『地球の限界』を考えてみよう。それは・・・(3)

水危機 の続きです。

 
<水不足・水質汚染>
▪アメリカはこの20年間、干ばつに悩まされ続けている。
干ばつの原因は、温暖化による大気の変動とみられているが、アメリカの 
水不足に拍車をかけているのは、地下水の過剰な汲み上げと言われている。

米、過去1200年で最悪の干ばつに見舞われる恐れも —— 専門家が警鐘

カリフォルニア州にあるデスバレー国立公園では6月17日、華氏130度(摂氏約54度)を観測した。熱波に見舞われたアメリカのカリフォルニア州は、カラカラに乾いている。その水位は史上最も低くなっている。専門家らは、ここ1200年で最悪になるかもしれないアメリカの干ばつは、気候変動の影響だと話している。
 
こうしている間にも西部や南西部では猛暑が続いている —— そして、夏の暑さのピークはまだこれからだ。
アメリカ西海岸の住民は、長期間に及ぶ干ばつと記録的な暑さによる、カラカラに乾いた悲惨な夏を経験するだろうと、専門家たちは話している。
ガーディアンが取材した科学者に至っては、アメリカが近代史上最悪の干ばつを経験する恐れがあると警鐘を鳴らしている。
 
 「いま起きている干ばつは、わたしたちが少なくともここ1200年で目にしてきた中で最悪のものとなる可能性があります。そして、その原因は人類が引き起こした気候変動に直接関連しています」と、カリフォルニア大学アーバイン校の地球システム科学の准教授であるキャスリーン・ジョンソン(Kathleen Johnson)氏はガーディアンに語った。
 
カリフォルニア州では今、河川や貯水池が干上がり、その水位は記録的な低さとなっている。中でも、カリフォルニア州で2番目に大きい貯水池であるオロビル湖の水位は下がり続けていて、カリフォルニア州の電力供給に壊滅的な影響を及ぼす恐れがある。これは、オロビル湖の水を使ってエドワード・ハイアット水力発電所が発電しているからだ。CNNによると、水位の低下によって発電所の閉鎖を強いられ、約80万世帯で電気が使えなくなる
 
熱波に見舞われたカリフォルニア州のニューサム知事は先週、州全体に緊急事態を宣言した。知事は住民に対し、この暑さで「電力使用量が大幅に増え、カリフォルニアの送電網に大きな負担がかかり続けるだろう」として、節電を呼びかけた。熱波による電力トラブルは、テキサス州でも起きている。同州で電力網を運営する電気信頼性評議会(ERCOT)は、州内にある多くの発電所が先週、電力の供給を停止したと述べた。テキサス州では数カ月前、記録的な寒波の影響で大規模停電が起き、住民が真冬の寒さの中で暖房を使えなくなった
 
ワシントン・ポストの6月18日の報道によると、アメリカ全体では4000万人以上が先々週、自身が生活している場所で気温37度以上を経験したという。最高気温の記録は、ユタ州ソルトレークシティーでも6月15日に更新された。華氏107度(摂氏約42度)は、6月の最高気温としては147年ぶりの高さだった。
 
アメリカの天候トラブルをさらに悪化させそうなのは、夏の暑さがまだピークに達していないということだ。
 National Centers for Environmental Informationの1981年から2010年までのアメリカ各地の気温データによると、地球に届く太陽光線の量は6月21日の夏至にピークに達する傾向がある。ただ、アメリカの気温は7月にかけてさらに上がることが多い。アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、2020年の夏はアメリカがこれまでに経験した最も暑い夏の1つだったとし、中でも8月は特に「乾いた、破壊的な」暑さだったと報告している。
 
▪アジアの水事情
アジア開発銀行(ADB)と、日本水フォーラムが事務局を務めるアジア・太平洋水フォーラム(APWF)は、2020年12月18日(金)に「アジア水開発展望(AWDO)2020年版」を発表しました。AWDOは、アジア太平洋地域の水の安全保障の状況の詳細を分析し、地域が直面している重要な水課題をまとめた報告書です。これまでに、第1版(2007年)第2版(2013年)第3版(2016年)が発行されています。
 
AWDO2020年版ハイライト/深刻な水問題による制約
・世界人口の6割を占めるアジア太平洋地域では、経済やその他分野での発展にも関わらず、未だ3億人もの人々が、安全に管理された、あるいは、基本的な水サービス(飲料水等)を享受できておらず、12億人が適切な衛生施設を利用できていないという状況にある。
・水と衛生施設へのアクセスの悪さは、外部からの経済的ショックや新型コロナなどの感染症の影響を特に受けやすい脆弱な人々に、より多くの影響を与えている。
・アジア太平洋地域のADB加盟国49カ国のうち、27カ国の経済発展が、深刻な水問題により制約を受けており、また、18カ国が水に関する災害から住民を未だ十分に守ることができていない。
・アジア太平洋地域は、世界で、災害の被害を最も受けてきた地域であり、災害件数の40%以上、被災者の84%以上を占めている。
・沿岸の大都市は、気候変動のリスクや災害(洪水、海面上昇、干ばつ)に対してますます脆弱化しており、生命や生計、そして健康が脅威に晒されると共に、莫大な経済的損失が発生している。
 
「過去数十年にわたり、アジア太平洋地域は、目覚ましい経済成長を遂げ、水の安全保障が具体的に向上することで社会福祉を向上させてきた」とAWDOの2020年版を作成したADBの水セクター部門チーフのトム・パネラ氏は述べている。
 特にこのコロナ禍において、アジア太平洋地域の包摂的な経済成長と全体的な社会福祉の底上げを支援していくために、統合水資源管理、優れたガバナンス、そして人材育成が不可欠であることには変わりがない。
 
▪各国の水の安全保障の測定
AWDO2020で定義される水の安全保障とは、安全で、手頃な価格、公平で、包摂的な水供給 と衛生施設(トイレ)の利用、持続可能な生計、健全な生態系、水関連リスクの管理を実現するために必要な、十分な量と質の水を確保できる状態を言う。
・AWDOは、5つの側面(KD)から、水の安全保障を測定している。
・5つのKDとは、すなわち、「農村家庭の水の安全保障」、「経済的な水の安全保障」、「都市の水の安全保障」、「環境的な水の安全保障」、「水関連災害に関する安全保障」である。
・水の安全保障は、様々な指標に関する公的に入手可能なデータに基づき、KDごとに算出されたスコアで表される。5 つの KD のスコアをすべて足し合わせて、各国の多面的な水の安全保障スコアが形成されている。
 
・このスコアをもとに、各国の水の安全保障の段階が、「初期段階」から順に、「取組段階」、「実現段階」、「効果的段階」、「モデル段階」の5段階で表されている。
 
▪国家の水安全保障
・ADB加盟国のうち、「初期段階」と「取組段階」にある国の数は、30カ国から22カ国へと次第に減少した一方、「実現段階」と「効果的段階」にある国の数は19カ国から27カ国に増加した。これは、この地域での全体的な状況の改善を反映している。
 
▪KD1:農村家庭の水の安全保障
・すべての地域で、農村家庭の水の安全保障の改善は着実に進んでいる。
・東アジア地域と東南アジア地域の状況は良好だが、太平洋地域と南アジア地域は、遅れをとっている。
・ ADB加盟国23カ国が依然として「初期段階」及び「取組段階」にある(2013年版では、その数は28カ国であった)。一方、「効果的段階」と「モデル段階」にある加盟国の数は、7カ国から13カ国に増えている。
 
▪KD2:経済的な水の安全保障
・ADB加盟国8カ国が依然として「初期段階」にある太平洋地域を除き、他のすべての地域では順調な進捗を示している。
・ADB加盟国32カ国が未だ「初期段階」及び「取組段階」であり、不十分な水管理により、21億人の経済活動が深刻な制限を受けている。
 
▪KD3:都市の水の安全保障
・2013年版と2020年版において、都市の水の安全保障はほぼ同じレベルに保たれている。・東アジア地域の都市部の水の安全保障は、先進国とほぼ同じレベルに達している一方、太平洋地域では遅れている。
・ADB加盟国のうち7カ国は依然として「初期段階」にあり、18カ国は「取組段階」にある。
 
▪KD4:環境的な水の安全保障
・KD4では様々な状況が混在している。ADB加盟国のうち、「実現段階」と「効果的段階」にある国の数は、2013年版では20カ国であったが、2020年版では31カ国に増加している。
・ADB加盟国18カ国では、依然として「初期段階」及び「取組段階」にある。
・東南アジア地域のスコアは高く、先進国とほぼ同レベルであり、太平洋地域のスコアは平均を上回っている。
・南アジア地域は他の地域に後れを取っている。
 
KD5:水関連災害に関する安全保障
・過去10年間に何度かの大規模な干ばつを経験し、それによってスコアが悪化した南アジア地域を除くと、すべての地域で順調な進捗が見られる。
・2020年版では、ADB加盟国18カ国が未だ「初期段階」及び「取組段階」にあるが、2013年版の20カ国からはわずかに減少している。
・水の安全保障を達成するための資金調達の必要性は計り知れない。
・ADBは、水と衛生への投資ニーズは2030年までに年間平均530億ドルとなり、そのうち約3分の1は、民間セクターからの拠出が必要になると推定している。
・優れたガバナンスは、地域の水の安全保障を促進し、現実に持続可能な影響を与える、すなわち、「誰一人取り残さない」を実現するために、必要不可欠である。
・AWDOでは、「すべてのアジア太平洋地域のADB加盟国が水の安全保障を達成するには、政府のあらゆるレベルにおける強力な公共政策、関係当局間の明確な責務配分、定期的なモニタリングと評価メカニズムが必要である。」と結論付けられている。
 
「同時に、必要とされる制度的及び技術的介入を実施するためには適切な財政的手段を利用できるようにするべきであり、こういった介入には、利用可能な水資源、水関連の資産及び財源を最大限に活用するための適切な環境が必要である。」とも述べられている。
(翻訳源:アジア開発銀行:https://www.adb.org/news/features/asia-s-water-security-glass-still-half-full
https://www.waterforum.jp/news/16498/
▪中国の非従来型水資源の利用と需要 2019.12
https://jcpage.jp/f19/03_longterm/03_longterm_08_beijing_hang_jp.pdf?1632960000036
・中国は1人当たりの水資源が少なく不均衡である。
 全世界平均に対する中国の1人当たりの水資源量は1人平均2044㎥で、日本の60%、アメリカの24%、カナダの3%。
・地域による格差が大きい。
 厳しい水資源管理制度を導入し、「節水優先」という方針を打ち出している。
 水の利用構成も改善し、水資源利用効率はかなり向上している。
 2018 GDP1万元あたりの用水量66.8㎥―2010年の44.5%
 2018 工業生産額1万元あたりの用水量41.3㎥―2010年の45.9%
・中国の水不足タイプー資源型水不足/事業型水不足/水質型不足
・国の施策/節水優先・清濁の分離・工業のリサイクル利用・排水の再利用・雨水の利用「スポンジ(海綿)都市」づくり(浸透、滞留、貯水、浄化、利用、排水)

・都市部の生活排水再利用
 田畑の灌漑用水、景観・環境用水、緑地灌漑用水、地下水へ還元、
 工業用水、公共用水
・再生水の生産における主な技術工程/
 バイオシステムでリン・窒素を除去―凝集沈殿―砂ろ過(深層槽)
    〃             ―凝集浮上―砂ろ過
    〃             ―凝集沈殿―浸透式UF-RO(高規格)
 処理中にオゾン酸化もしくは活性コークス(活性炭)ろ過も実施。
 
 
 
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