come wind come rainのこと(その7)
10 July On Half Moon
tmmによる、Wool Stringsの一番初めの音源の一曲目であり、かつ一番初めに録音した曲のカヴァー。
石原さん曰く、前からこの曲のカヴァーを、と考えていてくれたようで、大変光栄に思います。
この曲は思い返せる限りでは、the pastelsの"Dark Side of Your World"という曲をイメージして作ったような淡い記憶があるのだけど、改めて聴き返してみると、曲のテンポくらいしか似てないですが、それはともかくJad Fairの存在感も際立つ名曲ですね、これ。
というのはともかく、July〜を録音した時はまだDAWは導入していなくて、ヤマハのハードディスクレコーダーを使って試行錯誤していました。素材をHDDMTRに録音した後、1トラックごとに再生して、Sonarへ再度録音し直したり。
tmmのカヴァーは次々と表情を変えていく追っかけコーラスが美しい、とてもシンプルなアレンジで、これもこのアルバムの制作初期にデモ段階のバージョンを聴かせてもらって、もうこのカヴァーが収録されるだけでこのアルバムは間違いないんじゃないか、と思ったくらい、すぐに気に入ってしまったものです。
後半の、隣の部屋から聴こえてくる感じの原曲のイントロパートも、まるで子どもの頃の記憶のように淡く、アルバムの終盤、次の日々/遠景に繋がっていく様子が頭の中に浮かんできました。一日が静かに暮れていくように、静かに、静かに。
11 日々/遠景
そんなことを考えてこの曲をここに配置したので、僕の中では映画のエンドロールで流れる曲のようなイメージで、僕の中では、このtmmの"日々"という曲のカヴァーは特別な意味を持っています。
実際にこの曲を録音したのは昨年の8月の盛り、これ以上ないんじゃないか、というような酷暑の日で。なんとなく遠い場所の、誰も歩いていない、人の姿も見えない道の上で揺らめいている陽炎のような、そんな風景も紡がれているような気がします。
"日々"は何度かtmmの一員として参加させてもらったライブでもたくさん演奏した曲です。ギタリストの一員としてはまた全然違う弾き方をしていたけれど、今回は僕の頭の中の引き出しから自然と出てきた、ノスタルジックな世界が広がっているように思います。ギターソロのメロディラインもごく自然に出てきて、そんな音のつながりから、最後の"遠景"というパートも顔を出しました。
色んな意味づけができるかもしれないけれど、今のところはなにも言葉を付け加えず、あとから振り返る余地を残しておきたいな、と思います。
このアルバムをまた振り返るとき、遠くからどのような風景が見えるのか。
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