映画『ボーダー 二つの世界』
2018年/スウェーデン・デンマーク合作
原題:Grans/BORDER
監督:アリ・アッバシ
原作:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト(『ぼくのエリ 200歳』)
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森は静かで美しい。
けど、
むっちゃ寒そう。
妖精のように森を駆け抜けたり、湖で戯れたり、
取り戻された人生は美しく、ものすごく解放的。
でも雨まで降って、
むっちゃ寒そう。
赤ちゃんも鍛えられそう。
国は全然違うけど、
「寒そう」だけでなぜか『トライブ』(ウクライナ)とか思い出した。
どっちも、傑作。
でも、この映画は見ている間中、
「なんかエライもん見てもうた感」
が、ずっとつきまとう。
『シェイプ・オブ・ウォーター』で、
”エライもんを”見せてくれた僕らのデル・トロ監督が、
絶賛してるっていうくらいだから、
そりゃ、「エライもん感」の金字塔です。
しかし、僕のなかでは、トラウマ映画である
『ポゼッション』の強烈さを超えなかったし、
狂った感はありませんでした。
この映画は、知的で、
ファンタジックだけど理性的で、
過酷だけど優しいのです。
そして希望も探している。
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物語は、ザワザワザワとスリラー感がずっと漂っている。
存在の謎や事件の謎の話が進みつつ、
やがてその両方がTinaの生活に近づいてくる。
リアルに人魚や狼人間になっていくファンタジックで
クリーチャーで、ホラー風味の映画もいくつも見た。
美少女が、手づかみで水槽の小魚食べる映画も見たから、
虫のひとつやふたつやみっつやよっつ…うぐぐ。
でもでも、この映画はクリーチャーな側面を出来る限り抑る。
ときどきモンスター度があがってきたりすると、
ちょっとどきどきしはじめてくる。
けど、リアルな人間より人間的にもどったりする。
モンスター度って書いてしまったけど、
最初から超能力的とだけ見てる人は、いないでしょう。
そう見えるようにつくってあるし。
で、映画では、むしろ、人間の方が
映像化しないけどよほど恐ろしいふるまいが行われているようで
B級にならずに、われわれ存在を考えるような話になる……
あ、ここまで書いてて、思い出した。
クロちゃんのMONSTERなんとかを、見てる感じに似ている。
越えて行きそうで、越えて行かないけど、
もう越えちゃっているんじゃないの?
と思わせながら、
結局、人間ってこうなんじゃないの?と
自嘲したくなってしまうような…のがあの番組。
ボーダーの感覚だけだけど、ちょっと似てる。
まあ、楽しみ方や、描いている社会、全然違うけど。
映画のラストは、全然、自嘲では終わらせないし。