「のさりの島」を見に行った日の話。

私の住んでいる街には、大人の映画サークルのような市民団体がある。
映画が好きな人や、イベントの企画・運営に興味がある人、
映像編集や映画投影などの技術を活用したい人、
いろんな人が集まってボランティアで映画の上映会を開催するのだ。

この上映会で先日上映されたのが「のさりの島」である。
https://www.nosarinoshima.com/

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「オレオレ詐欺」で日銭を賄いながら、西へと移動する"若い男"。
電話に出たことで若い男の標的となってしまった”ばあちゃん"。

騙すつもりで乗り込んだ"ばあちゃん"の家で、
騙されて共同生活を送ることになる"若い男"。
騙し、騙されている関係のはずなのに
そこにある「ただいま」「おかえり」の言葉があたたかい。
嘘をついていることをうっかり忘れてしまいそうになるくらい。

さらに、映画の舞台となった”天草”の若者グループに受け入れられ、
ここにも自分の居場所を見つけてしまいそうになる"若い男"。
ただでさえ地元愛の強い九州の中にあって、過疎化が進む地域となれば、
突然現れた「近所のおばあちゃんの孫」を、
若者たちが疑うことなく仲間として扱ったのもわかる気がする。

"若い男"が自分の嘘が仲間にバレているのを知ることで、
物語は転換を迎えるのだが、
あのぬるま湯のような温かい関係を続けることはできなかったのか、
あの後"若い男"はどのような生活を過ごしたのか、
失うことを知っている"ばあちゃん"はどんな気持ちで"若い男"を家族として迎えていたのだろうか、
そんな後味が残った映画だった。

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そんな映画を見た後の、山本監督と藤原さんのトークショーで、共感した山本監督の言葉がある。

「映画をコンテンツとして消費して欲しくない。
映画を見る体験をしてほしい」

私がまだ学生だったころ、家族みんなで映画館にレイトショーをよく観に行っていた。
レイトショー後、駐車場にいくまでに通った道と景色。
両親と一緒に夜遊びするワクワク感。
お土産に持ち帰った映画館サイズの山盛りのポップコーン。
これらの経験が幸せな記憶として残っていて、
それが今の私の支えの1つとなっていると最近自覚し、
他の人にも同じような経験をしてほしいと思ったことがあるから。

きっと山本監督にとっても映画は幸せな記憶なんだろうなと思う。

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熊本に実家がある私も、熊本出身の役者さんかと勘違いしてしまいそうになる素晴らしい方言指導でした。

九州人の地元愛は舐めたらあかんのやで!(・∀・)


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