島暮らしの少年ソラとカイくん (その1)
都会から小さな離島に移住した少年ソラ。
ソラが島で出会った子どもたちや、楽しかった経験、また電子書籍「100人超の音楽家との交流で分かった子どもの伸ばし方」に書ききれなかったこぼれ話などを少しづつ綴りたいと思います。
今日は、島で出会った中でも最も魅力的、惚れ惚れとするような腕白少年カイ(海)くんのお話です。
海の子 カイくん
ソラが瓢箪のような形をした小さな島に移住したのは、小学校2年の時でした。
そのひょうたん島の小学校には、元気でエネルギーの塊のような子ども達がいましたが、その中でもひときわ目立つ少年の一人がカイくんです。
カイくんのお父さんは漁師さん。
幼い頃からお父さんの漁の手伝いをしてきたカイくんは、真っ黒に日焼けし引き締まった体は敏捷で、キラキラと瞳を輝かせた腕白少年そのもの。
カイくんは、漁師のお父さんをも唸らせる釣りの名人。幼くしてその才能は目を見張るほどだったと、お父さんがいつも嬉しそうに話していました。
お休みの日には、漁船にお客さんを乗せて1〜2時間かけて遠くまで釣りに行くのですが、カイくんは良き助手としてお父さんを助けます。
釣りのポイントを熟知したお父さんの釣り船には、5〜6人の釣り人を乗せていますが、同じ船に乗っていても釣れる人と釣れない人がいるそうです。
そんな時、釣れないお客さんに「ちょっと貸して」と、カイくんが釣竿を受け取って釣り糸を垂れると必ず大きな魚が釣れる、とお父さんがいつも感心していました。
薄暗い海で
島で暮らした家からは、目の前に海を望むことが出来ました。
朝、目を覚ますと目の前の海から、太陽が登るのを見ることができます。
春さき、まだ暗い海は、潮が引いて遠くまで砂浜が現れます。
「枕草子」に歌われる「春はあけぼの」の「すこしあかりて」の時間帯。
朝陽が上る前の墨絵のように薄暗い海は、とても美しいものです。
そんな時、海から聞こえる「カリカリ」という音の方向に目をやると、遠くまで潮の引いた薄暗い砂浜に人影が見えました。
「あ〜。こんなに朝早くから、今日もカイくんがアサリを獲っているんだな」と驚くとともにいつも感心したものです。
ひょうたん島で獲れるアサリは、ミネラル分が豊富なのか、身がプリプリとして市場に売りに行くと高値で売れるそうです。
トロ箱に何杯も獲ったアサリを売って稼いだお金で、カイくんは島で一件だけの駄菓子屋兼日用品・食料品を売る店で、島の子ども達にお菓子を奢っていました。
そんな訳でカイくんは、ソラを含む島の子ども達には絶大な人気者だったのです。
(つづく)
※カイくんは「100人超の音楽家との交流で分かった子どもの伸ばし方」の中で述べた才能の型に分類すると、釣りやハンターとして超一流の「才能爆発型」ですね。