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look back on "after blue"(その11)

12 night sewing
アルバム制作のかなり初期の段階からおおまかな形ができていた、このアルバムで唯一日本語の歌詞の曲。

前曲「empty boat」で静謐な風景を映していたカメラは、どこかへ行ってしまって、この曲の風景は誰かの夢の中。

誰か、というのは特定の誰か、というよりも、不特定多数の、僕やあなたや彼や彼女の夢を縦横無尽に繋いで縫っていく、たとえば縫製機があって。
その縫製機のための音楽のような。
感じかもしれません。

遠く離れている場所で暮らす、色々な人が夜に見る夢が、どこかで繋がっているような予感、そんなものを感じて暖かい夜を過ごしたいのです。

「night sewing」の試聴はこちらから。

時刻は24時をとうに回って、夜の一番深い時間帯に。
スコット・フィッツジェラルドが「魂の時間」と呼んだ時刻だ。
というやつが、次の曲です。

***

13 breath
魂の時間のための音楽。
前半は(ほぼ)ギター1本だけの演奏です。
一発録りを何度か繰り返して、結局は最初の一回目のが一番良かった、みたいなパターンだったような気がします。

ねむりにつく前の、大きく吸い込んで、そしてゆっくりと吐き出す息のような。
過ぎ行く一日を懐かしむように、ゆっくりと呼吸して。
そうして吐き出す息が部屋を包んでいくとともに、ゆっくりとねむりの世界はやってきます。

…その後の世界のことは、僕にもよく分かりません。
たとえばこんな感じ…?という風に音楽は続いていきます。
音楽が続くから、僕もなんだか音を重ねて、それから飼い猫が足下にやってきて。
半分ねむりの世界にいる僕に、なにかを話しかけました(わりとしつこく)。
そんなことの、記録です。

「breath」の試聴はこちらから。

ねむりに落ちて、after blueの世界はゆっくりとフェードアウトしますが、最後の曲「pocketful of birthdays」はゆっくりと幕を閉じるエンドロールのバックに、ささやかに鳴り響きます。

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