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その土地からしか生まれないもの

年末年始を地元の高崎で過ごし、昨日の深夜に小布施に戻ってきた。

車から出た時に肌に触れる空気の違いを感じながら、ふと、どの地域にも、その土地でしか生まれないもの、育たない感性みたいなものが、きっとあるんだろうという考えが頭の中に浮かんだ。

数日留守にしていたからか、家の中はキンキンに寒くなっていて、早速風邪を引くという、早くも出鼻を挫かれた2018年の始まり。

「その土地でしか生まれないもの」といえば、昨年10日間ほど滞在したネパールのことが頭に浮かんでくる。

ネパールの旅の目的はトレッキングだった。現地でトレッキングガイドをコーディネートしている方が友人の友人だったこともあり、彼と相談してAnnapurnaというヒマラヤ山系の北西に位置する8000メートル超の山の麓を歩くコースを選択。

一緒に旅を企画した友人とは現地で合流し、10日間の旅程をともに過ごした。その友人はロンドンでデザイナー/フォトグラファーとして仕事をしているのだが、改めて、感性豊かな人間と過ごす旅ほど面白いものはないと思う旅だった。

トレッキングのコースからは、アンナプルナやその他の8000m級の山々が見え隠れしていた。

トレッキングでは、1日6〜8時間を歩き、暗くなる前にコース途中の集落にあるゲストハウス(現地ではtea houseというらしい)に宿泊しながら数日かけて目的地を目指す。目的地といっても、特別にゴールがあるのではなく、歩くこと自体が目的なので、コースは円環状になっている。

山沿いの集落だからだろうか、住んでいる人々はチベット系のネパール人が多く、MOMOと呼ばれる餃子のような食事があるなど日本人にとっては過ごしやすい場所かもしれない。コース上の道は美しい石段になっていることが多く、クライミングのように険しい場所を登るということはほとんどなかった。山の奥に進むと車が入れない道となり、そこでは馬や牛が荷物を運ぶための家畜として、今も役割を果たしていた。こういう風景こそ「牧歌的」と呼ぶのだと思う。

橋を渡る馬。この他にも複数の牛や馬を連れた人々が道中あとを立たない。

ネパールでは、日本の仏教と神道の関係に近いのだと思うが、ヒンドゥー教とチベット仏教が融合した文化が形成されている。ネパールのお寺にいくと、ヒンドゥー教と仏教由来のものが同居していることが多い。

ヒンドゥーのお寺。風に揺れる旗が美しかった。

ただ、社会的・政治的な構造としてはヒンドゥー教の影響が大きく、今でも4つのカーストが住む場所や職業などを規定しているという。とはいえ、共産党が連立政権の一翼を担うなど政治体制の変化が進む中で、社会も平等主義的になりつつあるらしい。

文化的な側面としては、特に観光客が多い街中では、旅行者からのニーズに答えている部分もあるのだと思うが、チベット仏教に由来する音楽を流している店やレストランが多かった。トレッキングのコース上にあるエリアでも、チベット系の住民が多かったこともあるのかもしれないが、立ち寄る店などで幻想的な仏教音楽が流れていることが多かった。

頭から離れない音楽なので、日本に戻ってきてからyoutubeで検索したら出てきたので、ここに貼り付けておきたい。結構、病みつきになる(笑)

話があちらこちらにいっているが、実際にネパールの土地を訪れて思ったのは、こういう音楽は、あの環境だからこそ生まれてきたものなのだろうな、ということ。

人間の力ではどうしようもない場所にあり、だからこそその美しさが際立つヒマラヤの山々、そして、その周辺に広がる広大な自然環境の中で生きる人々の生活の中からしか、こういった音が生まれることはないのではないか。日本の我が家で聞いてもしっくりこないこの音楽が、ネパールの山沿いでは、本当によく合うのだ。

驚いたことに、ネパールの音楽と関連することとして、先日、ある方が音楽ユニットをやりだしたらしいという情報が入ってきた。

その方は向田麻衣さん。もともとは、確か5−6年前に、・・・あれはなんだったかきっかけは忘れてしまったのだけれども、幸運にもお目にかかる機会があって知り合い、その頃から個人的に大ファンになってしまった方だ。

彼女は当時からネパールに通い、coffret projectという社会的事業をされていた。その後、Lalitpurというコスメブランドを立ち上げ、ネパールの山奥に雇用を生み出す事業を展開されている。その生き方やあり方にとても感銘を受けて、HLAB OBUSEの立ち上げを担っていた初年度には、ゲストとしてお招きし、高校生の前で話をしてもらったりもした。

余談だが、今回ネパールにいって、Lalitpurという地名の存在を地図上に見たときにはとても感動したし、ものすごい揺れのバスに乗って山沿いを移動している時には、麻衣さんも確かこんな感じで原材料の視察にいっていたなぁ、と、とても懐かしくなったりもした。

彼女がニューヨークに拠点をうつし、日本とアメリカを行ったり来たりしているという話は知っていたけれども、そんな彼女が「maishinta」というユニット名で音楽活動を始めていたことは、最近初めて知ったことだ。

麻衣さんに初めて会った時の印象は「声が美しい人」だということ。だから、音楽活動をやりはじめたということに対しては何も違和感はない。そして、何よりも心くすぐられたのはその音楽。ネパールを旅しながら創作したという「love is」や、その1曲目にあるHOHOEMIは、本当に、ネパールという土地の空気感をまとっているように感じられる。上に添付したチベット仏教の歌を聞いた方なら、どこかしら共通点を見出せるだろうと思うし、それが日本的な「儚さ」ともうまく融合していて心地よい。

ネパールの幻想的な音と、日本的な儚さが融合しているようだ。

僕は、音楽評論家ではないし、評価ができるほど音楽に詳しくもないけれども、麻衣さんがあの美しい声を生かして音楽活動をはじめてくれたことが、一ファンとしては(笑)なんだかとても嬉しかったし、ネパールという土地から浮かび上がってくる感性を取り入れた音楽の存在感に触れ、「土地」の可能性や、その土地を旅することの可能性を、あらためて感じることもできたように思う。だからこそ、旅は面白いし、クリエイティビティの源泉なのだろう。

・・・うまくまとまらないが、今日はこの辺で。maishintaの新しいアルバムに興味がある方は、ぜひこちらからプロジェクトのサポーターになってみては。僕もこっそりサポーターになって新しい作品の完成を待ちたいと思います^^

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