デンマークが採択した「新気候変動法」から学ぶ日本とのちがい
SDGsに本気で取り組んでいる国として有名な「デンマーク」
そんなデンマークが2019年12月6日に新たな「新気候変動適応法」に合意したのはご存知でしょうか?
そこで本日は、「デンマークが同意した新気候変動適応法から学ぶ日本とデンマークのちがい」をピックアップ!
・デンマークがのSDGsに対しての取り組み方
・新気候変動適応法とはどのようなものなのか
・デンマークが新気候変動適応法に合意できた理由
・日本ではなぜデンマークのようにSDGsに取り組めないのか
といった点について解説していきます。
基本のおさらい!SDGsとデンマークの取り組み姿勢
それではまず、SDGsについて簡単におさらいをしていきましょう。
この記事を読んでくださっているみなさんはもうすでに「SDGs」について理解している方も多いかと思うので、簡単におさらいをしていきます。
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは『Sustainable Development Goals(サスティナブル・ディベロップメント・ゴールズ)』の略称で、持続可能な開発目標といった意味。
2015年9月の国連サミットで採択され、翌年2016年から2030年の15年の期間でSDGsに設置されている17個の目標と169個のターゲットを国連に加盟している国すべてが達成するために取り組んでいる世界共通の目標であり、とても大きなプロジェクトです。
《SDGsの目標》
テーマ 『誰も置き去りにしない世界』を目指して
目標1 「貧困をなくそう」
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標2 「飢餓をゼロに」
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
目標3 「すべての人に健康と福祉を」
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4 「質の高い教育をみんなに 」
すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5 「ジェンダー平等を実現しよう」
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを図る
目標6 「安全な水とトイレを世界中に」
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7 「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
目標8 「働きがいも経済成長も」
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9 「産業と技術革新の基盤をつくろう」
強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標10 「人や国の不平等をなくそう」
各国内及び各国間の不平等を是正する
目標11 「住み続けられるまちづくりを」
包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12 「つくる責任 つかう責任」
持続可能な生産消費形態を確保する
目標13 「気候変動に具体的な対策を」
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14 「海の豊かさを守ろう」
持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15 「陸の豊かさも守ろう」
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16 「平和と公正をすべての人に」
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17 「パートナーシップで目標を達成しよう」
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
SDGsの目標やターゲットについて詳しく知りたい方はこちらをサイトを参考にしてみてくださいね♪
◆デンマークのSDGsに対する取り組みの姿勢
デンマークはSDGsに対しての取り組みが積極的なことで知られています。
『Sustainable Development Report 2020(持続可能な開発レポート)』というSDGsに取り組んでいる各国の目標達成度を数値化してランキング形式で発表されたレポートではデンマークは2位という功績を残しました。
The Sustainable Development Goals Report 2020
1位:スウェーデン
2位:デンマーク
3位:フィンランド
4位:フランス
5位:ドイツ
6位:ノルウェー
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17位:日本
デンマークがここまでSDGsに対して取り組める理由には、
①環境問題に関心の強い国民性
②オーガニックフードの普及率の高さ
③北欧諸国の福祉の充実に倣ったジェンダーギャップの改善
④セクシャルマイノリティに対しての理解
があるためだといわれています。
すべての項目を見ても、どれも日本にはあまりないものばかり。
日本ではオーガニック食材は敬遠されていますし、環境問題は他人事でLGBTなどのセクシャルマイノリティに悩む方は多いのが現状です。
SDGsランキング上位のデンマークはこういった問題はすでに解決をしており、その上でSDGsに対して取り組めるため日本よりも先を進んでいるためSDGsに対して取り組みがしやすいといった基盤があります。
また、デンマークでは国民のSDGsに対する認知度も高く国民がエコにつながるようなサスティナブルライフを取り入れているためここまでの功績を残すことができたんですよ♪
デンマークのSDGsに対する取り組みについてはnoteでも詳しくご紹介しています!デンマークの取り組みの詳細を知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてくださいね。
SDGsに積極的な国デンマークが取り入れた「新気候変動法」とは?
SDGsとデンマークのSDGsに対する姿勢についておさらいをしたところで、実際に今回のテーマでもある「新気候変動適応法」について目を向けていきましょう。
そもそもみなさんは「気候変動適応法」というものがあるのはご存知でしょうか?
《気候変動適応法とは?》
地球温暖化に関する法律。日本だけではなく世界各国でも制定されている。
世界全体の目標には、
・世界全体の平均気温の上昇を2℃以内に抑える
・適応能力の拡充と強靭性の強化
が規定されている。
気候変動適応法は、日本やデンマークをはじめ、イギリス・フランス、韓国、ドイツ、アメリカでもその国ごとに取り組まれています。
日本の気候変動適応法では、「温室効果ガスに対しての取り組み」など具体的な期間を示さずに大幅に削減という抽象的なイメージの法が制定されているのが特徴です。
対して、デンマークが採用した「新気候変動適応法」では
・2030年までにCO2は排出量を減らす(1990年と比較して70%削減)
・2050年までに「カーボンニュートラル(※1)」にする
・10年先まで目標を5年毎に設定する
・同計画の取り組みを「気候評議会」が専門的に評価する
・国際海運・航空関連への排出等への同国の影響に関する報告書を作成する
などのように具体的な機関と目標が設定されています。
※1「カーボンニュートラル」とは…地球上のCO2(炭素=カーボン)の総量に変動をきたさない、CO2排出を吸収がプラスマイナスゼロになるようなエネルギー利用のあり方のこと。
なぜデンマークでは「新気候変動適応法」が導入できて日本ではできないのか
ではなぜ、デンマークが新気候変動適応法を導入できたのかという点について目を向けていきましょう。
◆エネルギー対策に対する政策の一本化
デンマークは日本と同様にいくつかの政党がありますが、エネルギー政策に関してはどの政党でも一本化されているという特徴があります。
日本のように政党ごとに言っていることが変わらないため、政党が変わっても政策自体はしっかりと引き継がれるのでスムーズに事が運びます。
そのため、「新気候変動適応法」の採択も順調に進んだため、今回のように新気候変動適応法が採用されました。
日本ではひとつの法律を採用するのに膨大な年数を必要とするのに対して、デンマークの政治はエネルギー対策自体が一本化されているため日本とは比べものにならないぐらいの早さで新しいものを取り入れられるというメリットがあるんですよ。
◆日本とデンマークのちがいは?
デンマークのエネルギー政策が政党関係なく一本化されているという理由のほかに、日本がデンマークのようにスムーズに新気候変動適応法を採択sできない理由がいくつかあります。
一つ目は、「国民の環境に対する意識のちがい」
二つ目は、「環境問題のほかにもやらなければいけないSDGsへの取り組みが山積み」
といった点が特徴です。
それではひとつず確認をしていきましょう。
(1)国民の環境に対する意識のちがい
日本人の大半は環境問題に対して「なんか大変だな」「このままじゃいけないな」といったように他人事として考えている方がほとんど。
そのため、環境問題に対して何か行動を起こすという主体的な取り組みをしている方は少なく、どこか他人任せという方が多いのが特徴です。
対してデンマークの場合は、幼少期から環境関する勉強をしているため環境の問題に対しての意識のちがいがあります。
たとえば、日本ではディスカッションをすることに対して苦手意識がありますがデンマークではそんなことはありません。
むしろ自分の意見を他人に言うことについては良い事だとされています。
教科書通りの勉強だけではなく、
・自分の立場で環境問題のゴールをみつけるためにディスカッションをする
・他人の意見に耳を傾け、さらに自分で考えていく
ということを環境問題でも行なっているのが特徴です。
大多数の意見に流されやすい日本人からしたら考えられないことかもしれませんね…
こういった環境に対する教育が幼少期から続くため、環境に対する国民性になってあらわれて現在のように「新気候変動適応法」の採択といった大きな課題につながってきているんですよ。
(2)日本は環境問題のほかにもやらなければいけないSDGsへの取り組みが山積み
冒頭でも少しふれましたが、デンマークはSDGsに対して積極的に取り組んでいるため目標を達成している項目が多いのも特徴です。
日本の場合は、デンマークと比較してもスタートダッシュが遅いだけではなくやらなければいけない課題が山積みのため「新気候変動適応法」まで手が回らないのが現状…
徐々に改善されている女性の社会進出においても、デンマークはすでに解決しています。
また、メディアなどでも問題になるLGBTの差別もデンマークでは時代遅れ。
日本はデンマークと比較してかなり遅れているため、仮にエネルギー政策を一本化にしたとしても新気候変動適応法が採択されるまではかなりの日数が必要になります。
デンマークのSDGsに対する姿勢は日本も見習うべき!
いかがでしたか?
それでは今回ご紹介した内容のおさらいです。
【デンマークが合意した新気候変動適応法と日本とデンマークのちがいについて】
・SDGsについてのおさらい
・デンマークのSDGsへの取り組み
・気候変動的法とはどのようなものなのか
・デンマークが「新気候変動適応法」を導入できる理由
・デンマークが新気候変動適応法を採択できて日本では採択できない理由 について解説してきました。
デンマークのSDGsに対する意識の高さは目標設定が具体的になっていたり、環境に対する国民性やセクシャルマイノリティに対してのイメージなど…
日本とは大きく異なるところが多い印象でした。
エネルギー政策の一本化や課題をすぐに解決することは難しくても、国民へのSDGsの認知度と環境問題に対する意識の差は日本もデンマークを模倣していくべきポイントかもしれませんね。
今回ご紹介したデンマークをはじめ、SDGs上位国家の取り組み事例などについて知りたい方はこちらの記事を要チェック☆
noteでは北欧など他国のSDGsの取り組みや日本の課題などについても発信中!こちらもあわせて参考にしてみてくださいね。
《参考サイト》
・デンマーク、2030年までに1990年比70%排出削減する気候法を可決