3.【事業再生】4期連続赤字の会社を4期連続黒字化した方法
2代目社長が経営する老舗企業を事業再生した経験があるので、
同じように苦しんでいる経営者に対して情報発信できればと思います。
その社長さんとは2020年に出会い、2021年から関与をさせていただいています。1970年に設立され、長年にわたって広告業を主軸としたビジネスを展開してきました。しかし、先代の創業者から2代目社長へと経営が引き継がれた後、コロナ禍による市場環境の急激な悪化に直面しました。業界全体が低迷する中、同社も業績が大幅に悪化し、債務超過に陥る事態となりました。4期連続で赤字を計上し、経営は深刻な危機に直面していました。
ここで弊社は、徹底的な経営改革を推進しました。結果、4期連続黒字(5期目途中)に再生することができたのですが、色々試作をしてきた中で効果があったと感じるのは主に3つです。
①費用の利益貢献の見える化
②売上を生み出す最小単位の構造分析
③全従業員、特に会社を支えているキーマンとの会話
それぞれ説明していきます。
まず取り組んだのが「①費用の利益貢献の見える化」です。
私は「売上と費用は連動する」と思っています。
費用というのは売上を作るもの。
もっと言えば利益を作るものだと思っています。
利益が生み出せない費用は本質的な費用ではなく
形式的な費用でしかありません。
費用を使うと売上・利益が上がる。
これが費用の考え方です。
そのため、徹底的に費用の仕訳を行い、必要な費用なのか。
必要ではない費用なのかを洗い出しました。
まず売上に対して売上比率が高い費用項目を順に整理します。
(あくまで他の費用比や業界比で)
だいたい勘定科目で3~5個に集約されますので、
その項目を総勘定元帳で確認します。
確認する内容としては固定費と変動費で、
利益を生むのに貢献している費用かどうかと、
貢献しているのであれば何倍貢献しているかを整理します。
その後、固定費の圧縮ならびに変動費の構造を確認し、
単価を上げるのか、変動費を下げるのか、
そもそも事業採算があっているのかを分析します。
あくまで一視点でしかないですが、
だいたいこれをやると実態が見えてくるんです。
まとめると、決算書で金額の大きいものを総勘定元帳で確認し、
利益に貢献している費用か、そうでないかを仕分けし、
そうではないものは全て費用削減。
結果的に毎月50万円程度の費用削減につながりました。
次に取り組んだのが「②売上を生み出す最小単位の構造分析」です。
具体的には以下になります。
さきほどの①は、販管費における費用でしたが、
②は原価における費用の話です。
この企業では、そもそも売上を生み出すためにどんな費用を使っていて、
その採算があっているかがわかっていなかったんです。
そんなとき「分けると分かる」を意識します。
結局は一つ一つ数字を見て明らかにしていくしかないので
数字を細かく分解して、構造を一つ一つ紐解いていく。
数字を一つ一つに分けると、
実はその一つ一つは細かい数字に分かれて、
意外と連鎖的に構造が見えてくるものです。
数字が大きくて複雑に見えるから中身が見えにくいですが、
実は「分けると分かる」んですよね。
「判る」「解る」ではなく「分かる」。
実際にその企業で分かったことは
何も稼働していない外注先へ多額の支払いを続けていたんです。
それに関連するプロジェクトの売上が大きかったので
今まで気にしていなかったようですが、
利益がほとんど残らない構造になっていました。
その外注先には今後発注しない旨を伝え、
別の外注先に切り替えたところ、
プロジェクト別の利益率が3倍以上良くなりました。
「①費用の利益貢献の見える化」と
「②売上を生み出す最小単位の構造分析」に共通するところですが、
限界意識ではなくて、採算意識を持つことが大事です。
・採算が合っているか?
・この経費で3倍の売上(利益)を生み出しているか?
売上から経費を差し引いた利益が会社のお金になります。
それが唯一会社がお金を手に入れる方法だと思うんです。
借金ではなくて自分のお金で飯を食べれるようになりたいですよね。
最後にご説明するのが私が一番大事だと感じる
「③全従業員、特に会社を支えているキーマンとの会話」です。
仕事においてキーマンを探し、
その人と積極的にコミュニケーションをとることはとても重要です。
キーマンとはトップセールスマンで
会社を支えている人だけではありません。
いつも機嫌が良く、誰かが失敗したときはフォローに入り、
いつも中心にいる人。こういう人が組織のキーマンなんです。
個人の利益ではなくチームの利益を最大化する。
絶対にいなければいけない縁の下の力持ちなんです。
つまりキーマンとは周りの人を
ポジティブに巻き込んでいける人のことです。
私自身、人を見る眼があるわけではありません。
だからキーマンを見つけ出すのにとても時間がかかりました。
期間で言うと1年間です。
その1年間何をやっていたかと言うと、
その会社へ平均週3出向き、会社の雰囲気を感じること。
また月に1回、全社員と1on1を実施し会話を増やしました。
毎月2日間丸々使って1on1を全社員と話すんですが、
はじめは腹を割って話せず上辺だけの会話でした。
一緒に業務をしているわけではないので、
距離を詰めるのがとても大変でした。
しかしながら、1年間続けるとどんどん打ち解けていき、
雑談もするようになったことで
前だったら聞けなかった会社への
愚痴や上司への不満について、
話してくれるようになりました。
社員さんからの直接の言葉はとても深く重く、、
こんなことを思ってもなお働き続けてくれているのかと、
私自身が本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
その中でキーマンがどんどん見えてきたんです。
数字上では見えないキーマンが。
そのキーマンを軸に施策を打ち出していくと
みるみるうちに会社全体へ広まっていきました。
とてもやりやすくなりましたね。
頻度は隔月に減りましたが、今でも1on1は実施しています。
3つの施策について書いてきましたが、
私が一番大事だと感じるのが
「③全従業員、特に会社を支えているキーマンとの会話」です。
特に労働集約型の事業なら影響大です。
従業員のやる気やモチベーション次第で中小企業は立て直せます。
会社は人なので。
もちろん、
「①費用の利益貢献の見える化」と
「②売上を生み出す最小単位の構造分析」にあってのことですが、
中身は人(社員)次第ですからね。
関与するようになってから今年で5期目になりました。
もっともっと良くなると思っているので
今後も関与し続けたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました!