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STI for SDGsアワード応募ガイド【企業向け】

STI for SDGsアワード」は、日本の科学技術振興機構(JST)が主催し、科学技術イノベーション(STI)を活用して社会課題を解決し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する優れた取り組みを表彰するアワードです。
企業が社会課題の解決をめざすうえでの大きなチャンスとなるだけでなく、ブランド力強化や新たなビジネスチャンスの獲得にもつながる可能性があります。本記事ではアワードの概要やメリット、直近5年の受賞企業の事例などを紹介し、応募準備のポイントも解説します。ぜひ参考にしてみてください。

目次



(1) STI for SDGsアワードとは?

STI for SDGsアワードは、STI(Science, Technology and Innovation)=科学技術イノベーションの力でSDGs目標達成に貢献している優れた取り組みを広く募集・顕彰する制度です。2019年に創設され、毎年行われています。

  • 主催:国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)

  • 目的:科学技術を活用した社会課題解決の実例を発掘・共有し、広く普及・展開する

  • 特徴:単に研究成果や技術力を評価するだけでなく、「社会課題にどう実装したか」「どのようにSDGsに資するか」という実践面が重視される

SDGs達成に向けた取り組みに関心が高まる中、企業にとっても科学技術×社会価値を掛け合わせる好機です。この記事を読むことで以下のメリットが得られます。

  • アワードの概要を把握し、応募意欲が高まる

  • 過去の受賞事例から具体的なヒントを得られる

  • 応募準備のポイントを理解し、スムーズに取り組みを進めやすくなる


(2) STI for SDGsアワードの概要

応募対象・テーマ

  • 応募主体:企業、自治体、NPO・NGO、大学・研究機関、学校、地域コミュニティなど、国内で活動しているあらゆる団体・個人が対象

  • 取り組みテーマ:科学技術を活用し、SDGs達成に貢献するプロジェクト・製品・サービス・研究開発・実証事業など。特に以下の観点が評価されます。

    • 社会課題にどうアプローチしているか

    • STIをどのように活用しているか

    • SDGsの理念(誰一人取り残さない、多角的な課題解決など)をどの程度実現しているか

応募スケジュール

  • 募集時期:例年、春頃(4月〜7月前後)に公募が行われる

  • 審査期間:書類審査・面接審査を経て、秋頃に最終結果を発表

  • 表彰式:年末〜翌年初旬にかけて開催されることが多い(例:サイエンスアゴラ等の関連イベント内)

年度や情勢により日程は変動するため、最新情報はアワード公式サイト(下記「公式サイトURL」参照)をこまめにチェックしましょう。

審査プロセスと表彰区分

  • 書類選考 → 面接選考 → 最終選考の流れが基本

  • 文部科学大臣賞(最優秀賞)をはじめ、科学技術振興機構理事長賞、優秀賞、若い世代の取り組みを対象とした次世代賞などが用意されている

  • 表彰式では受賞団体のプレゼンテーションが行われ、メディアなどを通じて広く発信される


(3) 応募するメリット

1. 企業ブランディング(社会的信用・認知度アップ)

STI for SDGsアワードは公的機関であるJSTが主催しているため、受賞・ノミネートされるだけでも高い信用力を得られます。SDGsに本気で取り組む企業として広く認知されることで、社外へのブランド価値向上にもつながります。

2. ステークホルダーへのアピール効果

投資家・金融機関・取引先・行政など、SDGsへの積極的姿勢を重視するステークホルダーは年々増えています。受賞実績はプレスリリースや広報資料として活用しやすく、新たな協業や資金調達の機会を生むケースもあります。

3. 社員のモチベーションや採用への好影響

自社の取り組みが社会的に評価されると、社員の誇りややる気につながります。特に若い世代の求職者はSDGsに熱心な企業を好む傾向があるため、採用面でも有利に働く可能性があります。

4. 新規ビジネスチャンスの獲得

JSTが開催する各種イベントやメディア露出を通じて、自社の技術・サービスを広く周知できます。異業種や官民連携のコラボが進むなど、ビジネス拡大のチャンスを得やすくなるでしょう。

5. 社会課題解決への姿勢が明確化

応募を機に自社の取り組みを棚卸し・整理することで、SDGs達成に向けたビジョンや課題認識がさらに明確になります。結果として経営や事業戦略の再構築にも役立ち、自社の強みを生かしたサステナブルな方向性をより固められるでしょう。


(4) 過去の受賞企業・事例紹介

ここからは、直近5年(2019〜2024年)にSTI for SDGsアワードで評価された企業のうち、代表的な事例を紹介します。自社の取り組みイメージを具体化するうえでのヒントとしてご覧ください。


4-1. みんな電力株式会社(現・株式会社UPDATER)

  • 年度:2019年度 JST理事長賞

  • 取り組み:「顔の見える電力」というコンセプトで、全国の再生可能エネルギー発電所と家庭・企業をブロックチェーン技術で直接結びつける電力プラットフォームを構築。再エネ普及と地域支援を両立し、多数の利用者を獲得。

  • SDGs貢献:エネルギー関連(目標7)、気候変動(目標13)、地域活性(目標8)など。

  • 受賞後の変化:社名をUPDATERに改め、サービスを多方面に拡大。メディア露出や他社との提携が増え、ユーザー・顧客数も大きく伸びた。


4-2. Craif株式会社

  • 年度:2020年度 優秀賞

  • 取り組み:わずかな尿からがんを含む複数の疾患リスクを高精度に判定する「尿中マイクロRNA検査」技術を開発・社会実装。誰でも手軽に早期検査が行える環境を整え、医療格差や受診率向上に貢献。

  • SDGs貢献:健康と福祉(目標3)、技術革新(目標9)など。

  • 受賞後の変化:医療業界の認知度が急上昇し、提携先・導入先が拡大。追加資金調達も成功し、市場へのサービス展開が加速した。


4-3. 株式会社TOWING

  • 年度:2022年度 文部科学大臣賞

  • 取り組み:土壌改良用の「高機能ソイル技術」を開発。もみ殻燻炭や木炭を使ったバイオ炭に土壌微生物を定着させ、農業の連作障害を大幅に軽減しつつ二酸化炭素の地中固定を実現。

  • SDGs貢献:飢餓ゼロ(目標2)、気候変動対策(目標13)、陸の豊かさ(目標15)など。

  • 受賞後の変化:自治体や農業団体との連携プロジェクトが増加し、国内外で「カーボンファーミング」の実証が進む。事業規模の拡大や新規参画希望者も増え、さらなる実用化が加速。


4-4. OUI Inc.

  • 年度:2023年度 文部科学大臣賞

  • 取り組み:スマートフォンに装着できる携帯型眼科検査デバイス「Smart Eye Camera」を開発し、医療設備や医師が不足する地域でも専門的な眼科検診が可能に。遠隔診断システムと組み合わせ、失明の予防・早期発見に貢献。

  • SDGs貢献:健康・福祉(目標3)、不平等の削減(目標10)など。

  • 受賞後の変化:国内外の医療機関やNGOとの連携が加速し、導入国が60カ国以上に。追加資金調達や規制改革への提案など、事業拡大に一層拍車がかかっている。


4-5. buoy株式会社(旧:buoy合同会社)

  • 年度:2024年度 優秀賞

  • 取り組み:海洋漂着プラスチックを100%原料とするアップサイクル製品を製造・販売。回収時の情報や地域団体を紐付けたトレーサビリティ機能を製品に付与し、消費者にストーリーを伝えながらビーチクリーン活動へ還元。

  • SDGs貢献:海の豊かさ(目標14)、つくる責任つかう責任(目標12)など。

  • 受賞後の変化:知名度が向上し、自治体や企業からの共同開発オファーが急増。社内体制も拡充し、さらなる製品開発や海外展開を視野に入れている。


(5) 応募条件・審査基準の一般的なポイント

実際の要件は年度ごとに変更される可能性がありますが、「科学技術の力で社会課題を解決する」という軸が一貫した評価基準です。特に以下の項目が重視される傾向にあります。

  1. 独自性・革新性:他にない新しいアプローチや技術力があるか

  2. 社会課題への実効性・インパクト:定量的な成果や具体的な事例が示されているか

  3. 多様なステークホルダーとの連携:地域住民、自治体、他企業、NPOなどとの協働があるか

  4. 持続可能性・展開可能性:ビジネスモデルや運営体制が継続性を持ち、他地域・他分野へ応用できるか

  5. SDGs目標との関連性:主にどのSDGsゴールに貢献しているか、相乗効果はあるか


(6) 応募準備に役立つステップガイド

ステップ1. 自社のSDGs活動を棚卸し

  • 過去から現在にかけて取り組んできたプロジェクトや実証研究を洗い出し、内容・成果・データを整理

  • 定量的なインパクト(例:CO₂排出削減量、対象ユーザー数、コスト削減率など)や、社会・環境面での好事例を再確認

ステップ2. ターゲットとするSDGs目標を明確化

  • 自社プロジェクトが主にどのSDGsゴールに貢献しているかを特定

  • 同時に複数ゴールへの波及効果があれば、その関連性も整理しておくと評価が高まる可能性大

ステップ3. 活動内容・成果の整理、定量的データの収集

  • 審査員が理解しやすいよう、「背景・目的 → 実施内容 → 成果 → 今後の展開」の流れでまとめる

  • 科学技術面の独自性や優位性、ビジネスモデルとしての持続性、具体的な社会的効果を数字で示すのがポイント

ステップ4. 応募用書類・プレゼンテーションのポイント

  • 募集要項をしっかり読み込む:字数制限・必須項目などを厳守

  • 専門用語は平易に:技術的な用語を使うときは補足説明や図表でわかりやすく

  • 評価項目を意識:独自性・社会インパクト・持続性・展開性など、評価視点が一目で伝わるように書く

  • 過剰装飾は控えシンプルに:読み手の目線に立ち、アピールポイントを明確にする

ステップ5. 社内体制の構築(広報・人事・経営層の連携)

  • 応募は短期集中で行うケースも多いので、事前にチームを編成して役割分担しておく

  • 経営トップからのコメントや推薦文が必要となる場合があるため、早めに根回しを進める

  • 応募準備とあわせて社内広報を活用し、社員のモチベーション向上やSDGs意識の醸成にもつなげる

受賞企業の傾向

  • 科学技術と社会課題が結びついている:単なる研究成果発表ではなく、実装・普及を通じた課題解決を重視

  • SDGsを複数ゴールで捉えている:環境面だけでなく、医療・福祉・教育など多角的に波及する取り組みが多い

  • ストーリー性や参加型:ユーザー・地域住民・他組織が巻き込まれ、共感を生む仕組みがある

  • ビジネスモデルとしての自走力:補助金頼みではない持続的な収益化や事業性を確立している


(7) まとめ・次のアクションを促す締め

STI for SDGsアワードは、科学技術イノベーションを活用してSDGsに貢献する企業・団体を表彰する大変魅力的な機会です。

  • 社会課題の解決とビジネスを両立する企業にとっては、ブランド価値向上や新たな協働の場を得るチャンス

  • 社員のモチベーションアップや社内体制の強化にもつながり、応募を検討するだけでも大きな学びがあります

もし興味をお持ちの方は、まず公式サイトで最新の応募要項や過去の受賞事例をチェックしてみてください。応募締切までに自社の取り組みを整理し、**「科学技術で何をどう解決するのか」**という明確な視点を打ち出すことが、審査で高く評価されるポイントです。

自社ならではの強みとSDGsとの親和性を再確認し、社会に向けて大きくアピールできるまたとない機会として、ぜひ前向きにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


公式サイトURL

(応募情報・審査基準・過去の受賞プロジェクト詳細などはこちらをご確認ください)


最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの取り組みが「次の受賞例」として紹介される日を楽しみにしています!

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