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【M-1にわかの感想】令和ロマンの自己演出力について



注)全編敬称略とさせていただきたい。申し訳ありません。

M-1感想記事は、今日以降いくつもいくつもアップされるだろう。一視聴者目線から、予選からチェックし続けた猛者まで。私は当然、一視聴者側に入るので、浅くかつ思い込みによる展開になるが、ご容赦いただきたい。

このような立場で、M-1の決勝を満遍なく語る、しかも総花的に。と言うのは、私が書く意味はそれこそ薄いかなと思うので、表題の通り、令和ロマン、特に高比良くるまの自己演出力に焦点を絞って考えたい。


M-1=スポーツ、の打破

 M-1がスポーツ大会化していると言われて久しい。スポーツ=フェア、得点 という印象がある。それは、テンポの速さやボケの手数だけでなく、複線の回収という全体的な構成までも、きっちり審査対象になるという空気感がもたらしたものだと思う。
(まぁそれが行き切った結果の、トム・ブラウン期待を一身に背負って決勝進出! であるとは思うけれど)
真空ジェシカでさえ、テーマや画自体は奇異であるものの、手数や構成はM-1らしいものだと思う。

 こう言った、M-1のスポーツ化やフェア感はピークを迎えた後、数年かけて再び変化しているが、 2023年の令和ロマンの優勝はそれにとどめを刺したように思う。涙を流さない王者、M-1を楽しみ切った王者。

ヒールに徹し、他の芸人VSくるまと言う構図に持ち込もうとしていた

2024年決勝での高比良くるまの出で立ちは、黒髪オールバックに、異常に尖った肩パッドの黒いスーツ、艶のある黒いタイ。体の一部を尖らせたらヒール。これはもう日本の伝統芸能だ知らんけど。
高比良くるまは、宣材写真は眼鏡なしパーマであり、しかも場によって眼鏡をかけ替えるので、この特異な出で立ちは間違いなく自分をヒール化しているだろう。
 相方の松井ケムリが昨年と同じく、おなじみの茶色のスーツであることからも、実情はどうあれ「くるま主導」感が演出されている。
 これによって、「ヒール令和ロマン(あるいは高比良くるま)VS 他の漫才師」という構図に持って行っている。
これが成功しているか否か。私は、成功していたと思うが、そうでもないと思う人もいるだろう。

2023年優勝後の消費されなさ

高比良くるまと言えば、M-1マニア、分析系オタクというイメージが強い。2024年年明けのお笑い生番組で、くるまが「分析ネタ」で消費されかけているのを目撃した。よくある「これはどうなの、分析してよ」というやつ。そこはテレビ的に面白可笑しく乗っかっていたのだが、問題はそのあと。いや問題ではないけれど。
同番組の企画で、「あのちゃんと会場にいる芸人の顔写真を合成し、二人の子供の顔画像を作成し、どの芸人かあてるゲーム」というものがあった。気持ち悪い。端的に、気持ち悪い発想だと思う。
これに対し高比良くるまは、「気持ち悪い、なんか炎上しそう」と拒否反応を示していた。この言葉は、きちんとSNSで拡散され、企画自体の大きな炎上を防ぐ結果になった。ここで早速持ち前のクレバーさを発揮した訳だ。

その後も、深夜帯の尖った番組や、ダウ90000の蓮見やラランドのサーヤと言った、既存の活動基盤とは独立した、自ら意思決定する芸人・タレントとの番組に出演していく。くるまによる自己演出が妨げられない環境であったと思う。それは、M-1 2023における「泣かない王者」の姿に相応しい活動のスタンスだと思ったし、シンプルに、テレビに消費されるのは嫌だという信念の現れでもあるだろう。


自己演出の片鱗

冒頭のヒールな出で立ちや言動に加え、以下のような点が、長いスパンでのくるまによる自己演出だと感じる。というか、元々そういう、精神的な歌舞きたさみたいな物があるのではないかと。

・某女優の「ポエム的ツイート」に限りなく近い、中二病時代のくるまのツイートたち
・苦節〇年感のない、清潔でスタイリッシュな部屋(YOUTUBEで観た)
・当然令和以降に改名した「令和ロマン」という名前自体の次世代感

ポエムツイートについては、ガチではなく、面白として発信したものだろうと思うが(いや、どっちの可能性もあるなぁ……)、やたら装飾的な発信と言うものは、セルフブランディングの表出である、と思う。


M-1という大会自体を、新たな文脈で盛り上げた


他の芸人の、人生を賭けたガチ感を逆手に取りヒールになる。M-1全体としては、まるでバトル漫画のような「誰が勝つのか」と別の「誰が令和ロマンを倒すのか」という文脈が生まれる。
これぞ、M-1という大会自体を愛するくるまの本懐と言えるだろう。 

2024年の1年間のセルフブランディングの集大成が、M-1という大会の新たな文脈による盛り上がりだと思うと、「令和ロマンすげえぜ」という語彙力全捨ての感想と結論しか出ない。それでいて、ネタのクオリティはもちろん二大会チャンピオンのそれであるし。

と言うことで、私の2024年M-1ハイライトは、令和ロマンの自己演出力と、トムブラウン布川の「もう死んでるのに威嚇射撃必要ないから!」というズレツッコミだった。あれ好きなんだよなぁ。みちおの単独異常ぶりが目立つけど!布川も大概じゃん! ってやつ。

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早時期 仮名子*文学フリマ京都9う-21
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