腐海からの脱出を目指して(散文)
鬱屈とした、焦燥に満ちた朝だった。
散らかった部屋には、巻きたばこの破片がこぼれ、ノートが畳に2冊。
求職活動は難航し、仕事しながら今年の頭に決めた目標からは軌道が大きくズレてしまっている。
布団を壁際に投げてどける。
頭の神経はカプサイシンでも流れているのかというくらいにピリピリしていた。
SNSを開くと、知り合いからメッセージが来ていた。
開きながら、煙草を吸う。
禁煙なんて出来ない。
やってられっかーそんな気持ちで、コーヒーを飲む。
居間に行くと、母は今日の感染者数に謎に盛り上がっている。
朝食を食べ、部屋に戻り、SNSに返信。
部屋には薄黒いモヤがかかったようにーまるで乳成分が沈殿したミルクコーヒーのような異物感ーがあり、
僕は即座に立ち上がり、窓を開けた。
近所の家の人達もみな外出を控えているのか、リモートワークに移行しているのか、朝なのに人通りひとつない。
gmailを見る。あ、また書類選考落ちたわ。はは、いや、笑えねえー。
近所の高架下にスケボーの練習に行く。
運送業者のトラックが止まっており、中年のドライバーが乗り込む。
ああ…仕事してえ…無職でごめん…世界…だけどめちゃくちゃ頑張ってんだよ…これでも…ああ、またクソ単価のライティングバイトでもやるか…現場は…脚に麻痺があるから…やったら、労災だな…あー、今日こそ面接の連絡こないかな…
などを3秒くらいの間に考えると、プッシュの練習。
短い路面なので、小さな距離を何往復もする。
その内に、なんだか身体の中心が暖まってくる。
少し気が和んだ。帰宅する。
gmailを見る。何回目だ。今日。しかしながら連絡はなし。煙草の本数が増える。
音楽を流しながら、仕事の応募をする。
今日はfuture garage(未来的でdarkなアンビエント系ダンストラック)のmixを流しながらだ。
求人情報に片っ端から眼を通す。
そして応募。
ああ。つーかおかしくね?20件応募して無視されたパターンいくつあるよ?俺の履歴書の作成能力によほど問題があるのか?
いや、違うね。履歴書の(ナカミ)が問題なんだよ。職歴。まあねー…。あんまちゃんとしてないからね。俺。さらに病気で3年くらい寝たきりだったし…。
こないだの仕事はトントン拍子だったのに…まあ、超絶ブラックだったけど。
畜生。
とかをやはり3秒ほどで考えると、友人と電話。
電話を終えると、また求人に応募。
そしてまたスケボーに行く。
高架下に着くと、ムッキムキの黒Tシャツの人が家に入っていく。
スゲエな。めちゃくちゃ強そうじゃん。スケボー怒られたらどうしよう。うん。即座に謝るぞ、即座だ、先を取れ、と宮本武蔵も言っていた…
とか考えながら、プッシュの練習。
脚に麻痺があるなかでスケボーをするのは、結構、リスキーなのだが、今の所、いいリハビリになっている。
プッシュ、もっとうまくなりてえな。
軽く汗をかくぐらいの練習をして、また帰宅。
お、ライターの会社から連絡来てる…。履歴書を送付する。期待せずに。嘘。面接呼んで。マジで。
あ〜…noteでも更新するか。よし。そんでパソコンソフトの勉強。それ。それでいこう。
僕は画面を開く。
指先が、画面をタッチする。
白紙に文字が埋まる。
今日も絶対に使い切ってやる。
そう思いながら、僕はまた『今』と出会った。
了
梶本