サステナブルシーフードとSDGsの関係とは?|小売店の問題と企業の取り組み
SDGsが採択されてから、それまで海外が中心となっていたサステナブルな取り組みが日本でも普及してきています。これまでも、noteでサステナブルの事例をご紹介してきましたね。
企業や自治体の取り組みに注目が集まりがちですが、なんと食べるだけで社会貢献に繋がる「サステナブル・シーフード」というものがあるんです★
サステナブル・シーフードとはどのような魚介類なのでしょうか?
■サステナブルシーフードとは海洋環境と生物に配慮した海の食材のこと
サステナブルシーフードとは、環境に配慮した漁業を営む漁業者によって獲られた魚介類のことを言います。
水産庁が『平成28年度 我が国周辺水域の資源評価』にて、漁獲可能量制度の対象魚種のうち50魚種84系群が枯渇していると公表。
魚料理を好んで食される日本ですが、実は安く魚介類を購入できたり、お店で食べられたりするのが不思議なほど海洋環境と生物が危機的状況に陥っているのが現状です。
このような事態が起きた背景には、違法漁業・過剰漁業といった漁業者に関する問題、そして規格外や不人気のために漁獲されても廃棄されてしまう食品ロス問題、海洋環境の汚染があります。
そこで登場するのが、サステナブルシーフード★
サステナブルシーフードは、消費者に安全に食してもらうために認証機関があり、環境と生物に配慮している漁業者が漁獲した魚(天然魚)には『MSC認証』、養殖場で獲れた魚(養殖魚)に『ASC認証』を付与しています。
【MSC漁業認証を受けている漁業者】
・北海道漁業協同組合連合会:ホタテガイ漁業
・明豊漁業株式会社(宮城県塩釜市):カツオ・ビンナガ一本釣り漁業
・石原水産株式会社(静岡県焼津市):カツオ・ビンナガ一本釣り漁業
・マルト水産株式会社(兵庫県相生市):垂下式カキ漁業
・株式会社臼福本店(宮城県気仙沼市):タイセイヨウマグロはえ縄漁業
【ASC養殖場認証を受けている養殖場】
日本では67の養殖場が認証を取得。
養殖水産加工・流通業者を認証するASC CoC(チェーン・オブ・カストディ)認証取得企業は144社あります。
■SDGsとサステナブルシーフードの関係
SDGsは2015年に開催された国連サミット、『持続可能な開発サミット』にて採択された2030年までを期限とする国際目標です。
現代社会の抱える問題を解消し、サステナブルな社会を築くことを目的に世界中で取り組まれているSDGsは、海洋環境に関する問題についの目標も設定されています。
サステナブルシーフードと関係が深いのが目標14「海の豊かさを守ろう」。
目標14には、目標を達成するために必要とされる10個のターゲットが設定されており、その中に海洋環境や漁業に関することが記載されています。
【関連する目標14の主なターゲット】
14.2) 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.4) 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.6) 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
14.7) 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.b) 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
本来、海洋生物は漁獲されたり他の生物に食べられたりしても自然な循環力によって個体が急激に減少することはありません。
しかし、漁業者による漁業の仕組みや個人のモラルにも起因するゴミ問題、地球温暖化などによって海洋生物が減少。キレイな海とおいしい魚介類を未来でも楽しむために、みんなで海全体のことを考えなければなりません。
■お魚スーパーマーケットランキング7|スーパーマーケットの取り組みと問題点
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、国内大手スーパーマーケット15社(参加辞退3社)の「持続可能な魚介類の調達方針」を調査した『お魚スーパーマーケットランキング7』を発表。
ランキングは、サステナブルシーフードに関する取り組みや課題、労働環境を明確にするために実施されたもので2011年から毎年実施されています。
以下にランキングをまとめました!
【お魚スーパーマーケットランキング7結果】
1位:イオン
2位:コープデリ
3位:西友
4位:イトーヨーカドー
5位:ラルズ
6位:ユニー
7位:平和堂
8位:オークワ
9位:イズミ
10位:ヤオコー
11位:ライフ
12位:マルエツ
参加辞退:イズミヤ・バロー・フジ
(お魚スーパーマーケットランキング7より作成)
イオン、イトーヨーカドー、コープデリの3社は、魚介類の調達方針を公開し、サステナブルな取り組みを実施。また、上位3社に関しては、漁業改善プログラムへの参加やサステナブルシーフード商品の拡大も実施していることが調査により判明しました★
各社取り組みを見せるものの、日本でレッドリストに登録されている魚であるニホンウナギや大西洋クロマグロなどを販売しているという問題も。
人気の高い魚介類の販売はビジネスの面で有利です。
今後は、ビジネスと海洋生物の保全をどのように両立させるのかがスーパーマーケットにおける課題と言えます。
■パナソニックが本社社員食堂でサステナブルシーフードメニューを提供開始!
日本で初めてASC認証を取得したのは、パナソニックが支援したカキの養殖場なんですよ♬
これをキッカケにパナソニックでは、社員にも海洋環境のことを知ってもらうための取り組みとして、2018年3月から本社社員食堂でサステナブルシーフードを使用したメニューの提供をスタート!
テレ東プラスのインタビューでは、海洋環境の問題をはじめて知ったという社員の声や、食堂スタッフの声を掲載しています。
■ヨーロッパ最大級の空港が世界初の「サステナブルシーフード空港」に認定!
毎年8,000万人以上の人々が利用しているヨーロッパ最大級の空港、ヒースロー空港は、2019年6月7日に世界初となる『サステナブルシーフード空港』に認定されました★
ヒースロー空港は、年間400万食の魚介料理が提供されていますが、持続可能性の観点から好ましくない魚の提供はしていないとのこと。
また、社会への影響力のあるヒースロー空港がサステナブルシーフードを採用したことで、イギリスの人気飲食店も漁業・調達に対するポリシーを採用し、サステナブルシーフード以外をメニューから外す流れが作られました。
■サステナブルシーフードを食べて海洋環境の改善に貢献しよう!
今回はサステナブルシーフードについてご紹介しました。
いつも何気なく購入している魚介類を認証を付与されたものを選び食べるだけで海洋環境と漁業者を支援することに繋がります♬
お店で魚介類を購入する際は、ぜひ認証マークを確認してみてください。
▼参考サイト
・IDEAS FOR GOOD 社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン|サステナブル・シーフードとは・意味
・GREEN PEACE|『お魚スーパーマーケットランキング7』発表 ーー個別の取り組みは進展も、絶滅危惧種は販売継続。 揺らぐ持続可能性の定義