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ブスは覇権をとれるのか?漫画『ブスなんて言わないで』感想

伊集院光深夜の馬鹿力で紹介された漫画
『ブスなんて言わないで』(とあるアラ子)

◆あらすじ
「ブス」だといじめられ続けていた知子は大人になって、かつて自分をいじめていた美人の同級生梨花が美容系サイトで「ルッキズム(外見至上主義)反対」と語っているのを見て、殺しに行こうとする

あらすじを聞いた時点で気づいたらkindle全巻ポチっていた。
復讐ものかと思ったら予想外の展開の連続で面白かったです。

ミスコン文化や美容系のメディア、整形など全編を通してルッキズムとは何かを問いかけてくるのですが、一番ビビったのは作中内に登場する少女漫画家が
「少女漫画の主人公は美人ばかりでルッキズムを助長している」と主張したところです。

それを他の作家もいる漫画雑誌でやるべきなのかはおいといて、美人の主人公でヒットし映画にもなった前作『美人が婚活してみたら』の作者がこれを描くのかと。
散々ブスネタでのし上がって売れた途端に容姿いじりを封印した後輩女芸人にキレるデパ子に近い気持ちになったけど、おそらく作者本人が意図して描いている。

以前バズレシピのリュウジさんが「魚レシピが少ないので増やせ」というコメントに対し
「魚は再生数が伸びないのでできればやりたくない」と応えていたのを思い出しました。

漫画がルッキズムを助長するなんてことあるのか?
自分の考え↓

×漫画が人々のルッキズムを助長させる
〇人々が漫画のルッキズムを助長させる

第一話で「自分の容姿に自信を持って」と呼び掛ける美女の梨花に対し知子が叫んだ
「差別されている側のブスがなんで変わらなくちゃいけないんだよ!」を借りるなら、

「漫画は美形だらけなのでルッキズムを助長する!ブスも増やせ!」には
「売り上げが下がるとわかっててフィクション側がなんで変わらなくちゃいけないんだよ!」である。

世間側が美醜にとらわれず金を出すようにならない限り、「ルッキズムを助長する」創作物を無くしたところで、クリエーターが廃業するだけで、現実のルッキズムがなくなることはない。

「女性読者は主人公になりきりつつ男の子の視点で主人公を見てドキドキする」
「少女漫画の主人公は男から見て可愛い女である必要がある」
と作中で少女漫画家を説得し、地味な子を主人公にする漫画の案を没にする担当編集者。

このような少女漫画界の慣習へ疑問を投げるには、美人が主人公の漫画で当たった作者が描く、ブスが主人公の漫画である必要があるのかもしれない。


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