【声劇台本】043「シークレット・クロッキー」
今日は少し実験的なドラマをお届けいたします。
2人の視点が徐々に交錯していく……モノローグ芝居です。
■人物
園子ちゃん(17)高校2年生。
佐藤くん(24)ライター。
■本編
園子のMO「高校帰り。おしゃれなカフェのいつもの席で今日も人物クロッキー。英語の本を読むジェントルマンさん。子連れのママさんたち。そして、最後は、カフェの一番奥の席でいつもパソコンに向かっている、私の大好きなお兄さんをそーっと描いた。うん。今日もいい感じ」
佐藤のMO「今日もいつものカフェで仕事中。フリーになって2年。ライティングの仕事は順調だ。ネット案件2つ、ブログ記事1つ。とりあえず、今日の最低ノルマは達成と言うところか」
園子のMO「それにしても、お兄さんはいったい何を真剣にパソコンに向かってタイピングをしているんだろう。気になる。気になるけど、私はクロッキー専門! 人物観察が専門なのだ! だから、対象とは適切な距離をとることが大事。だからこそ決して近づかないのがマイルール。だけれどやっぱり気になるよな」
佐藤のMO「そういえば、今日もあの子が店先の席に座っている。ノートに何か書いているのはなんとなく遠目でわかるのだけれど。あれは勉強だろうか。仮に勉強だとしても、カフェでやることじゃない。最近の女子高生は全くわからないな!」
園子のMO「あの人のパソコンを思い切ってのぞき込んでみようか。でもどうやって?」
佐藤のMO「なんだかさっきから視線を感じる。俺は辺りを見回す。すると女子高生と目があった。えっ? 何だこれ? すると女子高生は会釈して、顔を伏せた」
園子のMO「しまった! 見ていたのを隠したくて思わず会釈なんてしてしまった! 私の適切な距離感が台無しだ!」
佐藤のMO「女子高生はやっぱりわからない」
園子のMO「私は思わずトイレに逃げ込んだ!」
佐藤のMO「俺、何か悪いことしたかな。俺は気まずくなって思わず荷物をまとめてレジへ向かった。そのとき、脇の女子高生の席の、彼女のノートが目に入った」
園子のMO「トイレから出ようとそっとドアを開ける。すると、お兄さんがなぜか私のクロッキーを見て固まっていた」
佐藤のMO「これ、俺!? 俺っ!?」
園子のMO「もう戻れない! そう悟った私は、お兄さんに挨拶することにした!」
園子「お、お兄さん! 私の絵、どうですか?」
園子のMO「これはデザイナーを目指す私と」
佐藤のMO「しがないライターの俺の」
二人のMO「偶然から始まる物語」
(おしまい)