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佐分利史子《2》|Good-night, Mister Sherlock Holmes.
Text|Fumiko Saburi
「ボヘミアの醜聞」が冒頭だけでは不完全燃焼感が大きかったので、2点目も同じ「ボヘミアの醜聞」より、クライマックスシーンの置き手紙・最後の部分を選びました。
一国の王と名探偵を相手にこの言葉を言えるのはかっこいいですね。
「私は彼より素晴らしい男性と愛し愛されることとなりました。」
置き土産も素敵です。
この聡明なアイリーン・アドラーさんの言葉を書く書体は、迷わずイタリック体のキリッとしたアレンジです。
個人的にイギリスで書かれているイタリック体は一文字一文字の幅が狭い印象があり、その、私の中で“イギリスらしい”イタリック体を意識しました。
そしてアイリーン・アドラーさんにお花を捧げたい。
挿絵的なものプラス、試みとして文字の背景にもお花を描けないかなあ。
うーん・・・うーん・・・絵の具と格闘・・・。ガッシュの上にガッシュで文字はきれいに書けないので、透明水彩の上にガッシュなら・・・?
新しい紙を用意し、背景のお花を描き、カリグラフィ文字用のガイドライン(鉛筆の横線)を引く段階になって気づいた、これって文字の清書途中でミスをすると、新しい紙に背景から描き直しですね私。
それは気が遠くなるのでカリグラフィの清書は一発で成功させたい。
青菫色の絵の具を作り、さあ集中して、ううう文字清書の緊張が普段より大きいかも。そして絵の具 on 絵の具は難しい。
でもこれ楽しいな。
「透明水彩の上にガッシュ」でも、紙の地肌そのままの上にガッシュで文字を書くよりは少しペン先がすべったり絵の具が滲む感じがあったので、そこは実験継続の余地ありということも、新しい紙に背景の絵から描き直すことは、この先きっとあるだろうなあという覚悟?あきらめ?も含め・・・。
ボヘミア王の未練も、ホームズ氏の密かな想いも知らず愛し愛され幸せに暮らしてゆかれるアイリーン・アドラーさんにお花を捧げる一枚、楽しかったです。
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作家名|佐分利史子
作品名|Good-night, Mister Sherlock Holmes.
ガッシュ・透明水彩・アルシュ紙
作品サイズ|29.0cm×25.5cm
額込みサイズ|32.1cm×28.1cm×2.2cm
制作年|2021年(新作)
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