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Xからの脱出 - ドイツのサッカークラブはどこへ行く
ザンクト・パウリ・ショック
X(旧Twitter)から撤退し、他のSNS(ソーシャルネットワークサービス)へ移行する公式や著名人のアカウントは徐々に増えている。トランプが大統領選挙に勝利し、イーロン・マスクがトランプ陣営に加わることが正式に発表された11月12日以降、ドイツのサッカークラブにも動きがあった。まず14日にザンクト・パウリがXのプラットフォームを去り、Blueskyに移行した。このことは日本のメディアでも取り上げられ話題となった。
ザンクト・パウリ、『X』からの撤退を発表 「マスク氏はXをヘイトマシーンに変えた」
それに続いて、19日にはブレーメン、27日にはフライブルクがXとの決別を発表した。彼らの移行先もザンクト・パウリと同じくBlueskyだ。12月24日にはカイザースラウテルン。年が明けて2025年1月10日には3部のビーレフェルト、17日にはヘルタとダルムシュタットがそれぞれXを去った。(BlueskyについてはBBC News Japanの記事参照)
沈黙するその他のクラブ
1月20日の大統領就任式でイーロン・マスクが見せたナチス式敬礼により、離脱にさらに拍車がかかると思っていたが、今のところその他のクラブは、素知らぬ振りをしてXでの活動を続けている。これまで極右やネオ・ナチには厳しい態度でのぞみ、人権や多様性を声高に唱えてきたクラブの多くが、パウリやブレーメンに追従しなかったことに、個人的には多少の失望を感じている。各クラブに事情があることは理解するが、現状維持を決めた理由については説明の欲しいところだ。
Xを新たに離脱したアカウントの行き先は、今のところBluesky一択のようだ。また、Xでアクティブに更新しているものの、Blueskyでもアカウント運用を始めたクラブもある。ドイツ1部ではフランクフルト、ボーフム、マインツ、ホッフェンハイム、ヴォルフスブルク。ドイツ2部ではシャルケ、カールスルーエ。これらのクラブが将来の移行を視野にBlueskyのアカウントを開設したのか、単にインスタグラムやThreads同様、SNSの種類を増やしてみただけなのか、今後の展開からそのうち答えが得られるかもしれない。
ドイツのサッカークラブのSNS使用状況
ドイツ1部と2部のSNS使用状況を表にまとめてみた。▲はアカウントはあっても使用されていないか、更新が止まっているものだ。Meta社のインスタグラムは全クラブ使用中だが、Threadsは半数にとどまっている。(2025年1月24日現在)
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Xから離脱したクラブがどうしているか、インスタグラムをメインにしたクラブと、Blueskyをメインにしたクラブで見てみよう。
インスタグラムをメインにしたクラブ
ザンクト・パウリよりも以前に、2部のマグデブルク(2023/8/1)とSCパーダーボルン(2024/6/1)はXのアカウントを削除した。2チームとも道義的な観点よりも、運用上の問題が引き金となったようだ。例えばマグデブルクは、Xの指定する課金方法を受け入れないと、理解しがたい制限がかかり、SNSの運用に困難を感じたと説明している。
両クラブとも離脱後はインスタグラムと独自アプリでの活動がメインとなった。ライブスコア(試合速報)とニュースは、アプリで情報を得ることができる。インスタグラムではクラブや選手のインサイド情報など、より身近なトピックを提供している。私はSCパーダーボルンのファンだが、実のところXから公式がなくなってもそれほど困ってはいない。ただ、ネット上でのファン同士の交流は縮小したと感じている。公式アカウントはユーザー同士をつなぐ核のような役割も果たしていたからだ。パーダーボルンもマグデブルクも、地域でローカルに密着した活動により注力していくのであれば、今後はネットでわざわざ世界中につながる必要がないとも言える。
Blueskyをメインにしたクラブ
Blueskyにアカウントを開設したザンクト・パウリは、2か月ですでに2万7千超のフォロワーを獲得している。25万フォロワーだったXの約1割強だが、他クラブがまだ千単位でしかフォロワーを得ていないことを考えると、初動でかなり成功したと言ってもいいだろう。bsky.socialの代わりに、fcstpauli.comのカスタムドメインで活動していることも、公式感のアピールにつながっている。
Blueskyでもハッシュタグによるフィードを使用すれば、ファン同士の交流も可能だ。もちろんXに比べるとユーザー規模はまだ小さいが、現時点ではより雑音の少ないコミュニティ形成が期待できるかもしれない。何よりも会話の途中でプロモーションに分断されない環境は心地よいはずだ。ザンクト・パウリはローカルのみならず、世界に発信していく意欲は高いので、BlueskyのようなテキストベースのSNSは必須だろう。
まとめ
ここまで、ドイツのサッカークラブのSNS使用状況と、Xを脱出したクラブの現状について簡単にまとめてみた。
サッカークラブがSNSで提供できることとはいったい何だろうか。すぐに思いつくこととして、ライブスコア、ニュースフィード、ビジョンの周知、イメージ戦略などが考えられる。ファンの側からすれば、公式アカウントが試合実況をすることで、観戦時の一体感が生まれることもあるだろう。関連アカウントが一つのプラットフォームに集中すれば情報も取りやすい。さらにXでバズれば、サッカーの枠組みを超えて、それ以外の人たちにもクラブのことを知ってもらえるかもしれない。イーロンとXは別物と割り切って、このままXのプラットフォームに留まり続けるのか、それとも新しいSNSの流れに思い切って飛び込むのか。ドイツ各クラブのこれからの動きにも注目していきたい。