないように。当日のお風呂はダメです。患部が少し腫れてきたので濡れタオルで冷やすと気持ちがいい。よくアイスノンなどでギンギンに冷やす人もいるが体が治そうとしている反応なので、冷やしすぎるとよくない(血流が遮断され予後がよくない)と先生が言っていた。私は抜歯した智歯をもらってきた。むし歯にはなっていなかった。術後のぽっかりした穴を塞ぐため歯肉を糸で縫ってある。しかしその下は空洞で正確には次に組織になろうとしている血がたまっている状態。口の中に術後の血が少し流れている状態なので多少口の中が気持ち悪いが、強くうがいをしてはならない。それをするとドライソケットになってしまうから。
少しの血が吐き出した時に出るようでも実際は唾液中にほんの少しの出血があって唾液とその血が混ざっているので大した量ではない。心配なら相談する。出血が多いという状態は口からあふれ出る状態でタオルで口を押えてもダラダラ出てきてしまうのは出血が多い。(他院で抜歯後救急車で運ばれてきた患者さんがいて患部に止血剤を入れて縫い直す処置をした)私は抜糸予定までの1週間本当に痛みがあったのは2日間でよく食べられなかった。なので抜歯の前日にはいつもよりおいしいものを食べておいてよかった。(お酒は絶対にダメ)
抜歯後に腫れて痛くて大変だった話をよく聞く。体調の悪い時、寝不足の時にはやってはいけない。あと一番思うのはむし歯になって腫れた状態で抜歯するのは予後が良くないと思う。実際そのような患者さんはお薬で鎮静化してから抜歯するケースもあった。
術前には今飲んでいる薬の確認をします。特に「血液サラサラ」「骨粗しょう症治療薬」は要注意なお薬です。糖尿病がある方も要注意。
口腔外科にいた歯科衛生士が思った大事なこと
智歯(親知らず)にむし歯があって痛いから抜いてスッキリしたいと思うより智歯をむし歯にしない努力をしてから抜歯してほしい。
特に女性の方は妊娠前に抜歯することをおすすめします。
私は1週間後の抜糸まで少し口が開けづらかったが、めでたく抜糸後、口(くち)はスムーズに大きく開くし、何といっても、すごく気持ち的にスッキリした。
ここでは歯科医の技術的なことは書きませんが外科手術が本当に上手な先生とそうでない先生はいます。
ただ、予後のトラブルのことを考えて大きな病院で抜くのもいいし、小さな歯科医院でも腕がピカイチの先生もいるのも確か。ネットの情報だけで病院を決めないでまずは信頼のおけるかかりつけ歯科医へご相談を。
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