フレックスタイム制の導入について
この記事を読んでわかること
・フレックスタイム制の概要
・導入手順の流れ
・労使協定の締結内容
はじめに
ここ近年、スタートアップ企業を中心にフレックスタイム制の導入のご相談を頂くことが増えてきました。うまく活用すれば働く側も会社側もメリットはあり、生産性の向上にもつながります。
今回は導入にあたっての手順や注意点などを踏まえて書いていきます。
フレックスタイム制とは
労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。
フレキシブルタイム:いつでも出退勤ができる時間帯
コアタイム :出勤をしていないといけない時間帯
引用元:『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』
また通常の固定労働制と異なる点は大きく以下になります。
・残業が1日単位ではなく1ヶ月単位など精算期間ごとでカウント
・欠勤や遅刻早退も基本的には1日単位では賃金からはカットはしない
導入の流れ
・就業規則等への規定
・労使協定を締結
・社内への周知
・勤怠システムや給与システムの変更
・就業規則等への規定
フレックスタイム制の導入には、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。
就業規則例
(フレックスタイム制)
第○条(始業・終業時刻)の定めにかかわらず,労使協定によりフレックスタイム制の対象となる従業員については,始業及び終業時刻は労使協定で定める範囲内において従業員の決定に委ねるものとする。
・労使協定を締結
労使協定にて締結する内容は以下となります。
①〜④は必須、⑧は清算期間が1ヶ月を超える場合は必須の内容となります。
また清算期間が1ヶ月を超える場合は管轄の労基署へ提出が必要となります。※1ヶ月の場合は届出不用
①対象となる労働者の範囲
②清算期間
③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
④標準となる1日の労働時間
⑤コアタイム、フレキシブルタイムの時間帯
⑥過不足時間の取り扱い
⑦解除条件
⑧有効期間
①対象となる労働者の範囲
従業員全員を対象にすることもできますし、ある職種やある部門だけを対象者の範囲にすることも可能です。
②清算期間
改正法により、清算期間の上限が3ヶ月に延長されましたが、基本的には1ヶ月ごとで運用する会社が多いかと思います。
また起算日も定めますが、一般的には給与の支払い期間と合わせて、例えば月末締めの会社であれば1日を起算日とすることが多いかと思います。
③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
一般的には「標準となる1日の労働時間×その月の所定労働日数」として定めることが多いかと思います。
④標準となる1日の労働時間
各個人の1日の所定労働時間を設定する形になるかと思います。
有給を利用した場合などはこの「標準となる1日の労働時間」を用いて計上します。
1日6時間などの時短社員の場合は例えば標準時間は8時間とだけ設定してしまうと上記の有給を利用した場合に計上する時間が異なるため、その旨も労使協定に記載が必要です。
⑤コアタイム、フレキシブルタイムの時間帯
設定は任意ですが、社内で運用していくためには設定は必要かと思います。
まずコアタイムの時間帯の設定には注意が必要です。フレックスタイム制の趣旨はあくまでも労働時間を自ら決めることのできる制度です。
コアタイムが長すぎて労働者にほとんど自由がない場合はフレックスタイム制の趣旨になじまないと判断される可能性があります。そのためコアタイムは大体1日4時間程度で定めることをお勧めします。
またフレキシブルタイムの時間帯ですが、あまりにも自由な働き方にしてしまうと長時間労働や深夜時間帯での勤務などを招く可能性があるため、例えば8:00〜22:00などにすることによって深夜時間帯での労働をある程度規制する事ができます。
上記のコアタイム、フレキシブルタイムの時間帯は部門ごとや職種ごとで設定することも可能です。
⑥過不足時間の取り扱い
残業時間や不足時間の取り扱いについて定めます。
労基法上ではフレックスの残業時間については所定労働時間を超えた分は法定内残業、また法定外についてはその精算期間の暦日数によって異なる法定労働時間の総枠を超えた時間を法定外の割増率で計算した額を支払えば足ります。
ただ運用の面を考慮して、所定労働時間を超えた時間を法定外として支給する会社もあります。
⑦解除条件
会社としての解除と個別の解除の2つについて定めます。
前者は例えば突発的な業務の必要性や緊急事態の発生、業務の都合上などでフレックスタイム制が継続できない状態を指します。
後者の個別の解除条件ですが、フレックスを適用してみたが本人があまりにも無責任な勤務状況が続き、業務に支障が出たり周りの従業員へ迷惑がかかるなどの場合にリスクヘッジで定めておくことをお勧めします。
⑧有効期間
基本的に協定日から1年として、そこからは会社側と労働者側から申出がなければ自動更新といった形が多いかと思います。
社内への周知
労使協定を締結をしたら改めてフレックスタイム制の概要から労使協定の内容、具体的にいつからスタートするかなどを社内へ説明された方がスムーズに導入ができるかと思います。
勤怠システムや給与システムの変更
まず現在お使いの勤怠システムから変更が必要となります。例えば今までは残業時間は日ごとで計上されていたものを精算期間ごとで計上させる。有給や特別休暇を取得した場合に労働時間として計上するなども必要になってくるかと思います。
また給与システムですがフレックスタイム制では1日単位で欠勤や遅刻、早退を賃金から控除せず、月単位で総労働時間が所定労働時間に足りてない場合は不足控除として設定が必要となる場合があります。
その他注意点
フレキシブルタイムの時間帯で会議などを強制参加にはできない
あくまでも始業と終業時間を労働者へ委ねる制度のため、フレキシブルタイム中については強制ではなく、あくまでも任意での参加案内となります。
ただ定期的にコアタイム時間外の毎週月曜の10時に朝礼がある場合などの対策としては、その曜日だけコアタイムを長くする事や、コアタイムの時間帯をずらすなどをして労使協定を締結するなどが考えられます。
さいごに
近年、テレワークなども増えてきてフレックスタイム制と相まって、より労働者側も自由で柔軟な働き方が実現できる会社も増えてきています。
ただその反面、ある程度労働者側でも時間を調整しないと逆に長時間労働になってしまったり、会社側も管理体制がないと業務効率が落ちる可能性もありますので、しっかりとルールは決めて運用しましょう。