SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」解説|日本の課題と取り組み事例
近ごろ日本でも女性の社会進出が活発化。また、ジェンダー問題についてもメディアで取り上げられ、多様性の受け入れも進んできましたね。しかし、世界ではより一歩進んだジェンダー平等が進められています。
今回のnoteでは、SDGs目標5の解説と合わせて、日本の課題や取組事例を解説。日本ではどのような対策が求められているのでしょうか?
■社会問題を解消するための目標「SDGs」
「誰一人取り残さない」という宣誓のもと、17の目標と169のターゲットで構成されるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、現代社会の問題を解決するために定められた国際目標です。
2015年の国連「持続可能な開発サミット」で採択され、2030年までに目標を達成するために、各国で取り組まれています。
以下はSDGs17の目標をまとめたものです。
【SDGs17目標一覧】
・目標1「貧困をなくそう」
・目標2「飢餓をゼロに」
・目標3「すべての人に健康と福祉を」
・目標4「質の高い教育をみんなに 」
・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
・目標6「安全な水とトイレを世界中に」
・目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
・目標8「働きがいも経済成長も」
・目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
・目標10「人や国の不平等をなくそう」
・目標11「住み続けられるまちづくりを」
・目標12「つくる責任 つかう責任」
・目標13「気候変動に具体的な対策を」
・目標14「海の豊かさを守ろう」
・目標15「陸の豊かさも守ろう」
・目標16「平和と公正をすべての人に」
・目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
ターゲットは目標達成のために必要なことがまとめられています。
各目標に10個前後設定されていますが、私たちの生活にも影響がある項目も多いので、是非目を通して見てください。
▼ターゲット一覧はこちらをどうぞ!
日本政府の取り組み事例やSDGsに関連するグッズなどの情報は以下のリンクからいろいろ知ることができますよ。
■SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」ターゲット一覧
SDGs目標5はジェンダーに関する目標です。”ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを図る”ことを目指しています。
「男の子だから」、「女の子だから」といった性別による差別を無くすことはもちろん、古い慣習を無くし、社会的にも経済的にも男女平等な世界を実現するために定められました。
目標5達成のためにはターゲットをクリアすることが必要です。
【目標5ターゲット一覧】
5.1)あらゆる場所におけるすべての女性および女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.2)人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女子に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
5.3)未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
5.4)公共のサービス、インフラ、および社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5.5)政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.6)国際人口開発会議(ICPD)の行動計画および北京行動綱領、ならびにこれらの検討会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを確保する。
5.a)女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ、および土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
5.b)女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
5.c)ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性および女子のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する。
(参照:Global Compact Network Japan|目標 5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る)
ターゲットを見ていくと、途上国における慣習を無くすこと、そして女性の管理職の起用や性別による雇用条件の違いの撤廃、また、セクハラに対する対処を行う体制の整備など、先進国でも必要な項目が定められていることが分かります。
次項からは、とくに深刻な問題として取り上げられている途上国の慣習について見ていきましょう。
■世界で深刻的なジェンダー問題①『児童婚』
ユニセフが発表した2018年3月現在のデータによると、強制的に結婚させられる18歳未満の子どもの人数は年間約1,200万人。1日およそ3万人もの女の子が望まない結婚している計算です。
ユニセフでは、SDGsの期限までに児童婚という慣習が終わらなければ、新たに1億5,000万人の女の子が児童婚をすることになるとしています。
SDGs JORNALでは、児童婚させられた女性の証言を引用する形で掲載。そこでは、11歳で妊娠をさせられた方の姉や母親に結婚をさせられた15歳の女の子が児童婚について語っています。
児童婚は、女の子の人生を他者が決めてしまうようなもの。なにより、当人が望んだ結婚ではないことも理解しておくべきポイントです。
■世界で深刻的なジェンダー問題②『女性性器切除(FGM)』
みなさんは女性性器切除(FGM)という恐ろしい慣習をご存知ですか?
FGMは女性器を切除するもので、麻酔もしないまま医師免許を持たない者が行う女性にとって非常に恐ろしい慣習です。
世界30カ国ほどでこの慣習があり、インドネシア、エジプト、エチオピアの3カ国を中心に、これまでに最低でも2億人の女性が犠牲となっています。ユニセフによると、5歳未満でFGMの犠牲になる方も多いとのこと。
FGMを行っている多くの国では”大人になるための通過儀礼”として行われていますが、FGMに対する非難の声が広まり、20カ国の1万5,000以上のコミュニティでFGM廃止が宣言されたほか、ケニア、ウガンダ、ギニアビサウ、ナイジェリア、ガンビアでFGMが違法となる法案が出されました。
■世界で深刻的なジェンダー問題③『教育格差』
途上国では、労働環境をはじめとするさまざまな問題から、女性や子どもが社会的弱者となってしまうケースも少なくありません。
例えば、経済的理由で兄妹で学校に通うのが困難な世帯の場合、男の子が優先して学校に通わせ、女の子は家事や労働などをさせられます。
幼少期からの男女の教育格差は、児童労働や男尊女卑、成人してからも平等に扱われないといった問題にも発展しており、深刻な問題です。SDGs目標5以外の目標にも影響を与えています。
教育や貧困については以下のリンクをご覧ください。
■日本の最大の課題!?ジェンダー平等の実現が遅れている現状について
SDGsに取り組んでいる国を対象とした『SDGs達成度ランキング』が世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」で毎年発表されています。
最新のランキングでは、日本はアジアトップとなる17位を獲得。しかし、多くの課題が残っていると評価されており、その中でも、目標5は最大の課題であると指摘される目標のひとつに入っています。
日本は2016年にSDGs実施指針を発表。その後、2019年にジェンダー平等の実現と防災を追加する形で改定しました。
【SDGs実施指針改訂版8つの優先課題】
1. あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2. 健康・長寿の達成
3. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4. 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
5. 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6. 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
7. 平和と安全・安心社会の実現
8. SDGs実施推進の体制と手段
男女平等の指標となるのが議員の男女比です。
2019年のデータによると、「衆議院:全体465人(欠員3人) / 女性議員 47人」、「参議院:全体242人(欠員1人) / 女性議員 50人」となっており、全体で10.2%と、世界の議員数の男女比率としては圧倒的に低い数値です。
2020年のジェンダーギャップ指数では、日本は149カ国中121位と先進国の中でも圧倒的な下位に位置しており、過去最低記録を更新しています。
Edu Town SDGsでは、日本のジェンダーギャップ指数を解説。それによると、日本は、教育と健康は平等であるものの、経済分野は世界平均、政治では女性が圧倒的に少ないとしています。
民間企業に比べ、政治の世界では女性の社会進出は進んでいないようです。
■目標5に貢献する企業の取り組み事例①『ユニクロ』
日本を代表するファッション企業として知られるユニクロは、LGBTQ+をはじめとする性的少数者の理解を深めるための研修や啓発活動を実施。
LGBTQ+とは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クエスチョニング、クィアを表す言葉です。
注目すべきはパートナーシップ登録制度です。同性のパートナーがいる従業員もパートナーシップ登録をすることで、慶弔休暇や慶弔見舞金などの福利厚生を受けることが可能となります。
この取り組みは目標5のほか、目標8「働きがいも経済成長も」に繋がる取り組みと言えるでしょう。
■目標5に貢献する企業の取り組み事例②『JX石油開発』
エネオスグループの中核事業会社であるJX石油開発株式会社。
同社では、2015年に施行された『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』に基づき、2016年度から2020年度末までのプロジェクトとして以下の2つの実現を公表しました。
・採用した労働者に占める女性労働者の割合15%を維持
・職場と家族・家庭の両方において男女が共に貢献できる職場風土づくりを実施
このプロジェクトにより、2019年度の採用では女性が全体の35.7%、契約社員に関しては100%を実現しました。
■目標5に貢献する企業の取り組み事例③『パナソニック』
パナソニックは『ソーラーランタン10万台プロジェクト』を実施。このプロジェクトは、電力供給設備が整っていない国や地域に太陽光で発電できるソーラーランタンを寄贈するというもの。
パナソニックが寄贈した国のひとつにインドがあります。
慢性的に電力供給が不足していることで知られるインドに寄贈したソーラーランタンは約9,000台。その多くは、インドの中でも特に貧しいとされるビハール州の農村で手織布を作る女性たちに活用されています。
農村部で暮らす女性の貴重な職である手織布の仕事を支援することは、男性優位の社会が問題視されているインドにおいて、女性の社会的地位改善に貢献していると言えるでしょう。
■目標5に貢献する企業の取り組み事例④『ケイウノ』
ケイウノでは、オーダーメイド勤務制度を導入しました。
一定の条件を満たすことで、子育てや介護をはじめとするライフスタイルの変化でフルタイム勤務が困難になってしまった場合にも、正社員のまま時短勤務や曜日限定の出勤を可能としました。
2019年6月時点でオーダーメイド勤務制度は役員や男性社員を含めて約15%の社員が利用しているとのこと。
この制度を利用することで、ライフスタイルの変化に柔軟に対応しながら、自己キャリアを継続することが可能です。
■SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」まとめ
今回の記事ではSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」についてご紹介しました。日本を代表する企業も目標5に取り組んでいましたね!
【今回ご紹介した内容】
・SDGsと17の目標一覧
・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」ターゲット一覧
・目標5が必要な理由
・日本の課題とSDGs実施指針について
・企業の取り組み事例①「ユニクロ」
・企業の取り組み事例②「JX石油開発」
・企業の取り組み事例③「パナソニック」
・企業の取り組み事例④「ケイウノ」
現在の日本では、ジェンダー平等が他国よりも遅れているのが現状です。女性の社会進出が推進されているため、今後の改善に期待できるでしょう。SDGsが期限を迎える頃、どのような社会になっているのか楽しみですね。