任侠サイボーグ組
技術が進んだ結果、人類はヤクザになった。
「仁義外れの肉野郎が!」
俺は怒りに任せて銃口を敵の胸に押しつけ、二度撃った。鮮血。何度見ても汚らわしい。
道路の真ん中に作った即席陣地を見回す。今ので一通り片付いたようだ。義足を軋ませながら、塚原が俺の方に歩み寄ってきた。
「盾居ぃ、相変わらず喧嘩の時のキレっぷりがすげえな」
「当たり前だ。何の生産性もないヤクザが堅気に手を出すなんて許せるか」
自分が吐き捨てた唾すら忌まわしい。堅気衆には、あの美しい機械達には決してあり得ぬ物。
絵を描くAIの登場が騒がれた時期もあったらしいが、今や機械達はあらゆる分野で人間どもを凌駕し、この世で最も知的で美しく高等な存在になった。
全てを彼等に委ねた挙句、暴力しか能のなくなった俺達人類に、堅気衆は食糧やインフラ、義肢までくれる。
なのにクソ人間共は機械が人間に暴力を振るえないのをいいことに……! 非暴力プログラムを機械への呪いとして残した旧人類への怒りも湧いてきた。
「おい、次が来たぞ! 気合い入れろテメエら!」
「だとよ。思う存分キレ倒せ」
「言われるまでもねえ」
俺は前を向き直り、現れた敵を見た途端、脳が沸騰した。巨大な鉄の手足。重厚な足音。洗練されたボディ。それら全てを台無しにする、頭部に収まった人間の姿。
「奴等、堅気に『搭乗』してやがる!」
非暴力プログラムは人間に操作された機械には適用されない。あまりに冒涜的な光景。自由を奪われ、屈辱と恐怖に嘆く堅気の悲鳴が伝わってくるかのようだ。
「クソ野郎ども!」
堅気をなるべく傷つけず、中のクズ肉だけを殺す。俺は銃弾を搔い潜り、堅気の手足を這い登って搭乗席のガラスに鉄の拳を叩きつけた。割れ砕けるガラスの向こうの搭乗者を見て俺は目を見開いた。人間じゃない。アンドロイドだ。
「『搭乗』どころじゃねえ、堅気をハッキングして身代わりに……!」
俺の怒りは天井を破った。堅気の怯えた目が俺を見た。
【続く】
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