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初めて書く小説は、日の丸弁当でいい、という提言



ある日天啓に打たれるように小説が書きたくなる。
そんなこと、ありませんか?
ありますね。
じゃあ書きましょう。

世の小説の書き方本、レベル高すぎ問題

ゼロから小説を書きたいと思った時、小説の書き方本を開く方も多いのでは?
私は小説を書き始めしばらく経ってから、何冊か読みまして、とても楽しんだのですが……

これ、パエリア作らそうとしてるな?

初めて包丁持った人に、パエリア作らそうとしてる。そんな気がする。「まずプロットを立てましょう」は、「まず米を炒めましょう」レベルなのでは、と。

大学入学したての春。期待に胸膨らます初めてのひとり暮らし。地元の電器屋で母と購入した炊飯器のコードを差し込み、レシピを見る。

「まず米を炒めましょう(しかも洗わず)」

炊飯器の蓋そっ閉じして、駅前の牛丼屋行くかも。


処女作は日の丸弁当でいい

全ての先入観を取っ払って、日の丸弁当を見てほしい。
一面の米の白に、ハッとするような赤。よく見ると白米の一粒一粒が影を作る、その質感はℬℯ𝒶𝓊𝓉𝒾𝒻𝓊𝓁……
初めて書く小説って、こんなシンプルな美しさでいいんじゃないの?冷凍庫のご飯とか、なんならサトウのごはんに、ポンと梅干し置いたらいいんじゃないの?と、私は提言したい。このぼんやりした比喩を、これから具体的に説明していきます 。


白ご飯=日常

小説という名の日の丸弁当を作ります。
まず、自分自身の日常を用意します。朝起きるのダルい。昼ごはんが美味しい。実は彼女から超痛いあだ名で呼ばれている。なんでもOKです。
日常が、白ご飯です。ℬℯ𝒶𝓊𝓉𝒾𝒻𝓊𝓁です。



梅干し=ズラシあるいは反転

ℬℯ𝒶𝓊𝓉𝒾𝒻𝓊𝓁とはいえ、King & Prince永瀬廉じゃあるまいし、白米だけでは箸が進みません。あと、日常onlyではそれはほぼエッセイです。いや私小説と呼んでもいいけど、多分フィクションの小説を生み出せた方が達成感があると思います。

日常という事実を、虚構(物語)にします。
私が1番手っ取り早いと思うのは、性別と年齢を変えることです。例えば30代既婚子どもありの方がドラッグストアで赤ちゃん用オムツを選ぶ話があるとして、これを20代独身男性に変えると、ちょっと違う背景が見えませんか。
まぁこれはちょっとジェンダーバイアスがかかってる感ありますが、言いたいことは、性別を反転させると手っ取り早く自分とは別の人の物語になる、ということです。
そして、オムツ選びシーンは自分の日常から生まれた要素なので、めちゃくちゃ詳しく書けますね。
1枚あたりの単価がどうのとか、えっデザイン変わってる超可愛いでもこれ背中漏れするんだよなぁ……とか。迷っていたら通路塞いじゃってて、すれ違いざま舌打ちされたとか。

で、最後にオチを付ける訳ですが……まぁこれも、ふわっとでいいと思うんですよね。
疲れて帰って、リビングで大の字になったら、夕日が眩しくてつけっぱなしのテレビから聞こえる子供番組の音がうるさい、とか。
20代独身男性だったら、姉ちゃんの為に買って帰ってたとか。
普通でいいんですわ、星新一じゃないんだから。


いろいろバリエーションはあるぞ

朝起きるのダルい。これを、詳しく描写したあと、平凡な毎日の出来事ではなく、「死神に今日死ぬと予告された日の朝」だとしたら。私今日死ぬのに、それでも起きるのダルいんだぁ、という味わいが、あるよね。ねっ。

彼女から超痛いあだ名で呼ばれている。そしてこれを同僚の前で言わなきゃいけない。場面設定を職場の飲み会としてもいいです。同僚とか上司をめちゃめちゃイヤ~な感じで描写すれば、サラリーマンの悲哀を描いた小説になりますし、ラスト、テーブルの上のガスボンベが爆発して部長が「ダメだこりゃ」と言えばそれはもうドリフです。
あるいは、彼女から呼ばれている超痛いあだ名が実は「バルス」的な破壊の呪文だとしたら、粉々になった地球の真ん中で「だから嫌だって言ったじゃないですか」と呟くラストとかいいんじゃないでしょうか?


オチ? こじつけでいいんだよ

バ~ッと五百字くらい書いてきて、そろそろストーリー終盤だなと思ったら、ストーリー全体に出てくるアイテムで上手いこと言えば、それはもうオチです。
オムツだったら、最後何らかの理由で号泣し、「涙は大量の吸水ポリマーに吸い取られることなく、頑丈な外袋に描かれたアンパンマンの顔を濡らした」とか書けばもうこれはオチですね。


結論  エッセイをベースに虚構を書けばもうそれは小説

日常をそのまま書く、ほぼエッセイという白米をベースにして、登場人物や舞台を虚構にしてハッとする赤の梅干しとして添える。
これだけでもう日の丸弁当です。小説です。
起承転結?  いいんだそんなもん慣れてからで。

実際私が初めて書いた小説も、私が大好きなカルボナーラを作る工程を詳細に書き、登場人物を20代独身男性、彼女に先立たれたというしょっぱい設定にしたものです。
下手くそすぎて載せるのしんどいんですが、ここで私が載せないというのは絶対にフェアじゃないので、載せます。


おまけ)長編を書きたくなったら

個人的に、連作短編スタイルがおすすめです。処女作で書いた設定を、そのまま引き継いで、もう一本短編を書きます。ほらっ、連作短編! 二本以上書けぼそれはもう連作短編。上記の「あいこさん~」も、そのようにして生まれた連作短編です。最終的に12話も書きました。

以前も書きましたが、連作短編は「新たに設定を生み出さなくて良いので、描写や展開づくりに注力できる」というメリットがあると思います。
何回もオチを付ける練習が出来てオススメです。

「日常」をベースにすると、このように初心者でもかなり書きやすいのです。だって、昨日あったことを、自分が作ったキャラにやらせて、何となくふわっとオチを付ければいいんですから!
じゃ、小説書いて印刷所に入稿して実物見て感動の涙流そ。


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どちらも装丁が可愛いです🫶🏽

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早時期 仮名子*文学フリマ京都9う-21
もっといい小説を書きます!