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世界を”うごかす”システミックデザインと、わたしたち

”システミックデザインは、世界を変えられる”のだろうか。

この記事(というより、記事の一番最後に添付されている最終報告資料と、プロジェクトメンバー4名それぞれの感想)は、上述の問いに対して、実際のリサーチ・プロジェクトの実施を通してそれぞれが答えを出そうとしたことの顛末である。
”システミックデザインとは何で、そこから何が得られるのか、実際にそれをやっている人はどんなことを考えているのか”ということを知りたい方に、ぜひお読みいただきたい。(あくまでも、一例であるということを前提におきつつ)

今回この記事を書いている私(わん)は、他のYuka, Ayane そしてShieriの3名とともに、千葉県銚子市を舞台にシステミックデザインのフレームワーク、思考を活用したリサーチを実施した。

千葉県銚子市は、その沿岸部が風力発電の適地ということもあり、全国に先駆けて大型の洋上風力発電所が建設・運用されている街である。これを背景として銚子市では街全体を上げて脱炭素政策の実現を掲げており、市のHPでは脱炭素化された銚子市の未来像が輝かしく描かれている。


銚子市ゼロカーボンビジョン 2023年3月発行 より

同時に、銚子市は水揚げ日本一の銚子港の所在地としても知られ、産業構造としても漁業・食品加工業が大きな割合を占める。銚子市自体が脱炭素化するためには、これら食品関連の産業全体が電化を実現すること、それ以前に漁業における担い手不足を解消・産業振興を実施すること、の2つによって、既存の産業を守りつつ、脱炭素化によって市域全体を更新していく必要がある。

私たちはこの”既存の産業の振興”と”脱炭素化への大きな(特に外部からの)圧力”という二つの力学に置かれている銚子市に着目し、2023年8月より4ヶ月をかけて調査を行なった。
表題にもある通り、調査の主軸となるのは”システミックデザイン”という手法で、「システミックデザインの実践」という書籍のフレームワーク・流れに従いながら(時に創意工夫を凝らしながら)、デスクトップリサーチ、ヒアリング、フィールドワークを通して調査を行なった。

”システミックデザイン”は、

  • 時間的・空間的広がりが大きく

    • つまり、多様なアクター、多層的なネットワーク、数十年単位の変化 といった不確実性の大きなフォーカス

  • 相互に作用する構造が複雑

    • 単純な因果関係ではなく、構造的なしがらみが変化に対して大きな抵抗力を示したり

    • 一つの変化が予想だにしない結果をもたらす

ような問題に対して、

  • 複数の領域(産業界、官/民、経済/文化/自然といった異なるプレイヤーがそれぞれに抱える課題)の因果関係を越境しながら明らかにし

  • 関係するアクターが現状の有様をあらゆる視座から眺め、理解し

  • 自分たちはどのような未来を”望ましい”ものとするのか、を描き

  • 30年後、のような長いスパンで起こしたいインパクトに対してレバレッジを効かせるための3-5年単位のプロジェクトを仕込む

ようなプロセスだと僕(わん)は認識している。

リサーチ資料をチラ見せ

いま、”システミックデザイン”には、大きな期待がかけられている。それは端的に、気候変動や人工集中/減少、食料問題など”解決しなければ、現在の豊かな生活を維持できない”ような大きく解決に時間のかかる問題に対して、”複雑な問題の全体像を理解”し、”起こすべき変化=レバレッジをかけて”解決していくことが求められており、システミックデザインという手法がそれに呼応するものであるからだ。

リサーチのメンバーの4名は全員が20代前半で、広義の”デザイン”という領域に何かしら関わってきた。私たちは”システミックデザイン”が、私たちが今後60-80年生きていくであろう世界の問題を解決し、住みよく持続可能な世界を実現できる、という期待を持っており、そのような期待から”自分たちで一度この手法を試し、実践してみよう”ということで銚子市をリサーチするこのプロジェクトは始まった。

メンバーはこの4名

4ヶ月のプロジェクトの中で、私たちはフレームワークや進め方を学び、現実に触れる中でその用い方に創意工夫を行い、態度を変容させる必要性を感じながら、”システミックデザインは世界をうごかせるか”ということを考えていった。

こちらの1つ1つの記事から、4人それぞれの”プロジェクトを終えての感想”をお読みいただくことができる。実際のプロジェクト報告資料をお読みいただきながら、それぞれが”システミックデザインは世界をうごかせるか”という問いに対して、どのような考えを抱いたのか、4ヶ月の葛藤の(ひとまずの)結論を、お読みいただけたら嬉しい。

リサーチプロジェクト 最終報告資料はこちら
銚子の脱炭素プロセスをシステミックデザインを活用して(勝手に)リサーチするプロジェクト

わん  の感想はこちら
- システミックデザイン(あるいはシステム思考)の力を最大限引き出すために必要なこと
- デザイナーはシステムの内側にいるのか、外側にいるのか
- フレームワークの手綱を握る
- システミックデザインは”かっこいい”ものではない

Yuka の感想はこちら
- フレームワークを使う
- 現実と未来と具体と抽象と。
- システムの内と外

Ayaneの感想はこちら
- システミックデザインの印象の変化
- システミックデザインの向き不向きについて
- 脱炭素政策×システミックデザイン?

Shieri の感想はこちら
- システム全体を見るための俯瞰的な視点
- システム変革に繋げるためのシステミックデザイン


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