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海賊になれるかとか社会的責任の前に文章を読んでくれ

現在過熱している小児性愛の是非論争について、発端となった漫画についてはこのnoteを読む方は恐らくみなご存じだろうし、作者の方はすでにツイッターアカウントを消されているため、こちらでの追及は極力控える(ただしどうしても必要な場面で使わせていただくのはご容赦願いたい)。

今回私が筆を執ったのは、以下のnoteがバズっていたからである。

前半を大まかにまとめると、「海賊になるのはハードルが高いからまず無理だがそこらを歩いている子供を襲うことなら私でも可能だ! だからラブドールは犯罪者予備軍という論調に対して「ワンピを買ったら海賊になるけど馬鹿じゃねーの」という煽りは不成立!」というようなことが書いてある。

確かに日本でそれなりの規模の船舶を個人で所有し、なにかしら価値のあるものを運んでいる船を襲い金品を略奪することは困難である(以下の記事で、現代日本で海賊になるのはとにかく難しいし維持費だけでシャレにならないから生計を立てるのはまず不可能だと描いてある)。

だが他にもまだまだ「実現可能性が高い犯罪」はあるというのにそれについて全くノータッチと言うのが気になった。

たとえばTwitterで「誰それを殺したい」というような発言を公開アカウントでしている人は多数いる(児童への加害も殺人をほのめかす発言もどちらもポリシー違反である)。
心理的ハードルを乗り越えかつ捕まることを恐れなければ、人間を殺すこと自体は海賊になるよりもはるかに容易である。ロープや包丁は安値で買えるし、体格で劣っていたとしても、寝込みを襲うなどの実現可能性を高める方法はある。
もちろん、このような発言をする彼らのほとんどは殺人を犯さないが、物理的な「実現可能性の高さ」で言えば児童レイプと変わりがない。

しかしよほど丁寧に犯行予告をするか書き込まれた側が訴えない限り、「殺してやる」の言葉だけで捕まることはそうそうない。
他者を害する意思を持つことは、たしかに社会通念上望ましくない欲求かもしれない。だが、実行に移さないかぎりは基本的に罪にならないのが現代日本の法律である。実在児童に手を出さないためのラブドール」を責められる理由がない。


オタクの内輪ネタを外部に持ち出すな

小児性愛者への非難として、内輪では許される反社会的欲求をネタにした発言は周囲に眉を顰めさせ、結果自分の首を絞めることにもなるのでよくない、とも書いてある。

これに続いて、「内輪ネタはチキンレース的に独特の進化を遂げることが多々ある」と「その独特の進化を外部の人間が目にしたら気持ち悪いと思うことがある」と書かれている部分には同意する。

チキンレースのように、反社会的欲求やそれにまつわる単語、隠語を用いてコミュニケーションをとる集団があることは事実だ。
そして反社会的欲求を口にするのがステータスとなっている様子を見て「あの集団は危険だから抑圧・排斥しよう」と外部が判断することも少なくない
結果、外部からすれば同じと思われる嗜好を持っている人間が、一緒くたに排斥されてはたまらないからやめてくれ、と考えるようになる。自浄作用のようなものだ。

漫画の一文、「実在の児童に手を出す前にラブドールを~」が外部からすれば危険的思想に映ったのが、今回の炎上に大きくかかわっていると思われる。
しかし冷静に考えてほしい。あの漫画の中では実在の児童に「手を出せ」とは書かれていない。反社会的な要素を含む性癖に悩んでいたが、それのはけ口としてドールを買ってからというもの毎日が楽しいよ、と書かれているのだ。
どこからどう見ても、児童への性加害を促進するというよりは、ドールの販売を促進する内容ではないだろうか(ドールにも人権があるので児童虐待であるという意見をお持ちの方にはそう映らないかもしれないが)。

口調が気持ち悪いと思う感性自体は人それぞれなので否定しないし、見たくないというひとに無理やり見せたならば確かによろしくないことだ。
しかし漫画の一枚目にはショタコンやショタ性癖に理解のない人への注意がしっかりと書かれていたし、ツイートは4枚漫画形式だったため、圧縮されたサムネイルだけで内容を一瞬で把握することは困難であった。

一枚目で手を止めなかったとしたら、注意書きも読めないレベルの文盲な読み手にも責任があるのではないだろうか。
文盲に生まれたこと自体は悪くないとするならば、小児性愛に生まれたことも悪くないとしないと道理が通らないのではないだろうか。


加害性について

上記noteから本文を一部引用する。

「まず小児性愛は「現実で思いを遂げたら即犯罪」である。」

思いを遂げるのラインにもよると思うが、性的な意味合いでの本懐を遂げたら犯罪だ、という意味ならば同意する。
物理的に接触する以外でも、児童の裸体を眺めたり、自身の恥部を眼前に晒したり、淫猥な言葉をかけたりしても犯罪になることがある。

「同性愛者が現実で同性と結ばれても、当たり前だが全然問題はない(法律違反になる国も実在するのですが……それはまた別の話として)
だが、小児性愛者が現実で児童と結ばれたらそれは犯罪だ。」

法律を基準にしているんだかいないんだかたった数行の間で主張がぶれている気がするのだが(国によっては児童性愛行為が犯罪でないところもあるため)、「現代日本において、合意の上なら同性間の性行為は合法であるが、児童との性行為は強姦でなくても違法である」という意味ならば同意する(児童の自己決定権についてはここで語るには難しいので、ひとまず「相手の同意のないままに性欲を発散すること」を強姦とさせていただく)。

「自身の性的嗜好そのものが、加害性を伴っている」

これには一切同意できない。そもそも加害性の定義が人によって異なりすぎているということもあるのだが、何度も言うが実行に移さない限りは加害ではないのだ。
物理的に接触したり、幼子に直接「○○ちゃんの××に△△を■■したい」と伝えたなら別だが、サトラレでもない限りは個人的に楽しむだけで実在児童を傷つけることはない。

「内面に持つ嗜好そのものを、責めることはできないから。しないから。まず自覚をしてほしい。」

……いや責めとるやろがい。


0%ではないよね?という論

後半では「『フィクションに影響を受けて犯罪をするとかありえないからw』って意見もあるけど、スポーツ漫画にあこがれてプロになった人とかのプラスの影響は自慢するじゃない。都合の悪い事実にだけ目を背けてない?」というような指摘がある。
確かに漫画の影響を受けて犯罪を犯さない人間が全く存在しないと言い切るのは難しい。ゼロではない以上、「まったくありえない」とは言えない。

だがしかし、現実で行うとメリットになる「スポーツ漫画にあこがれて部活始めた」と、現実で行うとデメリットになる「エロ漫画を見て痴漢した」を心理的・社会的ハードルの高さが同じであるかのように語ってる時点でまずおかしい
世の中には様々な欲求に応じたフィクション作品が存在する。その中にはサラリーマンがモラハラ上司をぶん殴ったり、男子学生が女子風呂を覗いたり、復讐代行業者がターゲットをみじんに刻むものなど、現実で行えば犯罪になる描写も少なくない。
しかしそれらを見た読者のすべてが、実際に会社で暴れたり風呂を覗いたり、復讐代行業者を立ち上げるわけではない。理由は簡単で、漫画はあくまでフィクションだからだ。
仮に実行に移したいと思っても、日頃の恨みや性欲を発散できるといったメリットよりも、捕まったり社会的地位を損なうデメリットのほうが大きいため、多くは慎重な判断をする。

料理漫画を見て作中の料理を真似てみたり、ホビー漫画を見て玩具を買うなどの行為は、心理的・社会的ハードルともに高くはない。
一方で殺人などの犯罪は、社会的・心理的ハードルともに非常に高い。フィクションではいくらでも見られても、いざ現実で自分がやるとなれば、最後まで遂行できる人間は多くはない。
まずこの時点で「目標が異なれば実行するためのハードルも異なる」という、わざわざ言うまでもないような普遍的な考えにたどり着く。

また、"悪影響"で罪を犯した結果起こるのが、「あの集団は危険だから抑圧・排斥しよう」という”外野の判断”(社会的信用の失墜)である。
外野はあくまで外野のため、当事者グループの文化や文脈、実際の構成人員などにはまったく興味を示さず、断片的かつ印象の強い要素だけをもとに判断を下す。結果弾圧が強まる。
しかし考えてみてほしいのだが、これで悪いのは誰だ?という話だ。一番悪いのは当然ながら犯罪者である。2番目は? 断片的な情報で判断をした外野ではないだろうか?

「いや犯人が犯行に至るまで、アレな発言を容認することで育んできた集団がやばいだろ」と言われるかもしれない。たしかに一部のネットコミュニティではユーザー同士でチキンレース(基本的に犯罪スレスレの行為に挑むことを指すが、捕まってないだけでとっくに崖から飛び立っている場合もある)や、「ラジコン」と呼ばれる『高まり過ぎた性欲や精神疾患、生まれつきの素養により判断能力が十分ではない赤の他人を誘導して、犯罪を犯させようとする(捕まるのは指示者ではなく実行者)』という邪悪な行為が横行している。

また、一部の集団がキャラクターの絵が書かれたパック飲料に穴を開けて飲むことを飲尿や授乳と称し、公式に割とガチの注意勧告をされることもあった。これらを見て、「オタクは気持ち悪いしモラルのない集団」と思う人がいるのは当然だろう。

しかし、気持ち悪いとは気持ち悪いというだけのことであり、それは犯罪ではない。そして、犯罪を犯すオタクも中にはいるが、(ネット上の動向におけるモラルの強弱に関わらず)前科を持っていないオタクが多数というのも事実だ。


想定問答

「殺人はレイプよりはるかに心理的ハードルが高いから物理的に実現可能でも無理に決まってんじゃん!」
「そうするとくだんのnoteのひとが「小学生を襲うなら明日にでもできる」とか言ってたのは平気で子供を襲える人間ってことになっちゃうんですが?」

「あれは物のたとえでしょう! ショタコンオタクじゃないから児童に手なんか出さないよ!」
「なんでショタコンオタクなら躊躇なく実在児童に手を出せると思ってるのですか?」

「私たちはショタコンオタクたちと違って倫理観も遵法意識もあるから!」
「それが本音なら差別に他ならないのですが……?」


ご意見等お待ちしております。