オンライン授業への懸念
危機に乗じて今までの社会制度を大幅に変える
それも国民にとってよりよき方向ではなく、
市場あるいは特定の民間企業にとって有利な方向へ舵を切る。
これをナオミ・クラインはその著書「ショック・ドクトリン」で、
惨事便乗型資本主義と書き、警告を鳴らしている。
今回の新型コロナウィルスの感染拡大に乗じた動きの中で、
そのような動きが出てくることをとても心配する。
その一つが、義務教育現場でのオンライン授業の導入である。
もっともICT機器を用いた授業全てがいけないというつもりはない。
しかし、自宅待機(学校閉鎖)のこの時期にオンライン授業を一気に進めることに
疑問と懸念(心配)を感じている。
本当に学校に行ってはいけないのか?(危機的状況を判断する材料があまりに少ない)
オンライン授業が教育を受ける権利を保障してくれるのか?(かえって格差を広げないか?)
機器さえ揃えられれば、教育を提供できるとする考えはあまりに安易ではないか?
その他諸々の疑問が湧いてくる。もう一度立ち止まって考えたほうがいいのではないか?
(すでに補正予算には、端末配布のための予算措置も含まれているらしいが)
疑問の泉の源は、今回の新型コロナウィルス感染拡大について、本当のところが未だによく
見えないことにある。生命の安全と社会生活の自由度を天秤に乗せ判断しようとするが、
このコロナウィルスによってどの程度生命の安全性が脅かされいるのかさえ、よくわかない。
判断の基準をもてないでいる。結果、上の方からの「新しい生活習慣」などというお触れ書きに
従うような形になっている。正しい判断のための材料がものすごく限られている一方で、危機感だけが
増幅されるような今の状況もなんとかならないものかと思う。
参照: https://www.jstage.jst.go.jp/article/peq/50/2/50_KJ00009361212/_pdf
書評 足立眞理子(お茶の水女子大)
ショック・ ドクトリン衽衲惨事便乗型資本主義の正体を暴く(上)(下)
ナオミ・ク ライン著/訳=幾島幸子・村上由見子[岩波書店,2011年]
2005 年 9 月のハリケーン・カトリーナが襲った直後のニューオー リンズにおいて
「教育システムを抜本的に改革する絶好 の機会である」という94 歳のフリードマンの生前最後の 発言の効果を検証している。
フリードマンのこの提案を 当時のブッシュ政権が支持し,政府による現存の公立 学校再建を停止し,公教育にも市場競争原理を持ち 込み,
私立学校に公的援助金を支給することで,教 育の競争を図るという,教育バウチャー制度が導入さ れた。
その結果,ニューオーリンズ市の公立学校は, 123 校から4 校に激減し,民間団体に運営されるチャー ター・スクールが増加した。
教職員組合を組織していた 教員は,組合の契約規定を破棄され,全員が解雇さ れた。「教育現場の強奪」が起きたのである。
クライン は,ハリケーン・カトリーナのような壊滅的な惨事が発生 した直後,災害処理をまたとない市場チャンスと捉え,
公共領域にいっせいに群がる襲撃的行為を,「惨事便乗型資本主義」と呼ぶことにしたと述べている。
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