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神鳴に弓を引く
蒼い矢を番えて。
皆さまこんにちは。風見汐音と申します。汐海風音は双子の姉です。なんちゃって。
いやあ、冬公演、終わりましたね。
元々もっとこう……安楽椅子に座ってのんびりしている予定だったので、終わってみると本当に嵐のように過ぎた一か月だったな、と思います。
楽しかった、と思う反面、もう少しできたこともあったんじゃないかな、と感じる節も無きにしも非ずというところですかね。
演出、という役割の捉え方はきっと人それぞれですが、私はどちらかというと役者をまとめ上げるだけの仕事かなあ、という気持ちです。勿論行き詰っていたらそこにはヒントを与えるべきではあるのですが、それも役者同士でもできますからね。
大体の方向性と、好き勝手やっていいラインを引いておいて、そこで表現してくれる役者たちに任せる。それが私は好きなやり方です。
この冬公演を通して、生きていく上での課題点も結構強く意識されたなと思います。
「自己犠牲」
自分が多少我慢すれば、組織全体にとっての利益となるから、それを受け入れる、というところ。
でも便利なコマとして扱われるのはやっぱり許せないらしい、ということにも気が付いて。
てっきり自分の意思で決め切ってるもんだと思い込んでたから、苦しんでるのにびっくりもした。
ば、っと怒りが湧いて、それに失望して、自分がどうしたいのかをよく見つめて。
ああ、演出、やることになったからには完遂したいんだ、と思って。
勿論、たった一人の我儘で役者を、舞台監督を、私を振り回すな、とも思ったんだけども。
見せられるものを作るなら今の形じゃないと駄目だろう、というところもあったけれど。
演出。
またどこかでやれたらいいな、とは少し思っていたから、その機会が手元に
降ってきて嬉しかったのかもしれない。
まあ、序盤は稽古中苦しいことも多かったけれど。
その辺りが楽しくなったのは役者のおかげですかね。みんなどんどん上手くなって、見たかったものが見えるようになってきて、だんだんと楽しくなってきて。
ゲネを見て確信しました。
ああ、うちの役者たちが一番だな、って。
二座組で対抗する、みたいな意図ではなかったのですが、やっぱり多少はありましたよ、対抗心。
向こうより絶対いいものにしたい、って思ってはいた。
多分、目的は完遂されてる。
笑いどころをちゃんと笑えるように仕上げたかったし、それでお客さんが笑ってくれてたから。
何より、向こうの座組の人たちが笑いながら見ているのを見て、物凄い優越感があった。
演劇として、エンタメとして完成されていたのがうちの座組だったかな。
それを見慣れてたからむしろ向こうが少し物足りなく感じたりもしてた。
まあそこは演出の好みになってくるけれど。
私のもとでの劇としては、申し分ない出来だった。
きっとこれ以上私が演出をすることはないから、私史上最高の劇になった。それでいい。それがいい。
神鳴に弓を引くには相応しいメンバーだった。きっと。
煌めくライトと、落ちる影を、また、まだ愛せる気がする。
共に行く夜色の君の、瞳の星が褪せないように、願っています。
風見汐音