アブダビのセキュリティガード
最近の社会情勢、アラブとイスラエルの対立がより激化している。イスラエルがハマスの指導者とその孫たちを殺害して以来、イランが報復を発表し、益々警戒レベルが引き上げられている。日本の外務省の伝達事項では渡航禁止区域が明示されており、当然アラブ諸国に出かける人はいないと思うが、此処UAEは中立立場だしイランの友好国だから当然こちらでテロは起こらないと思う。しかし、何があるかわからない。しかも同じ建物にイスラエル大使が住んでいるので、以前から出入り口で手荷物検査とボディチェックは住人の私達にも日々行われていたが、このところセキュリティの顔も一層厳しい。(というかその後ろで白装束のエミラティの政府高官?が見張ってるからなんだけど)。今日はこのセキュリティについて書こうと思う。それほどこの国の内部事情を詳しく知っているわけではないが、自分なりに感じたこと見聞きした事など。間違っている場合もあるのでその時は申し訳ないです。
監視社会
まずアブダビに居て驚く事は、徹底した監視社会であることだ。監視カメラはそこら中に設置されているし、部屋の中やパソコンでさえ見張られてるんじゃないか?という気さえすることがある。また一番驚く事はセキュリティスタッフの数だ。彼らの所属は警察なんだろうけど、セキュリティ会社に登録している人もいるとかで詳しくはまだ知らない。道に立っているセキュリティガードの数は驚くべき多さだ。レジデンスの入口からプールからあらゆる場所、道にも数メートルおきに立っているし、ショッピングモール、ルーブル美術館、なんせどこにでもいる。何か少しでも不審な動きをしたら必ず「どうしました?」と声を掛けてくる。
一度夜に普通のTシャツパンツ姿で、迷いながらキョロキョロと歩いていたら、セキュリティの車が止まり声をかけられた。「どこへ行くんですか?何をする目的ですか?」など訊いてきた。笑顔とかなしで。か弱くはないが、中年女性の私自身を守るんじゃなく、まるで不審者扱い?のように感じてえっ?ただ歩いてるだけなのに、こういう聞き方する?とは思った。なんせ、アリの一匹まで駆除する勢いなのだ。
セキュリティガードはストイックな仕事人
皆一様に大きめのガッチリした無表情なSPもどきのおじさん達(時に女性も)で、人種の配置などもある程度のヒエラルキーがあるようだ。どうやら政府関係はエミラティかアラブ国の人たち:イラク、クウェート、カタール、バーレーン、サウジアラビア、シリア、エジプトあたりのセキュリティガードが、心理学者のスクリーニングやら身元調査も徹底的にした後、適切な人だけが雇われ、人命と財産の保護を目的に政府機関のセキュリティ管理のため、プロフェッショナルな育成をされているらしい。身だしなみ、訓練も徹底的。そして一般のセキュリティガードは、インド、パキスタン、スリランカ、フィリピン、またはカザフスタンあたりの丸顔のお相撲さん顔の桃太郎みたいな男らしい感じの人もよく見る。大事なことを書くのを忘れたが、此処アブダビは1割がローカルの住人で後の9割は移民で構成されている。彼らは近隣諸国から出稼ぎにやってくるのだが、アラブ非アラブで待遇が違うらしい。此処の住人の中でのヒエラルキーとしては勿論エミラティ(簡単に言うと石油王たち)が頂点で、その次が上記のアラブ諸国の人たち、そしてEUやアメリカ、東欧、日本人中国人韓国人、その下に近隣のフィリピンやカザフスタンが居て最後がインド系のようなこと聞いた。
モンゴル顔のお相撲さんみたいなガードの人はなかなか素敵だった
確かに最初来た時、今の日本ではなかなか出会えない侍タイプの、素朴でマッチョで深い優しさを備えたキャラのセキュリティの人と家探しの時に会っったが印象的だった。全く無表情なのに実は深いところで気遣ってくれたり、何かの会話の時に意外な子どものような笑顔を見せてくれたり、「惚れて舞うやろ〜」という気持ちになったこともある笑
そういう具合に、なかなか身心ともにトレーニングされているストイックな人たちではあるが、よくここまで何も起こらないのに、ただ市民の安全のため、1日中待機して、立ってくれてるよな〜
此処アブダビは、豪華なホテル、美しいビーチ、ユニークなデザインの建築物、そして「最も安全な都市」として認知されているが、影で支える実力者が彼らである。その誇りに満ち溢れたセキュリティガードは謎だがどういう出自でどういう経緯で雇われたのか知りたくなる。でも彼らが居てくれるから女性が夜道一人で歩いても全く怖くないのだ。
安全に越したことはないが、何か小さな犯罪でもたまに起きてくれて、私の面前で彼らの活躍を一度くらいは目撃したいな、とまで思う今日この頃である(なんて気楽な事を言ってる場合じゃなかった)。いつテロに巻き込まれてもおかしくない社会情勢ですよね。