賃貸住宅の施工不良問題
賃貸住宅の施工不良問題
毎日新聞 2019年2月17日 朝刊記事より
レオパレス施工不良 全国1324件 うち 静岡県101件(7.6%)全国でも5番目の高さ
*静岡県より上位なのは、千葉・埼玉・神奈川・東京といずれも首都圏。
人口減少社会と言われながら増加してきた「賃貸住宅」
記事によると、アパートなどの「賃貸」の着工件数は2018年39万6404戸。
7年ぶりに前年対比で減少に転じたそうだ(裏を返せばこの7年は増えていた)
アパートなどの新築物件が増えているような気がしていたのも、あながち間違っていなかった。
新築増加の背景
記事には、2015年の相続税課税強化を受けて「節税対策」として建設が増えたとある。
更地で相続するよりも、アパートを建てた方が納税額を抑える効果がある。
*そういえば土地の活用などを呼びかけるCMもよく目にする。
貸出ターゲット
貸出先に悩む地方銀行などにとっても、アパート新築物件は「おいしい案件」として積極的に融資を行った。
結果建設を後押しした。
*サブリース
アパートの建築費は地主(オーナー)が負担し、その物件をレオパレスなどが一括で借り上げ、入居者に転貸する。
オーナーは、レオパレスからの賃借料を収入とすることができ、それによってローンを返済することもできる。
節税した上に賃借料収入を期待できる。まさに「有効な」土地の利活用。
貸出先に悩む地方銀行
日本銀行(というより安倍政権)による異次元の金融緩和は2013年4月から開始され、それによってこの5年半余りで400兆円という途方もない額の資金供給がなされた。しかし需要側に資金を調達する必要性が少なく、結果資金はだぶついている。だぶついた資金のはけ先として、アパートなどの賃貸物件の建築は「美味しかった」のであろう。スルガ銀行の不正融資問題もこの文脈上にある。
ニーズとライツ、そして新自由主義経済
人が暮らすためには「衣食住」は欠かせないことに意を唱える人はいないだろう。
「住居は福祉の基礎である」とする居住福祉論(早川和男)もある。本来、暮らしの基盤としての「住居」はニーズ(=需要)で語られるものではなく、ライツ(=権利)で語るべきものである。
人口減少社会であることにも関わらず、新築物件を増やし(市場を作り)そこに資金を流し込む。そのためには、様々な規制を緩和し、税制も変更し誘導していく。まさに資金を増やすことが最大目的の新自由主義経済の流れの中でこの問題が生じている。