見出し画像

雨音によせて

はじめましての方は初めまして。そうでない方はこんにちは。風見汐音と申します。

ついに、私の尊敬する先輩の最後の舞台が終わってしまいました。私は当日制作という立場で、先輩方の舞台にお客様を案内する役目を務めていました。これに立候補したのはほかでもなく、先輩の最後の舞台に、なにかしたいという思いが強かったからです。そのためには観劇側ではなく、裏方にいたいと思い、役目をいただくに至りました。
受付も、場内も、先輩後輩の助けをたくさんもらってなんとか上手くやることができました。自分一人だときっともう少しうまく回らなかったと思います。ありがとうございました。

なんやかんやあって、劇の方は三回見させていただきました。全部ちゃんと場内。三ステだけは、先輩に見ていただいて、受付卓で待機していました。正直、当日制作という立場上、そう回数見られるものではないのかな、と思っていましたが、これだけの回数見られて満足です。スリーランホームラン。
正直、千秋楽は客入りの米津玄師『メトロノーム』で涙目でした。
感想、の詳細はアンケートに送った方が先輩方には喜んでいただけると思うので、あとで送りますが(余力があれば)、広瀬についての所感だけここに書きます。
まず、舞台に出てきたな、と思って、第一声を聞いた時に、「この人こんな声も出たんだ」と思いました。普段の、ハリがあってパワフルな声ではなく、かといってまじめな時の少し変わった声色でもなく、儚い声。そりゃあまあ、ずっと一緒にいたわけでもなければ同期でもないので、知らないところはたくさんあると思います。でも、それが私には衝撃でした。知らなかった一面を目の当たりにして、それで、ふと、11月ごろの先輩のツイートを思い出しました。目の前にいたのは先輩じゃなくて間違いなく「広瀬」で、ああ、きちんと「役」になっているな、と思いました。それなのに、少しだけ先輩っぽさのスパイスが入っていて、不思議だなあと思いながら見ていました。宛て書きなのかなあ、気になる。
一回目の印象と、二回目・三回目の印象は全く違いました。全てが紐解かれた後に見ているからでしょう。でもなぜか、どこか憎めない、というか、コミカルに描かれているような気もして、でもその中に不気味さとか、歪さが見え隠れしていて、すごい演技力だな、と思いました。

はい。広瀬の話はここでおしまいです。
ここから後ろは、敬愛する先輩のお話。

先輩と知り合ってから、もう五年が経つらしいです。信じられません。そして、私が先輩のことを見てから、もう六年になります。

六年前の夏。受験を控えた私は、どの中学三年生もやるように、受験候補の学校の文化祭を巡っていました。とはいっても、私は中学一年生のときから、先輩も私も三年間を過ごしたあの、「自由」を体現したような高校に通いたいと思っていたので、他の高校はおまけでした。
その、本命校の文化祭。一人で来ていた私は、お化け屋敷は並ぶし、フードにはまだ早いし、と思いながら校内をふらふらと歩いていました。そこでふと見かけたのが演劇のチラシ。時間も丁度良く、見てから次に行こうと思い、生徒ホールに立ち寄りました。そこでやっていた演目こそ、先輩の初めての舞台、『銀河旋律』。
生粋のSF好きだった私にいたく刺さったその劇は、演劇に興味を持たせるには十分でした。次の年、無事にその高校に入学した私は、文化祭で『サマータイムマシン・ブルース』を見ました。そこで思ったのは、「なんか見覚えある人いるな~」でした。そして、よく思い返したり他の人のツイートを見て、はたと気が付いたのです。
「『銀河旋律』の主演の先輩だ!?」
本当にびっくりしました。んでサマタイはとっても面白かったので(それこそ正直今現在でも好きな台本のうちの一つですし、あの舞台もよかった劇の三本指に入ります)、ファンアートを書いたり、感想をツイートしたり、NG集を見るためにインスタを開設したり、と完全に一介のオタクをしていました。アンコール公演にも行きました。楽しかったです。
そして、高校三年生になって、担当になった先輩と一年間二週に一度のペースでお会いして。はじめて面談したときに言われた「貴方の名前初めて知ったわ、良い名前だね」という言葉は今でも忘れていません。それで、文化祭委員長をやっていた中で、支えていただきながらなんとか大学に合格して。
そこから二年間。学科の、サークルの、バイト先の先輩としてたくさんのことを見せていただきましたし、教えていただきました。

『マザー・マザー・マザー』
私が見た初めての劇団個人主義の演劇でした。聞いていた通り面白くて、受験期に見た気がするのですが、母親が三人そろったときにタイトル回収していてうお~~となりました。
先生役、やっぱり似合ってましたね。

『ミス・ダンデライオン』
終わった後の友人との感想戦が長かったし帰りの電車で書きなぐった感想も長かった回。ひー兄ちゃんも好きだし樹里ちゃんもすごい好きです。でも、一番はやっぱり野方さん!!! タイムマシンに乗る役ばかりしていた先輩が開発する側の役をしている、というところに感動しました(誰目線)。
すごく好きな本です。原作も読むくらい好きな本です。

『散歩する侵略者』
私の初めての舞台。先輩は(おそらく)お忙しい中での座組参加だったかと思います。憧れだった先輩に、自分の演技を見せることができて、すごくうれしかったです。同期のほとんどと一緒に舞台に 乗れたのもすごく印象深いです。
初舞台、沢山褒めてもらえたからこそ今こうして演劇に対するモチベーションを保てていると思います。

『日本語私辞典』
先輩演出、私出演の両国BEARでの公演。先輩の演出に触れることができて、よかったなと思っています。あと、結構いろいろな知らなかった衝撃的な話を聞くことができたので本当に良かったです。

『寸前家族』
完全に触発されて演出をやったといっても過言ではない。引継ぎ意識の冬→春になったかなと思います。初めての演出でしたが、見終わった後先輩にたくさん褒めてもらえてうれしかったです!

いつも、感想を長文でLINEで送ってくださる先輩が、本当に大好きです。
全部、私の宝物です。



『辞す・飛んでやるもん』

「集大成」、その言葉が似合うステージでした。先輩の書いた曲がずっと、使われていて、やっぱり敵わないなと、そう思いました。先輩は違わずに私の先輩で、ずっと、ずっと前を歩いているんだなと、実感させられました。そんな先輩の、演劇を始めるきっかけの一端を私が担っているということは、正直未だに信じられません。だって、あまりにも、よく出来すぎている。同じ場所で演劇に魅入られて、そうして同じ光景を、最後に眺めているなんて。でもそれはまごうことなき現実で、そうして先輩が、私の隣に立っていてくださるのが、本当にうれしくて。

先輩の最後の舞台を見届けることができて、私はとても幸せでした。

まあ、わがままが許されるのであれば、やっぱり同じ舞台に立ちたかった、とは思っています。
私は言えなかったのに先輩にそうやって言われて、同じこと考えてくださっていたんだなあと思って嬉しくなりました。





ひたすらに呪った二年の差が埋まるほどにもらった贈り物を抱えて、ひとまずあと二年。後悔のないように舞台に立ちたいと思います。


雨が降っていますし、その音が響いていますね。
けれど、貴方に似合うのは青い空だと、そう思っています。

きっとそのうち、海が綺麗に見えるでしょう。

敬愛する、洋琴の似合う先輩へ。
またいつか、お会いしましょうね。


スイートピーの花言葉を添えて。
風見汐音こと、汐海風音より。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?