振り返り方 鬼速PDCAよ
1週間仕事をして何も問題が起きないことなどあり得ない。
「課題がないのは行動をしていない証拠」という共通認識が当社の社員たちのなかにはある。 だからミーティングで各自が課題を発表することは何も恥ずかしいことではなく、それどころか課題をウェルカムとし、課題が言えることこそ賞賛の対象と考えている。課題がない人や組織などありえないはずだ。
自分の行動を週に1回でも振り返る習慣がある人は現時点でかなりの成果を出しているはずである。それくらい振り返りの習慣を持つ人は少ない。大半の人は年に1回、上司との面談で曖昧に一年の反省と来年の抱負を考えて終わりのはずだ。
考えてみれば当たり前の話だ。PDCAを回していない人は地図がないまま気ままに散歩しているようなものである。こちらは明確なゴールを持ち、常に最短ルートを模索しながら日々を過ごしている。
歩く速度をいきなり周囲の10 倍にすることは難しくても、常にインパクトを重視してトレーニングをし、最短距離を重視してルートを選んでいるので、結果的に10 倍速く進めるのである。
少なくとも私はそう信じてやってきたし、いまの自分が唯一誇れるものがあるとすれば鬼速PDCAをベースとする成長スピードであると断言できる。
課題解決のためのフレームワークだと思っている
PDCAは課題解決のひとつの手法である。だからといって、課題がなければPDCAを回す必要がないのかといったらそうではない。 物事がうまくいかないときには必ずどこかに原因があるように、物事がうまくいっているときにも原因がある。しかし、多くの人は物事がうまくいったらただ喜んで、居酒屋での打ち上げで盛り上がって終わりだ。
重要なことは、うまくいったことを確実に再現できるかである。
PDCAを回す目的は、最初の計画で立てたゴールを達成することである。それにもかかわらず、多くの人は検証のフェーズで「うまくいかなかった原因」ばかりに着目しようとする。 鬼速PDCAでは検証のフェーズで必ず「うまくいった原因」も分析する。
「たまたま運が良かった」では得るものがないからだ。必ず何かしらの仮説を立て、「もう一回このアプローチで再現できるか、次のPDCAで確認しよう」と考える。「うまくいかなかった原因」への対策が「改善案」であるとすれば、「うまくいった原因」の再現を試みるのが「伸長案」である。
私は、PDCAのAを、一般的に知られている日本語訳の「改善」ではなく「調整」としている。「改善」だけに目を取られて「伸長」を忘れないためである。
5 改善さえすれば終わっていいと思っている 仕事で問題が起きたら誰しも知恵を絞って事態の解決に全力を傾ける。ただ、それをもって「PDCAを回した」と思ったら大きな間違いである。
PDCAには「階層」がある。人も組織も複数のPDCAを回している。
そして、上位のPDCAほど回し「続ける」ことに意味がある。
例えば、ソフト開発の過程で致命的なバグが見つかり、チームメンバー全員で原因究明に努めてバグを直したとする。そのとき行ったのは「バグを解決するためのPDCA」である。バグがなくなったのでPDCAは終わっていい。 しかし、本来であればプロジェクトリーダーは「プロジェクトをトラブルなく予定通りに終わらせるためのPDCA」も回しているべきである。これが上位のPDCAだ。
大半の人は課題が顕在化したときしかPDCAを回さない。しかしそれだと、バグが解決した瞬間だけを見ればハッピーエンドだが、もしかしたらその際、特定のチームメンバーだけが徹夜を強いられていて、現在も不満を抱えているかもしれないわけだ。そうした潜在的な課題にも目を配るには、上位のPDCAをずっと回し続けていないといけないのである。主力のエンジニアが突如チームを去ってしまったら、それまでの努力が水泡に帰す恐れもある。
何か一つのところに負担が掛かっていないか、などを確認するためにもPDCAは必要。
例えばある若いビジネスパーソンが
「5年以内に年収1000万円以上稼ぐ」とゴールを設定したとする。
現状は大企業の営業職で年収500万円。
そのギャップを埋めるためにはさまざまなルートが見えてくる。
ひとつは、いまの会社で営業スキルを徹底的に磨き、圧倒的な営業成績を挙げ、その実績を引っさげて完全歩合制の企業に転職することかもしれない。または英語を必死に勉強してMBAへ進み、外資のコンサルティング会社に入ることかもしれない。
それぞれのルートを検討してみると、さらに細かい計画が必要であることがわかる。
仮に営業職として結果を残すルートを選んだら、「年収1000万円」という大PDCAの下に「営業スキルを磨く」「年間売上10 億円」といった中PDCAが回ることになるわけだ。それに「営業スキルを磨く」といっても、コミュニケーション力を磨くのか、提案力を磨くのかといった個別の課題(小PDCA)に分解されていくし、コミュニケーションといっても役員クラスとの話題についていくための情報収集の話なのか、仕草や表情の話なのか、交渉力なのか、傾聴力なのかとさらに分かれる(小小PDCA)。
最初に掲げた大PDCAのゴールがいかに壮大であっても、それらを小さなPDCAに分解できる。これらを回すことで、加速度的に目標に近づくことができる。
PDCA力の効果が如実に表れるのが営業マンだ。
コミュニケーション能力に長けていたわけでもないのに営業のPDCAをひたすら回し続けた結果、圧倒的な成果が出せた私が言うのだから間違いないと思う。アプローチの仕方、しゃべり方、アポの取り方など、契約に至るまでのプロセスをすべて分解した上でそれぞれPDCAを回すようになるとその成果が面白いように数字として表れる。
まずは計画のフェーズ。
受付突破は受付担当とのたった1分、下手をすれば5秒、10 秒で決まる世界なので検討すべきことは多くない。とにかく「第一印象」が重要な要素になることはすぐにわかる。
そこであるときは「笑顔を絶やさず、ゆっくりと発言してみればいいのではないか?」と仮説を立てた。計画を立てたらそれを実行してみる。例えば一日単位でサンプルをとってみるというように。
サンプルをとったら検証だ。
うまくいかなかったらその原因を必死に考えた。ここが若干難しいが、少なくとも仮説は立てられる。「もしかして新人だと思われてなめられたのかな?」と。ただ、ここで思考が止まってしまってはPDCAサイクルが止まる。
思考が止まりそうなときは、「なぜ」か「どうやって」を自分に問えばいいだけだ。「じゃあ、どうやったらなめられないかな?」 これでまた思考が動きだす。「そういえば上司が真剣にプレゼンしているときの仕草って、信頼感があるよな。あれを真似してみようかな」といった改善案が見えてくる。その結果、次のサイクルでは「身振り手振りを交えてみる」という計画を立て実行し、検証するのである(身振り手振りは恐ろしく効果がなかったが……)。 このように仮説を立て、サンプルをとり、分析して改善するというPDCAをずっとやってい
毎日欠かさずPDCAを回していれば、数年のギャップなどあっという間に埋められる。
⚫前に進む事が楽しくなる
実行するのは生身の人間だ。人間である限り感情の浮き沈みもあれば、不測の事態に直面したときにパニックになったり精神的に落ち込んでしまったりすることもある。
そのときにすぐに上を向いて、歩みを続ける原動力になるのがPDCAだと思っている。
人が不安や疑問を感じ、歩みを止めてしまう原因は3つしかない。
・「自分はどこへ向かおうとしているのか?」(ゴールが見えない)
・「果たしていまの努力は意味があるのだろうか?」(道が見えない
)・「この方法のまま続けていていいのだろうか?」(手段が見えない)
こうしたことが曖昧なままではモチベーションが上がるわけがない。ましてやその状態で大きな障害に出くわしたとき、それを乗り越えるだけのパワーは湧いてはこない。
仕事であればある程度強制力があるし、毎月の給料という形でなんとなく成果は出る。しかし、不安を抱いたまま全力で仕事に向き合うことはなかなか難しい。
その点、PDCAを回していれば、計画フェーズでゴールと道のりが明確になる。そして実行の段階で手段が決まる。
そして、何回か障害を乗り越える経験をすれば、そのうち課題にぶつかることが楽しくなってくる。
もしあなたが、または、あなたの会社が、長らく壁に直面していないとしたら、それは単に現在地で足踏みをしているだけだ。前に進んでいる限り必ず障害物に当たる。
それを当然なことだと受け入れ、気持ちをすぐに切りかえて前に進み続けていれば、絶対にそれ以上のプラスの結果が返ってくる。むしろ障害物に遭遇したら前に進んでいることを確認できたと素直に喜べばいいのだ。人生はおそらく言うほど難しくない。難しくしているのは自分自身である、と思うことすらある。
もしその障害物が「嫌な上司」だったとしたら、定期的な人事異動で目の前から消える可能性はあるだろうし、会社を転職してしまえばとりあえず障害は消える。それが唯一残されたルートであればしょうがない。でも、いきなりそういった選択肢を選ぶのは考えものだ。それでは再度同じようなタイプの上司が目の前に現れたら、また同じようにその場で立ちすくむことになりかねない。「果たしてこれが最短のルートなのか?」と自問自答を止めてはいけない。
「PDCA」と「自信」は鶏と卵のような関係である。PDCAを回すと自信が湧き、自信が湧くからPDCAを続けられるのである。
とくにPDCAを早い段階で身につけるとPDCA力自体の向上によってレバレッジがかかる。いままで難儀していたことでもすぐにマスターし、次のレベルに上がっていける。すると仕事でも私生活でも、自信が湧いてくる。
また、そこまでの成果が出ない段階でも、ゴールと現状のギャップを把握しながら計画を立て実行に移しているだけでも「前進している自分」を実感できる。
PDCAを回し続けといる限り、その対象が何であろうとゴールするまで必ず前に進む
「前進するためのフレームワーク」と評している理由はここにある。
人の感情はいとも簡単に揺れ動く。そしてそれは仕事のパフォーマンスにも顕著に表れる。だからといってモチベーションがドン底まで下がった段階で「頑張らないと」と言い聞かせたり、上司が「気合い入れろよ」と叱責してみたところであまり効果はない。 なぜならモチベーションが自分の足を引っ張るまで事態が悪化したときは、たいてい大きな壁に直面したときか、五里霧中で進むべき道が見えなくなったときか、もはや自分の存在自体を否定したくなるくらい自信を失っているときだからだ。そんな状態から「さあ、前へ進もう」と気持ちを奮い立たせるには相当な手間と時間がかかる。 しかし、普段からPDCAを回していれば自信がみなぎっているので常にモチベーションは高い。毎朝起きるときも「よし、今日も前に進むぞ!」と思える。ゴールも筋道も手段も明確だから迷いは一切ない。そこで壁に直面しても、いままでの助走があるのでたじろぐこともない。 もちろん、いままでノープランで生きてきた人が、突如、鬼速でPDCAを回そうとするとそのペースの速さに戸惑うことだろう。当社でも鬼速ペースについてこれない若手社員がいないとは言わない。ただ、それに慣れてしまえばこれほど面白い人生はない。周りの人や競合他社が、止まっているようにしか見えない。
PDCA
⚫計画
計画フェーズでは、最終的に到達したい山頂を決める。
そして、そのゴールは具体的であるべき。
定めるゴールは「いつかできるだけ高い山に登る」といった曖昧なものではなく、「1年後の今日、あの山の頂に立つ」というくらい明確にすべきである。なぜならゴールがはっきりすることで現在地とのギャップが明確になり、ギャップが見えれば自分がこの1年間でなすべきこと、すなわち数々の課題や取るべきルートが見えてくるからである。
課題とはルート選定であったり、持久力の増強であったり、登山費用の工面であったり、必要な装備を揃えることなどが考えられるだろう。
また、現時点で見えているルートで山頂にたどり着けないかもしれないのなら、別のルートを探すことも課題になる。「課題」が見えたらそれを解決するための大まかな方向性を考える。そこまでやって計画は終わる。
もちろん、ゴールが遠すぎると「課題」が見えづらいこともある。そのときは明らかに課題だとわかっていることはさっさと着手し、わからないことについては仮説を立て、動きながら計画精度を上げていくことである。
例えば、必要な装備がわからないからといって持久力アップのためのトレーニングを開始しない理由にはならない。
こう書くと当たり前のように聞こえるが、現実には完璧な計画が立てられないと実行フェーズに移せない人が大勢いるのである。
計画はPDCAの5割を占める。考えてみれば当然だろう。
ここで設定したゴールは、より大きな目標(七大陸最高峰踏破など)に紐づいていないといけない。
⚫実行
計画の段階で「課題をクリアするための解決案」が見えているので、実行のフェーズではそれを複数のアクションに分解し、さらにアクションを具体的なタスクレベルに落とし込んで、ひたすら実行に移す。
このときのポイントはアクションからタスクへの具体化を、なるべく迅速に行うことだ。
例えば「持久力をつけないと」「経験者を探さないと」といったアクションの粒度でいくらわかっていても、日々の生活に追われていたり、単純に乗り気ではなかったりするのであれば、なかなか実行に移せない。ましてやゴールが1年後であればなおさらだ。
人は明確な基準が与えられない状況下では、常に「気楽さ」と「緊急性」の2つの基準だけで行動を決めてしまいがちだからである。
それらの抽象的なアクションを「毎日、朝6時に起きて5キロ走る」「今日、夕食後の2時間を使ってネットで検索する」といった具体的なタスクとしてスケジュールを押さえてしまえば、もはややらざるを得ない状況に自分を追い込むことができる。加えて、やることが具体的だと、取り組む意欲が増すという大きな効果もある。
計画フェーズで失敗する人が5割なら、実行フェーズで失敗する人は3割。
その3割のうち、7割くらいの人は、実は抽象的なままアクションを抱え込んで実行に移せていないケースである。
「こうした方がいいよね」と調整案が出てきたら、直ちに具体的タスクに分解して担当を決める。
⚫検証
計画フェーズで考えたルートも課題も解決案も、さらには実行フェーズで考えたアクションもタスクも、実際には仮説にすぎない。「いまある情報のなかで考えられる最適解」にすぎないからこそ、それが最適解であるかどうかの定期的、かつ頻繁な検証が必要になるのだ。
検証をしなくても実行のサイクルは回り続ける。PDCAサイクルというと、Pから順にくるくる回すものだと単純化して理解する人がいるが、実際のPDCAサイクルは、いざ最初の計画を立ててしまえば、その後の主体は実行サイクルであり、そこに随時、検証や調整をかけ、場合によっては計画を修正するものである。よって、検証をしなくても最初に計画を立てたのだからなんとなくゴールに近づいている(PDCAが回っている)感覚がある。
実はそれが罠である。
毎日、早起きしてジョギングを続けてはいるが、実はすでに十分な持久力がついているかもしれない。だとすればジョギングの優先度を下げて、ロッククライミングの技術習得に時間をかけたほうが賢明なはずだ。
または、ネットで情報収集をするよりも、登山家サークルに入っていい人を紹介してもらったほうが早くて確実かもしれない。
こまめに検証を行うことで「実行サイクルの無駄打ちを減らす」ことができるのだ。
実行サイクルにいるときに自分の仮説に自信がないと、せっかく目標を立ててもモチベーションが上がらず中途半端な結果に終わりかねない。だから実行時は自信を持つことが重要だ
⚫調整
検証結果を踏まえて次のサイクルに渡す調整案を考える。
調整案といっても以下の4種類がある。
・ゴールレベルの調整
・計画レベルの大幅な調整
・解決案や行動レベルの調整
・調整不要
ゴールレベルの調整とは、情報収集と自分の現状を検証した結果、目指す山を変えたり、目標の期日を先延ばししたりする場合である。この場合は現在のPDCAは中止され、新たなPDCAが回り始めると思えばいい。
回していると別のPDCAが新たに発生するとがある。
【詳細の説明】
PDCAを失敗する50%は計画
過度の慎重さ、過度の心配はPDCAサイクルを遅くする。
過度の思慮不足、過度の日和見主義はPDCAサイクルの精度を落とす。
よってPDCAを回す人や組織に必要なのは、慎重さと大胆さの中間あたりなのだ。
PDCAはどのような対象でも回せるのでゴールはなんでも構わないが、その際に注意してほしいポイントが3つだけある。
期日を切ること。定量化すること。そして適度に具体的なものにすることだ。
期日切って定量化したもの=KGI
ゴールが定性的だと成長度合い、進捗具合が確認できない。
定性を定量に変える具体例としては以下のようなものがあるだろう。
・「痩せたい」→ 「体脂肪率20%未満」
・「会社を大きくしたい」→ 「売上100億円」
・「上司に認められたい」→ 「人事評価A」
・「我が子に好かれたい」→ 「週に3回以上お風呂に入る」
・「人気商品を作る」→5000いいね獲得する
若干、難しいのが「チームの結束力を高めたい」「心に残る作品を作りたい」といった第三者の内面を対象にした場合である。そのときに用いるのがアンケートだ。内面的なものを定量化するのでアンケートは日本語で「定性調査」と呼ばれているのである。
⚫期間設定
1ヶ月から3ヶ月が良い。
▶理由:人やチームが成長するには十分な期間があり(もちろん内容次第だが)、なおかつ環境が劇的に変わるということもあまり考えられないのでとるべき行動もイメージしやすい。イメージしやすいということはモチベーション維持がしやすいというメリットにつながる。
例:売上
四半期ベースや月次ベースに分解することが基本になるわけだが、それでも粒度はかなり粗い。 それをさらに分解していくには「売上高」を構成する因子を考える必要がある。といっても何も難しい話ではない。売上といっても新規顧客数を増やすのか既存顧客の単価を上げるのかで方法は分かれるはずだ。現時点の売上構成を眺めていればどちらが最短ルートなのかくらいの仮説は立てられるだろう。
そこで新規開拓を増やすことがもっとも効果があると判断したら、実際に扱うPDCAのゴールは「月の新規開拓数30 件」くらいまで具体的にしたほうがいいということだ。
もちろん、仕事であれば上長やクライアントから一方的に数値目標を言い渡されることが大半だろう。その場合でもゴールがあまりに粗い粒度で渡されたら、そのままPDCAを回すのではなく、適度にブレイクダウンしてから着手したほうが断然に高い精度でPDCAを回すことができる。
ゴールが決まったら、次は現状とのギャップを確認する。
ここでさっそく威力を発揮するのが先ほど行ったゴールの定量化である。現状についても同じ基準で定量化することによって、ギャップは明確なものになる。
ただし、ここで勘違いしてほしくないのは、定量化のプロセスは検証精度を上げるために必須であると言っているのであって定性的なものを無視しろと言いたいのではない。
⚫ギャップを埋める課題を考える
ゴールと現状のギャップが見えたら、そのギャップを埋めるための課題を考える。
ギャップが大きれば大きいほど必然的に課題は増えることになるし、第三者と連携し合いながらひとつのゴールを目指すときは、互いの利害関係の擦り合わせ(つまり課題抽出のためのミーティング)も当然、必要になるだろう。
課題といっても、自分に足りないことばかりを考える必要はない。自分の得意分野を強化することでギャップが埋められるなら、それも立派な課題である。
個人レベルでPDCAを回す場合は次のような問いを自分に投げかけ
PDCAを回す場合は次のような問いを自分に投げかけながら、頭に思いつくことを紙やホワイトボードに書き出してみることをおすすめする。
・「ゴールから逆算すると、自分は何をすべきなのか?」
・「この道を進むとしたら、何が不足しているのか?」
・「前進を加速するために、伸ばせる長所はないか?」
・「あらかじめ手を打っておくべきリスクはないか?」
・「周りでうまくいっている人は、どんな工夫をしているか?」
チーム単位で動いているのであれば、全員で知恵を出し合って思いつく課題をポストイットなどに書いて壁にどんどん貼りつけていくといいだろう。その際、具体的であろうと抽象的であろうと気にしないこと。また、そこで出る他人の意見を否定することはご法度である。課題は自分が想像していなかったところに潜んでいる場合が往々にしてあるので、活発に意見が出る雰囲気にすることが何よりも重要だからだ。
課題抽出は正確に、かつ漏れなく行うことが理想ではある。
鬼速でPDCAを回すにはこの段階でいかに物事を整理し、深い分析ができるかが重要である(その方法については3章の応用編で説明する)。
ただ、いくら情報を集めて課題やギャップを正確に把握しようとしても、完全な把握などまずできないと思ったほうがいい。むしろ、課題抽出に自信が持てないからPDCAサイクルを回せないのであれば本末転倒だ。
仮にここで課題を見落としていても、定期的に検証を行っていれば、どこかの段階で「もしかして他に課題があるのでは?」と気づくことができる。
むしろ、課題を洗い出すためにPDCAを回すという意識が重要なのだ。
ステップ④ 課題を優先度づけして3つに絞る
ゴール設定にもよるが、一般的に課題をリストアップするとかなりの数になるはずである。そのすべての課題をこなせれば理想的だが、このあと、それらの課題をアクション、そしてTODOに分解していくと、実際にやるべきことは倍々ゲームで増えていく。
人はタスクを同時に抱えすぎるとフォーカスポイントが曖昧になって成果が思うように出せなくなる。
よって重要なのは適宜、選択肢をふるいにかけ、「やらないこと」を決めると同時に、「やること」について優先度づけを行うことである。
さて、ここではステップ② でリストアップした課題のなかから、これぞと思われる課題を絞り込む。
そのときに使う基準は3つある。
インパクト(効果)、時間、そして気軽さだ。 インパクトと気軽さについてはABCの3段階評価を振り、時間についてはその課題をクリアするために要すると思われる工数(延べ時間や日数)を考え、最終的には各課題に優先度を、こちらもABCの3段階で振っていく。
最終的には3つの課題に絞り込みたい。これ以上多いとPDCAが重荷になりすぎる恐れがあり、逆にこれより少ないと重要な課題を取りこぼす恐れがあるからだ。
1.インパクト(効果)
現時点では純粋に「これがクリアできたら理想だよね」と思える課題からAをつけていけばいい。
情報が少なくて課題の達成がもたらすインパクトが比較しづらい場合もあるだろう。
例えば、ダイエットで10 キロ減らしたいという人が「運動をしないといけない」と「食事制限をしないといけない」という2つの課題のどちらが大事なのかと言われたら、即答できない可能性もある。
でも、そのような状況になったらネット検索くらいは誰でもするはずだし、今後もPDCAを回し続けるのであれば、それくらいの手間など大したことはないはずだ。
もちろん、ネット検索をしてもなお、答えがわからないこともある。
そのときは自分にとってもっとも納得感があった説を選んでみればいいだけである。
PDCAは仮説思考であり、仮説が間違っていたらあとで課題設定を変えればいいだけの話だ。
2.時間
課題レベルの話のため「1日に割く時間× 日数」といった工数の計算は難しいはずなので、課題が達成されるまでに要する「期間」を考えればいい。「1週間くらいかかりそうかな」「1ヶ月はかかりそうかな」くらいの粗さで構わない。 時間がまったく見えない課題の場合は、「?」マークで処理すればいい。
また、ゴールの期日直前まで継続するような勉強系の課題であれば、期日をそのまま時間に記入すればよい。 ちなみに、課題が「時間効率」にまつわる場合は、その課題を達成することで生まれる時間は「インパクト」であり、ここでの時間とは「時間効率を上げるまでに要する期間」を考えれば良い。 ここで重要なことは、あらためてゴールで設定した期日を意識することである。インパクトの大きい解決案があったとしても、どう考えても期日までに間に合わないものであれば、この時点でリストから消しておくといいだろう。
3 気軽さ
3要素分解し記入したら、「いよいよ優先度を振って3つに絞る。
このとき、各基準の重みづけは各自が任意で決めて構わない。企業であれば、この判断基準の重みづけにその会社の個性が現れるといっていい。
私がおすすめする選び方は以下の通りである。
①インパクトのもっとも高いものを最低でもひとつ選ぶ
②インパクトが劣っても短い時間でできそうなものがあれば選ぶ
③同列の課題が並んでいたら、気軽さを基準にして絞り込む「気軽さを指標にしてしまうと易きに流れて成果が出ないのでは?」という指摘もあるだろう。
ただ、ここで気乗りしない課題を切り捨てて、気軽にできるものだけを着手したとしても、検証フェーズで効果が出ないことがわかれば結局は課題を入れかえることになる。
でもそのときは気軽にできるものはすでに試したあとなので、いままで気乗りしなかった課題であっても「やらざるを得ない」状況になっているわけであり、場合によっては「やっぱりこの課題をクリアしないといけないんだ」と状況が整理されることで、いままで気乗りしていなかったものであっても前向きな姿勢になっていることもよくあることである。 ちなみにこのステップでは課題をふるいにかけたが、この後も解決案についてふるいをかけるし、解決案をアクションに分解したものについてもふるいをかけるし、検証を行った結果の調整案についてもふるいをかける。
4回も優先度づけを行うことを面倒に感じるのも無理はない。しかし、 PDCAが肥大化して、中途半端な状態で破綻しないようにするためには不可欠な作業である。
それに、実際に私たちはさまざまな課題を抱えながら生活を送っている。何もひとつの PDCAサイクルだけに全力を傾けられるわけではないし、時には気が滅入るほど時間に追われることもあるだろう。
そんなときに「すべてをやる必要はない。でも、優先度の高いことだけはやろう」と割り切れることは非常に大事なことだと思う。そのための優先度づけだと思えば、こうした手間も建設的に思えてくるはずだ。」
ステップ⑤ 各課題をKPI化する
課題が絞り込まれたら、次はそれらの課題を数値化していく。
みなさんご存知のKPI(Key Performance Indicator)、つまり結果目標である。ゴールの定量化と同じで、検証フェーズで客観的に進捗状況を把握するためのものであり、ゴールに近づくための「サブゴール」のことだと思えばいい。 数値化しやすいものであれば比較的簡単だが、若干厄介なのが定性的なものだ。 例えば、「社員のモチベーションが低いこと」のような課題だ。 場合によっては人事コンサルティング会社を使ってアンケート調査を行う前提で、「モチベーションが高い社員の割合を7割にする」ことがKPIになるかもしれない。
課題をKPI化しようとすると、たいていの場合、複数の選択肢が考えられる。
すべてのKPIを追う必要はないので、この時点で各課題のKPIをひとつに絞るといい。
KPIを絞るときに使う基準は、できるだけ頻繁に検証でき、なおかつ成果がその数値に正確に反映されるものである。
例えば英語の勉強をしているときに、演習問題の正解率は確かに成果を反映したKPIではあるが、例えば単語力を鍛えることが課題のときにリーディングの演習問題をKPIにしてしまうと、純粋に単語力が伸びたのかどうかわかりづらいし、検証をするためには演習問題を解かないといけない。それよりも、巷に溢れている単語テストアプリを使って、その正解率をKPIに使えば、単語の勉強の成果を正確に反映できる上に検証も楽である。
KPIはあくまでも「目指すべき結果」であって、行動の目標ではないことも付け加えておく。 先の例で言えば「笑顔のトレーニングをするセミナーに参加する」ことや「部下全員に1日1回会話を仕掛ける」ことは行動目標であり、次の実行フェーズで設定するものなので混同しないように気をつけたい。「セミナーにいった結果、どうなりたいか」「会話を仕掛けた結果、どうなりたいか」の『どうなりたいか』の基準となるものがKPIである。
ステップ⑥ KPIを達成する解決案を考える
KPIを決めたら、その数値を達成するための解決案を考えないといけない。
解決案とは「大まかな方向性」のことだと考えてもらえばいい。ここで考えた解決案は、この先の4章で解説する実行フェーズで、一段具体的なアクション(DO)へと分解され、さらに具体的なタスク(TODO)に落としこまれていく。解決「策」とするとDOやTODOと混同すると思って、あえて解決「案」としてある。 KPIによっては解決案が共通する場合もあるので、解決案を書き出すときはKPIごとに分けて書く必要はないが、ひとつのKPIにつき、最低ひとつは案を考えるべきである。また、ほとんどの場合はひとつのKPIから複数の解決案が出てくるはずだ。とくに課題が抽象的であればあるほど解決案も多岐にわたる可能性が高い。
また、課題(KPI)によっては解決案が明確な場合もある。
例えば勉強や仕事のスキルセットに関するものであれば、解決案はそのテーマについての教材を探し、時間を確保してひたすら勉強をすることである。このように、「やるかやらないか」によって成果が変わる課題(KPI)については答えが出しやすい。
厄介なのは「フォロワーを増やす」(KPI:SNSの企業ページの「いいね!」を100件に増やす)といった他人の感動に関わる課題や、「チームの実行スピードを上げる」(KPI:電話アプローチ件数を50%増)といった複雑な要因が絡み合っている課題の場合である。
そうした一筋縄ではいかない課題については、「なぜ現状、そうなっているのか」という要因分析が必要になる。その際、解決案のアイデアがすんなり出てこないということは、要因は自分の視野の「外」に隠れている可能性が高い。
そこに気づくためには自分の思い込みを取り払う必要があるわけだが、それを一人で行うことはなかなか容易ではない。こうしたときに本や先輩・上司、アドバイザー、コンサルタントなどの「外部の目」の出番になる。
そうした外部の協力を得てもなお、自信の持てる解決案がわからない場合もあるだろう。
時間的な制約や人的・金銭的リソースの制約からそこでの判断に一点張りしないといけないようなケースであれば、必死に悩めばいい。しかし、そのようなケースは滅多にないし、もしそうだとしたらそれは計画と実行で完結してしまう話なので、そもそもPDCAと呼ぶべきなのかも怪しい。
もしその後に修正のチャンスがあるのであれば、解決案に確固たる自信がなくても、さっさと実行に移して検証すればいいのだ。その際はもちろん、仮に仮説が間違っていても、致命傷を負わない程度にリスクを抑える必要はある。
こうしたPDCAの考え方は、いずれもベストセラーになった内田和成氏の『仮説思考』(東洋経済新報社)や、エリック・リース氏の『リーンスタートアップ』(日経BP社)の考え方と限りなく近い。すなわち「これかな?」と思ったらさっさと検証してブラッシュアップしていけばいい、という考え方だ。
保守的な組織や、頭の固い上司の元でPDCAが回りづらいのは、失敗が悪者扱いされているからだ。そうした職場では決まってこのような質問がドミノ倒しのように飛び交う。「これで間違いないな?」 1回きりの勝負に出るなら担当者の本気度を確認すべくこうした質問をしてもいいと思うが、失敗してもかすり傷程度のものでもいちいち念押しをしてくる上司がいる。あとあとの責任を回避するために打つ布石である。これでは末端の社員が萎縮して当然だ。
日本企業は動きが遅いと言われる最大の原因である。
ステップ⑦ 解決案を優先度づけする
最終的な優先度をつけるときの判断基準を整理するとこうなるだろう。
① 最重要KPIについては最低ひとつ、できれば2つ以上残す
② それ以外のKPIについてもできればインパクト重視で解決案をひとつは残す
③ 短時間で終わるものについてはインパクトが弱くても残す
なお、ここで切り捨てた解決案については、あとあとのサイクルで復活する可能性もあるので、書き出したものを捨てないように気をつけたい(これは他のステップにもいえることである)。
ステップ⑧ 計画を見える化する
以上で基本的な計画は立てられたはずである。
もしチームでPDCAを回している場合は、ここまでのプロセスをできる限り共有すること。とくに計画者と実行者が異なるときに実行者に解決案だけをポンと渡したところで「仕事は振られたが、なんのための仕事なのかわからない」といったありがちな事態が起きる。実行者のモチベーションはチームの実行スピードに直結するのできわめて重要なことである。
意識づけの仕組みを作ることはPDCAを回すにあたって決して軽視できないことなのである。
ノミの実験を例に記載
限界を決めればそこまでしか出来ない
だから限界を突破する
⚫PDCA内での案出しの幅も広がる
リミッターを外す対象はゴール設定だけではなく、解決案を考えるときも有効だ。
例えば私は社内で部下から相談を持ちかけられたときには、このような質問をよくする。「他にできることがあるとしたらどういうことだと思う?」
これも一種のリミッター外しだ。そこで相手がひるまずに3つくらい解決案を挙げてきたら、「じゃあ、さらに3つあるとしたらなんだろう?」と続けて聞く。すると大抵、部下は「あと3つもあるの?」と驚いた表情をするが、私は「当然あるよね」と言わんばかりのポーカーフェースを決め込み、待つ。
ここまでいくと答えはすぐに出てこないが、そこでいったん私は手を貸さない。
部下の脳内では必死に思考のストレッチをしているわけだから、そこで「ないなら別にいいけど」など助け舟を出しては意味がない。
こうやって部下が絞り出してきたアイデアは、実際にかなりいい線を行っているものも含まれる。ほとんどの人はそこまで絞り出そうとしないので、そのきっかけを与えるだけで新たな突破口が見つかることになる。
または、このように質問することもある。「事態は把握した。で、仮に君が当社の経営者だとしたらどう対応する?」
職域、職責といった制限を完全に取り払ってしまうのだ。ここでも相手は一瞬戸惑った表情をするが、そのあと熟考して面白いアイデアを提案してくることもあるし、その結果、「自分はいつも小さいPDCAばかり考えていたけど、実はもっと大きなPDCAを回したほうがいいんじゃないか」といったことに気づくケースもある。
こうしたコーチング手法については、8章『鬼速PDCAコーチング』で、あらためて解説する。
ちなみに先ほど触れたノミの実験だが、50 cm しか飛べなくなったノミを再度2m飛べるようにする方法は簡単で、その場に2m飛べるノミを投入するだけなのだそうだ。脳のストレッチをすることによって自分も飛べることを認識できるのである。
鬼速クエスチョン計画編
● あなたが達成したい目標はなんですか?
● なぜあなたはその目標を達成したいのですか?
● その目標はあなたの現状に対して低すぎる可能性はありませんか?
● 達成したい目標と現在の状況を比較すると、どのようなギャップがありますか?
● そのギャップを埋めるには、どのような課題が考えられますか?
● そのうち上位3つの課題は何だと思いますか?
● 課題を達成できたかをあとから定量的に振り返れるように課題を数値に置き換えるとどのようなものになりますか?
● その数値をクリアするためにどのような解決案が考えられますか?
● 解決案のなかで、効果、時間、気軽さの3つの観点から優先順位を決めると、どうなります
⚫因数分解
要するに、「ゴール」と「現状」を構成する因子をどんどんリストアップしていく考え方だ。
因数分解というくらいなので私がいつも使うのは「式」である。
こうした数学的なアプローチでもいいが、文系の方でもわかりやすいのはロジカルシンキングでよく使われる「ロジックツリー」であろう。やることは同じなのでここではロジックツリーで説明したいと思う。
百聞は一見にしかず。次のロジックツリーを見てほしい。
・どうしたらなれるのか(できるのか)ではなく、
”いい上司とは何か”と因数分解する。
・因数分解はロジックツリーである。
⚫因数分解のメリット5点
1…課題の見落としを防ぐ
・因数分解をせずに頭でひたすら課題や要因を考えても、せいぜい4、5個の視点しか持てないだろう。しかし、あるテーマを20 個の因子に分解したら、それは「20 個の視点を持った状態」と同じである。
よって因数分解能力を鍛えると課題の見落としが劇的に減る。仮説精度を高めていくにはこの効用はきわめて大きい。
2…ボトルネックの発見がしやすい
・因数分解を何回かしていけば、現状とのギャップが大きくて、なおかつそれを是正したときのインパクトが大きいいわゆるボトルネックが、ピンポイントで浮かび上がってくる。
ぼんやりと課題に取り組むよりは、そのピンポイントに手間と時間と金を注力したほうが、アウトプットが増大するのは当然だ。
3…KPI化しやすい
・定量因数分解が甘くて自分の課題が明確になっていないと、定量化できる指標は「契約件数」や「売上」「利益率」などしかなくなる。しかしそれでは総合的な結果の検証しかできないので、本当に課題が解決できているのか不明瞭である。そこで因数分解をした結果、自分のボトルネックが「メールでのポテンシャル先へのアプローチの返信率が、平均値よりかなり低いこと」だと判明すれば、メール返信率を最重要KPIとして設定し、同僚の文面を参考にさせてもらったり、本でピンポイントなことが書かれている箇所を勉強したりと、解決案もフォーカスできる。
4…どんなゴールも実現可能に思える
・内容
仮に「幸せになる」というテーマで因数分解を進めたとしよう。
それを本気で完成させたら因子の数は、軽く1000個は超えるはずだ。
確かにものすごい数ではあるが、それはすなわち「この1000段の階段を上っていけば幸せになれる」という意味でもある。「幸せになるにはあと何段の階段を登り続ける必要があるのだろうか?」と先の見えない状態で前進するよりも、一歩踏み出す際の気持ちは強くなるはずだ。
ゴールと現状の途方もないギャップだけを見せつけられたら、断念する人がいても仕方ない。しかし、それを分解してしまえば、ギャップの正体は上りやすい階段の積み重ねにすぎないことに気づける。因数分解は、目の前の壁を細かいパーツに砕くためのツールなのである。
5…PDCAが深く速く回る
・内容は以下
課題の漏れが減り、ボトルネックが見え、KPIが正確になり、解決案も絞ることができる。このように最初の段階でギャップを「深く」因数分解をすることで計画フェーズのすべてのステップの精度が高まることになる。精度が高ければ検証と調整フェーズでの軌道修正も小さくなるので、PDCAは「速く」回るようになる。「PDCAは速く、深く回せ」とはそういう意味である。 それにゴールやKPIと解決案との因果関係が明確になると、それまで「やりたくない」と思っていたことでも「成果が出るならぜひやりたい」と向き合い方が変わる。これは実行フェーズのスピードに大きく影響するので、PDCAのスピードはさらに速く回るのである。
■ポイント1
抽象度を上げてから分解する
・ロジックツリーの上部に設定するものを、イシューや論点という
ただ、イシューなとは因数分解して見極めるものなので、テーマと呼ぶことにします。
1番良い1段目の設定は、一般的なテーマにすること。
例)利益10億とゴールが設定されたら、そのままテーマにせず、「利益構造」として、それをどれだけ細かく分解するかにフォーカスし、数字は後で当てはめる方が早い。
■ポイント2
5段目まで深堀りする
・明らかにそれ以上分解しても意味が無い、というところまで。
例えば「チームのアウトプットを2倍にアップする方法」を考えてもらっても、「コミュニケーションが課題です!」と真顔で報告してこられることもあった。または「新規サービスの営業手法」を考えてもらっても「やはりSNS広告がいいと思います」というなど、一筋縄ではいかなかった頃もあった。
コミュニケーションの何が課題なのか、どのSNS広告をどうやって使えばいいのかまで考えていない。そうした甘々の因数分解では課題は見えづらいし、PDCAも回しづらい。
私の経験上、深掘りをするときの深さの基準は5段目だ。
そこまでいくとかなり課題が具体化しているので解決案も具体的なものを思いつきやすくなり、さらに次の実行フェーズでも迷いが出にくい。 繰り返すが、ロジックツリーをすべて5段目まで埋める必要はない。課題となりそうな箇所だけを5段目以上をメドに深掘りすればいい。
また、これもロジカルシンキングの基本だが、因数分解の階層を深めるときは「WHY」を繰り返すWHYツリーか、「HOW」を繰り返すHOWツリーの2通りしかない。
要因を見つけるときは「なぜ(できないのか?/できたのか?)」を繰り返し、課題や解決策を見つけるときは「どうやって(構成されているのか?/達成するのか?)」の問いをすればいい。 この2つの質問はPDCAにおける魔法の質問である。
■ポイント3
1段目だけはMECEを徹底する
・例えば、時間の効率活用を目指して、一日の行動を洗い出すとする。分類の仕方はいろいろ考えられる。「午前」と「午後」から分けてもいいし、「3時間単位」で分けてもいい
では「職場」と「自宅」と分けたらどうか? これでは自宅にも職場にも該当しない「移動中の時間の使い方」や「飲み会に参加するときの時間の使い方」などが抜け落ちる。
ただ、階層が深くなるにつれ毎回MECEを意識することはあまりに時間がかかる。それが心理的な負担になって因数分解が甘くなってしまっては意味がない。
よって私は、最上端のテーマを分解する1段目だけは、MECEを徹底することを奨励している。
さすがにこの段階で「抜け」が発生すると、その下位にくるすべての課題が検討対象から外れてしまうので、最初の計画段階での精度がガタッと落ちるからだ。
それ以降についてはできるだけ知恵を絞ることは当然だが、あまり厳格になる必要もないだろう。仮に抜けがあったとしても、それに検証フェーズで気づくことができれば修正は可能だ。
■ポイント4
切り方に悩んだら「プロセス」で切る
・例えばメールアプローチで営業をかけている担当者が売上を伸ばしたいとすると、ロジックツリーにおけるテーマは「メールアプローチ」になる。それをプロセスで切れば次のような順番になるだろう。
メールアプローチをプロセスで切った場合
リスト準備→ 送信→ アポ取り→ ニーズ喚起→ 提案→ 検討→ 成約→ リピート
これぞ「漏れなく、重複なく」メールアプローチを分解したものである。あとはプロセスごとにさらに因子を分解していけばいい。
仮にプロセスの分解で「コンタクト→ 交渉→ フォロー」と大雑把に切ったとしても、それがMECEである限り、次の3段目で分解するときに「リスト→ 送信……」といった粒度に落ち着くはずで、行き着くところは同じである。 こうやってプロセスで切ると、課題だと思っていたことが大した課題ではなかったことに気づくこともある。
例えば「声が小さいこと」が自分の課題だと思っていた営業マンが、営業プロセスを分解していった結果、「そういえば声以前の問題で、自分は事前準備が全然できてないよな」と気づくかもしれない。
または「美味しい料理を出しているのに客が増えない」と悩んでいる飲食店経営者が、飲食店利用者の行動プロセスを分解してみた結果、実は「料理の質」は課題のひとつにすぎず、それ以外にも「接客の質」や「価格設定」や「マーケティング」といったさまざまな課題(未達のギャップ)があることに気づくかもしれない。
他にも、当社のように、ウェブサービスを運営している企業であれば、「ユーザー数が増えない」と悩んでいるチームがあるのであれば、ユーザー数が増える経路を分解し、「SEO対策により検索順位上昇」「SNSでのシェア・拡散」「メディアやブログでの紹介」などに分解することで、課題を適切に考えることができるようになるだろう。
こうした気づきを得ることができるのがプロセスで分解する強みだ。
よって、もしあなたが課題抽出や解決案で悩んだとき、または部下が悩んでいるときは、「普段どういうプロセスでその仕事をやっているか?」という問いから始めるといい。
それが毎日やっていることであればその問いに答えられないわけがない。
だから簡単、かつ確実なのだ。
仮に自分の知らないことにチャレンジする場合や、どういったプロセスがあるのかわからない場合は、「切り方」にフォーカスして経験者に聞いたり、本を読んでみたりすればいい。
例えば管理職になりたてでチームマネジメントで重要なことがわからなければ、管理職の先輩を5人くらい捕まえて聞くことだ。すると、やれ「ゴール設定だ」「アメとムチだ」「日々の対話だ」とさまざまな意見が出てくるはずだが、それらはすべて因子であり、収斂する先はいくつかのパターンしかない。
ということは、それらは少なくとも「筋のいい仮説」であるといえる。
・切り方を学ぶ方法
└例えばある日、社長の思いつきで突如あなたが自社のコンテンツマーケティング担当に任命されたとする。コンテンツマーケティングが何なのかも知らない状態だ。そんなときは関連書をいくつか買ってくればいい。
たまたま手元にコンテンツマーケティングの本があるので目次の一部をここに抜粋する。
3―2コンテンツマーケティングを成功させる5つのステップ
1ゴールの設定
2ペルソナ設計
3コンテンツ設計
4エディトリアルカレンダーの作成と運用
5KPIの測定(『商品を売るな』宗像淳著、日経BP社より)
このように綺麗にプロセスごとによって分解されている。あとは他の著者の本も何冊か見て、漏れがないかだけを確かめればいいだろう。
基本的に実用書の章立てはプロセスごとに切ってあることが多い。テーマによってはシーン別であったり、ターゲットごとであったりもするが、それらも立派なMECEなのでそこから始める手もありだ。
ちなみに私は20 代に数え切れないほどのPDCAを回してきたが、例えば睡眠の質を改善しようとPDCAを回したときも真っ先に本屋にいって関連本を20 冊近く買ったものだ。そして目次を比較して筋のいい仮説が見えたら、その仮説にのっとった本のなかで一番わかりやすそうな本だけを読んだ。
こうすることで、1週間前まで睡眠の素人だった自分でも、ボトルネックの発見は簡単になる。
■ポイント5
簡単な課題は「質×量」で切る
・私は昔からどんな成果も「質× 量」で成り立つという考え方をしている。物理の初歩である「距離=速度× 時間」の式も、結局は「走る能力(質)」と「走った時間(量)」の積が、「走った距離(成果)」である。
よって「営業力」「生産性」「収入」「新規採用」といった大きなテーマも、「質× 量」で切ればMECEは成り立つ。
・例えば私は野村證券時代、プロセス以外の切り方として、新規開拓の成果を次のように因数分解して、末端に並ぶ因子をすべて課題としていた。 ただ、この切り方は何回も因数分解を経験していないとなかなか精度の高いものはできない。最初から「DMの返信率」「検品精度」「上司のフォロー」「インバウンドのヒット率」といった比較的小さいテーマを扱うのであれば「質× 量」で切ったほうがいち早く(慣れてくれば)ボトルネックが見つけやすいが、やはり比較的大きなテーマであれば最初はプロセスで切ったほうがいいだろう。 ただ、プロセスで切っても結局は「質× 量」に行き着くはずだ。そして「質」とはかならず「率」で考えることができる。
例えば先ほどのメールアプローチのプロセスも、もう1段分解すると次の図のように考えることができる。
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よくあるのはボトルネックと聞くと「やり方」や「スキル」といった「質」の分解ばかりをして、「量」については「時間をかければいいんだよね」といった次元で因数分解が終わりやすいことだ。
しかし、先ほどの私の因数分解の例のように「時間」は「タイムマネジメント」「モチベーション」「ツール」によって構成されていることに気づく。
つまり、接触件数を増やしたいなら、タイムマネジメント力をアップさせたり、モチベーション維持の工夫をしたり、積極的に同僚の手助けを得たり、各種ビジネス補助アプリを使ったりすることで、ようやく時間は増やせるということだ。 しかも、ここで挙げた「時間」を構成する因子はたいていどんな仕事にも当てはまる汎用的な課題である。個人レベルでも組織レベルでもそうだ。 だとすれば中長期で見たときに優先順位が高いのはこれらではないのか、という考え方もできる。
私の場合、昔から因数分解をするたびにこの「モチベーション」「タイムマネジメント」「ツール」の3つの因子に行き当たっていたので、いまの私は自他ともに認めるタイムマネジメントマニアで、モチベーション維持マニアで、ツールマニアである。
というよりもPDCAを回す習慣がある人はこうした汎用スキルは必然的に身につけている。 一例を挙げよう。
営業マン時代、私は新規開拓のツールのひとつとして潜在顧客に対して、名刺を添えた業界資料を一方的に郵送していた。広告は捨てられるが有益な情報は捨てられにくいとわかっていたからだ。
しかし、飛び込み営業で忙しかった私にはその余力がないときもあった。おそらく時効なので白状するが、そんなときは支店長に内緒で派遣スタッフさんにこっそり資料と名刺と郵送リストを渡して、代わりに送ってもらっていた。これはツール(外部補助)とタイムマネジメントを考え、行き着いた策である(派遣スタッフさんと日頃から仲良くしておく課題も含まれる)。
■とにかく文字化する
■マインドマップで振り返る
マインドマップのソフトで現在のおすすめはXMind 社のX Mind
・マインドマップの目的は基本的に課題の整理である。
達成したテーマを中心に置いて、それを構成する因子をひたすら書き出すことで、「やり忘れ」を防ぐのだ。当社でも何か目標を設定したら、マインドマップでひたすら分解するようにしている。
ただ、ある程度、要素が分解されていくと、そこに現状の反省点であったり、数値目標(KPI)であったり、解決案であったり、(次の実行フェーズで考える)アクションを書いたりとさまざまな種類の枝葉を書き足したくなるだろう。思いついたら書けばいい。マインドマップは因数分解のツールであると同時に、PDCAの参考にするためのメモである。
・気になったら分解してみる
あらゆることを一通り因数分解してみるまでは、できるだけマインドマップに書き出してみたほうがいい(明らかにそれ以上深掘っても意味がない場合はそこでやめる)。
中心に置くテーマも、それが大事なのかどうかわからなくても、ボンヤリしていたらとりあえず置いて軽く分解してみるくらいの積極性が欲しい。
最初のうちにこうした地道な思考トレーニングを積んでいけば、マインドマップを触っている時間も半年後には8割、1年後には5割くらいに減っていく。
⚫解決案とDOとTODOの違い
実行フェーズとは、組織でいえば解決案を業務フローに落とし込み、チームであれば担当者にアサインし、行動スケジュールも切って予定通りにやりきることまでを含む。こう書くと比較的理解しやすいだろう。
ただ、実際にこれから説明に入るにあたって紛らわしい用語があるので先に整理をしておく。 実行フェーズで最初に行うことは、前回の計画フェーズから受け継いだ解決案(課題解決のための方向性)を実現するために必要なアクションを考えることだ。
このアクションを、本書では「DO」と表現する。
例えば、「会社の数字に強くなる」という解決案をDOにすると「簿記の本を読む」といったものが出てくる。
しかし、DOのままでは実際の行動に移しづらい。
そこで、DOをもう一段具体的なタスクレベルに分解し、スケジュール設定までする。
こうやってスケジュール化されたものを「TODO」と呼ぶ。「今日中に駅前の本屋で簿記の本を3冊買う」「1週間ですべて読む」といったレベルの話になる。
つまり、解決案を分解したものがDOで、DOを分解したものがTODO。分解するたびに数は増えていく。
わざわざアクションをDOとTODOで2階層にしている理由は、1階層だとDOの状態で仕事を抱えっぱなしになることが多いからだ。
簡単なDOや緊急性の高いDOならさすがにすぐTODO化して終わらせるだろうが、手間のかかりそうなDOや緊急度の低いDOほど「わかってはいるが着手しづらい」状態になりやすい。強制的に2階層で考える習慣をつけることで「DOまで考えたけど、まだTODO化していないな」と気づくきっかけとなる。
各ステップの解説に行く前に、PDCAサイクルがこのフェーズで頓挫してしまうケースを紹介しよう。
実行できないケース1 計画自体が失敗している
ひとつ目が、計画自体が失敗しているときだ。 計画が失敗する可能性としては次の3つが考えられる。
・計画がない=「まあなんとかなるんじゃないですか」
・計画が粗い=「課題はざっくり見えていますが、解決案はあまり考えていません」
・計画が無茶=「課題も解決案もわかっています。絶対に無理だと思いますけど」
1番目の「計画がない」ケースはさまざまな職場で、時々起こることだ。
例えば社長の思いつきで突然、新規事業が立ち上がるようなときだ。役員会レベルでは自分たちが実行役ではないことをいいことに、ノープランのままあるチームに丸投げをする。言ってみればリレーで第2走者にバトンを渡し忘れている状態である。第2走者のチームリーダーはそのままでは走れないのでバトンを取りにスタートライン(計画フェーズ)に戻ろうとするが、社長の肝入りプロジェクトなので毎日のように役員が顔を出し、「まだ動いていないのか!」と怒り出す。しょうがないので手探りのまま動き出すも、課題すら見えていないので迷走を続けることになる。 または仮に役員会から計画が降ってきた場合でも、どう考えても人手が足りないのに、「それをどうにかするのが君の仕事だろ」と突き放されたら打つ手がなくなる。これが3番目の「計画が無茶」なケースである。
個人のPDCAでは2番目の「計画が粗い」ことが非常に多い。
それを象徴するのが読書だ。
ビジネス書からたくさんの刺激を受けて、「やっぱり自分ってこのへんが課題なんだよな」とせっかく気づいても、それを具体的な解決案に落とし込まないから9割の人は読んで終わりになってしまう。
実行できないケース2 タスクレベルまで落とし込まれていない
計画はうまくいっても、それを組織の業務フローや個人のタスク、さらに具体的な行動スケジュールに落とし込むまで細分化していないので、結局やるべきことが不明瞭なまま時間だけが過ぎていくケースだ。
あと一歩なのだが、その一歩が大きい。
世間でいう「計画倒れ」の正体はこれである。 実はこのケース、積極的に権限移譲をする管理職が率いるチームでよく起きる。実際に職場で起きやすいのはこういった会話だ。上司「本件で注意すべき点はこんなところだ。これ、お前一人でやってみるか?」部下「あ、ありがとうございます!課題も見えているので心配ありません!」(1週間後)上司「そういえばあれ、どうなった?」部下「実は、若干、方法で悩んでいまして……」 はたから見ると部下を信用している「いい上司と部下」の関係に見える。でもこの上司も部下も勘違いしているのは「計画ができていればすぐに行動に移せる」と思い込んでいることだ。 正直に言えば、私もかつて部下に同じことをしたことがある。私自身がPDCAの鬼だったので「これくらいなら部下も考えられるだろう」とタカをくくってしまったからだ。 権限移譲は部下のポテンシャルを引き出したり、短期的にはやる気を生み出したりするメリットもあるが、見極めを誤ると部下が苦しみ続け、逆に著しいモチベーションの低下にもつながりうる。
実行速度を上げたいのであれば上司は部下に対して「これをやれ」で終わらせずに、部下自身で「どうやってやればいいのか」を判断できる能力があるか正しく見極め、そのレベルに合わせてPDCAが軌道に乗るまで丁寧にフォローする必要がある。
とくに曲者なのが優先度の高い解決案である。 優先度が高いものをいままでやってこなかったのにはそれなりの理由がある。実は想像以上に複雑な仕事で、前任者はそれを知って放置していたことかもしれない。その場合はやはり上司としても行動レベルのブレイクダウンまで手助けする必要がある。
ただし、逆にマイクロマネジメントになりすぎて、手取り足取り細かい指示を与えてしまうと部下の性格次第では著しくモチベーションが下がり、必ず成果に悪影響を及ぼすので、その点だけは注意したい。
実行できないケース3 失敗することが恐い
いざ計画を立てても「情報が足りない」「思考の整理がついていない」「リスクが見えづらい」などの理由から仮説に自信が持てず、行動に気後れする人は大勢いる。
中止にする決断を下すならまだしも、「どうしようかな。やっぱりやめようかな。でもなあ……」といつまでも煮え切らない態度をとるのだ。 当社で浸透している文化のひとつとして「行動ファースト」がある。「悩んでいるならやってみよう。やることで課題が見える」という発想だ。 この発想のベースは仮説思考である。
正解などそもそもないのだから、ある程度仮説を立てたらやるしかない。いくら調べてもわからないものはわからないし、不安を解消するための情報収集は往々にして莫大な時間を消費し、大した成果は得られない。
だとしたら最初から失敗しても擦り傷程度で終わる範囲で動けばいいというのが「行動ファースト」である。部下がチャレンジに失敗しても「これで仮説の精度が上がるね」と声をかける。「仮説は修正するためにある」と思っているからだ。 身近な例でいえば、私はプレゼン資料を作るときはいきなり目次から作る。
浅い知識であっても仮説は立てられる。目次を作ったらそれを肉づけするために本を買って必要な箇所をピンポイントで読むといったように知識やデータを集めてくる。こうした肉づけ作業をしている過程で仮説も随時微修正していく(新しいことを学ぶので付け足すことが多くなる)。
心配性な人が同じ資料を作るとしたら、まずはひたすら情報集めに走るだろう。
本を何冊も読み、ネットで調べ、人に聞く。確かにそこまでやれば仮説の精度は上がるだろうし、不安が解消されることもある。
ただ、すべての判断で石橋を叩いていてはスピードは一向に上がらない。