HOLON|Ash Wednesday
1990年よりライフワークとして取り組んできた、装飾を重視したアルファベット書体(デジタルフォント)の制作。そのきっかけは、「リンディスファーンの福音書」に代表される装飾写本との出会い——
修道士たちが聖書の言葉を美麗な書体で写したように、装飾的なデジタルフォントで言葉を綴ってみたい——
同時に、デザインの世界にマッキントッシュが登場した黎明期、英国のグラフィック・デザイナー達がオリジナルのデジタルフォントを作り始めたことにも触発されての行動でした。
デジタル書体デザインを現代の写字法ととらえ、いにしえの修道士と英国のデザイナーのクールさに憧れてスタートした書体制作。
ここHOLONの写字室では、オリジナルのアルファベット書体を使用して、聖書の言葉や楽曲の歌詞を綴った作品を展示致します。
*
リトグラフ作品|Ash Wednesday
本作は、灰の水曜日|Ash Wednesdayに捧げた作品。『舊新訳聖書(文語訳)』創世記 第3章19節より「汝は塵なれば塵に皈(かへ)るべきなり」をオリジナル・アルファベット書体「セメタリー・ゲイツ」で組んだ、リトグラフのタイポグラフィ作品です。
「汝」=「Nanji」という風に、日本語をアルファベット書体で「ローマ字組み」しています。手袋の上に、斜めに走る細い線の図案が、書体「セメタリー・ゲイツ」で組んだ創世記の言葉です。
*
灰の水曜日は大斎節の始まりの日、生と死に想いを寄せる日。
灰の水曜日の礼拝では、一年間大切にしてきた棕櫚の十字架を燃やし、その灰で額に十字架の印を受けます。その際、司祭が唱えるのが先の一節にちなんだ文言「あなたは塵から生まれたのだから、塵に帰らねばならぬことを覚えなさい」です。
本作は、HOLON タイポグラフィ作品展《スクリプトリウム〜聖書の言葉を写し、纏う試み(2013年・森岡書店)》で発表。
「纏う試み」として、手袋やケープ、ドレスやマント、小袖雛形に聖書の言葉を構成した作品群のうち、手袋モチーフの一作です。薄墨色のキャンソン・エディション紙に菫色と濃灰色で二色刷したリトグラフ作品になります。
書体「セメタリー・ゲイツ(制作年:2012年)」は、欧羅巴の墓地の鉄細工の門をイメージして制作。墓地の門はまさに生と死の狭間に位置する存在、創世記の一節を綴るにふさわしい書体として選びました。
本作には、「セメタリー・ゲイツ」の書体見本(辞書)も付属します(下記画像)。上から、「A B C ...」と順番に配置されています。模様みたいに見えていた図案が、文字だと判別できるようになってきたのではないでしょうか。
この辞書を見ながら、暗号を解くように、創世記の言葉をみつけて下さいね。
*
作品名|Ash Wednesday
リトグラフ(菫色と濃灰色の二色刷)・キャンソン・エディション紙(薄墨色)
作品サイズ|27.5cm×19cm
シートのみ・限定25部・限定番号入り
2013年
オリジナル・アルファベット書体「セメタリー・ゲイツ」の辞書シート付き(ファブリアーノ・ロサスピーナ紙にデジタルプリント)
作品の右下には、サイン・限定番号と共に、「H」の刻印が押されています。
*
↓モーヴ街MAPへ飛べます↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?