No3 こちら側から見たマコマレッツ _ STUDIO75 覚書
制作noteとして始めた全3回の最終章、maco maretsのアルバム3枚分をプロデュース側から眺める。
maco marets 最新 3rd ALBUM「CIRCLES」編です。
2ndアルバム『kinō』が2018年11月。
その頃から既に次回作について、構想、リリース時期などをマコマレッツから聞いていた。
2019年の間に3rdアルバムをリリースしたいと。
逆算して夏の間にレコーディング、ミックス作業を終わらせる。
その為には遅くても3月中にはビートをマコマレッツに送らなければならない。
また大量のビートを。
でも、まあ、「予定は未定」。4月に入って慌ててビートを送りはじめた。
この頃になると、2ndアルバム『kinō』の評判も1stアルバム以上に良く
「Woodlands Circle」というレーベルであったり、ほとんどの曲でMVを制作したり、と。様々な人との関わりの中で「自分」がコントロールしている事が、マコマレッツの「自信」に繋がっているように見えた。
実際ライヴのオファー、客演のオファーが増え、彼自身、日々忙しくしていた。
4月、5月数回に分けてビートを送った。合計で99個。どのビートをマコマレッツが「ピンッ」くるのか、好みだったり、気分だったり、それはその時にしかわからないもの。だからなんでもかんでも、多めにビートは送るようにしている。
もちろん、その中でも「きっと選ぶにちがいない」と思っていたビートはいくつかある。
今回は2曲。正解。
正解か不正解かというよりも、彼が選んだってことを正解と表しているだけだけど。だからと言って、ある意味何が正解かはわからない。
6月に入って、徐々にマコマレッツから選んだビートの報告や、ちょっとしたリクエスト、自宅でボーカルを録音したデモが送られてくるようになる。
なかには1st、2nd用に送ったビートから選んでいるものもあった。
6月末、マコマレッツから曲タイトル、曲順が書かれたメモが送られてきた。若干変更はあるものの、アルバムは、ほぼその形で完成している。
そしてレコーディング。
マコマレッツのボーカルレコーディングは早い。
一日で3曲、少なくても2曲。だから4日もあればすべて終わる。後日、若干の録り直しをすることもあるけれど、それを入れても6日間で終わる。
7月にミヤタさんのギターレコーディングをする。2ndの時もそうだったが、ほとんどの場合はミヤタさん自身で録音したデータが送られてくる。でも、今回はアコギのレコーディングがあったのでそれはスタジオで行った。
ミックスは、録音と並行して進める。
今までの2枚のアルバムで、マコマレッツの「声」を処理する事に関してのノウハウも増えてきたので格段に早くなっていた。
ただ以前よりも「重ね」る量は増えていたので、その点で結果的には掛かる実時間は相殺されていく。
8月中旬にはほとんどの作業が終わった。
アルバムのタイトル決定は二転三転していたようだ。
最終的に決まった『Circles』。
マコマレッツはSmall Circle of Friendsの3枚目のアルバム『Circle』と同じだと気にしていたが....。
「ソレデモソノ名前ニシタイノナラバ、ソレハ、ゴ自由ニドウゾ」、というのがコチラの正直な気持ちだ。
9月になるとリリースまでの「進行」が作られ、作業はマスタリングに入る。この時期に多少ボーカルのリテイクが行われた。
そして完成。
2nd『KINŌ』の時に比べると、随分スムーズに出来上がったと思う。
3rd『Circles』
1曲ずつ、解説。
4AM
これは6月の曲順案の表に、イントロとしてこの元ビートが記されていた。なのでイチ(最初)から作る事はなかった。だけど元のビートがシンプルなものだったから、だいぶポストプロダクションしている。塗り絵に色をのせていき、最終的に全く別の物語を作りあげるような感覚だ。
エンディングのロングトーンは次の曲に繋がるようにこの音程にしている。
Wash
これは古いフォルダに入っていたビート。
SCOF _ STUDIO75のBEAT CD / Bandcampシリーズ『Coffee Shop Card』の「cafe nei」。
Small Circle of Friendsが毎年ライブをしている美しい場所、福岡・大牟田のカフェ Cafe Nei 。とても良い場所です。
途中の「ドゥイット!ドゥイット!ドゥイット!」はマスタリング作業の時にリテイクしている。
Standard
ビートは6月末作って、マコマレッツに聴かせてたらやることが決まった曲。
だから一番最後に出来た曲。
シンプルなループなのだけど、作業進めていくうえで、何か足りないな、と思ったら足すし、何も必要ない、と思ったらそのままだ。この曲の場合、後者。抜き差しのみで展開していく。
マコマレッツは1バース目でわかりやすく3連符で言葉をのせていた。
Kamakura
ミヤタさんのアコースティックギターをスタジオで録音した曲。そのギター、当初はエンディングのみの登場はずだった。結果、途中のブレイクダウン部分も弾いてもらった。
最初はもっとシンプルな音の構成だったが、ポストプロダクションをかなり行った。シンプルにはシンプルの良さがある。だけどそこに曲の推進力が足りない時には、何かしら必要な気がしてくる。
特にミックスダウン作業中に。
録音中、曲のテーマ、これ近いな、と思いながら作業していた。
Small Circle of Friends 7th Album「一日中」収録。
ただこっちは「雨が降らなければ誘ってこない彼女」の話だけどね。
Blu(CIFI pt.2)
このビートは、前作2nd『KINŌ』収録の「Click It, Freeze It」の続編として最初から作っていた。仮称も『TWO』だった。マコマレッツはコレ選ぶだろな、と予想していた。そしてマコマレッツは選んだ。こういう予想は当たるとそれはそれでうれしいしおもしろい。
当たらなくても気にはしないけど。
マコマレッツはこういうちょっとシュールでナンセンスな感覚が似合う。とワタシは思っている。
Prophets
これもマコマレッツは選ぶだろう、と予想していたビート。
ただ当初、彼のアイディアとして、ある人をフィーチャリングしたいと思っていたようだ。
結局それが決まらず、あらためてマコマレッツひとりでデモを作っていた。彼が持っているボーカルエフェクターを使って、様々なアイディアの断片が散りばめられていて、それを聴いた時は新しいマコマレッツの要素があって、面白いと思った。ただマコマレッツ自身それらをまとめきれず、しかもポップ過ぎやしないかと危惧していたようで、お蔵入りしかけた。
主なボーカルはスタジオで録音したが、エフェクトが掛かった声やギミックは、デモのデータをもらった。そしてそれをエディットし、曲構成もミックスダウンしながら考えた。
構成も含めて最初からカッチリと作っていくのも良いけど、こういう「どうにでもなりそう」な曲は重要だと思う。
D.O.L.O.R.
2017年、『Summerluck』のビートと同時期に送っていた中からマコマレッツは選んだ。果たして、その頃からいつか演ろうとアイディアを温めていたのか、それとも今回あらためて聴いてみたら良かったのか。…。
早い段階からミヤタさんのギターソロを入れたい、という構想がマコマレッツにはあったよう。そして「これをアルバムのリード曲として考えている。」と。
それを聞いた時は正直「ギターソロ?」、「リード曲にしては地味じゃないか?」と、いろいろ思うところはあったけど、それはそれでそのまま飲み込み作業を続けた。
結果オーライ、ですね。
ウエダマサキさんの撮影話、面白かった。
Bad Act David
不思議なボーカルのメロディーだ。コード的には外れているようで、合っているようにも聴こえ。合っていないようにも聴こえる。最初はその事に戸惑って、ちょっと違う方向へミックスを進める。
「違います」。
途中でマコマレッツから言われました。
そうか。
そうですよね。
A Day in Lisbon
毎回レコーディングのたびに、たくさんのビートを送る。その中にも「これ選んだら、ちょっと厄介かも」と思うモノもあって、「ミックスで困りそう」そんな理由で、前もって感じ察知している。
このビートもその一つ。
言葉で伝えるのは難しいけど、ワタシにとって苦手な周波数が多く含まれているビート。
この曲はマコマレッツのリクエストで、元のビートにいくつか音を加えていった。結果的にその要素が曲のイメージを司っている。
犬…。
Like Water
ヒトによっては、言葉を乗せるのに、得意なBPM、苦手なBPM、があると、たぶん思う。マコマレッツにはそれが無いようだ。
どんなスピードでも、どんなリズムでも、自分が気に入れば、そこに言葉を乗せる。それがマコマレッツの大きな魅力だと思います。
ともすればクリシェに陥りそうなジャンルだけれど、いろんな音、いろんなカタチ、いろんな場所で、いつでも「マコマレッツ」を表現して欲しいです。
ちなみにこの曲はBPM63。
以上、3rdアルバム『Circles』の解説でした。
マコマレッツ。
三回に分けて、アルバム3枚分、その前後6年間を振り返り、ワタシ自身をも反芻するよな解説。
強く感じたのは
「変わっていないようで、やっぱりどんどん変わっていたんだ。」
ということです。
そして今はまだ「はじまり」の時期であり
成熟に向けて更に変化していくのを見ていたいです。
おわり
maco maretsの記録「こちら側から見たマコマレッツ」いかがだったでしょうか?前回、前々回にも「これは別の機会に」と記述したことも、いつかココ「note」でお話しいたします。
そして、これまでもSmall Circle of Friends、studio75、75Clothesとして携わった制作などアズマ仕事やサツキ仕事に関わらず、少しづつ『制作note』として書いていこうと思っています。
では、次回のnoteでまた。
Small Circle of Friends
Studio75
アズマリキ