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大学教員の実態:昇任人事編

大学の昇任とは

大学教員における昇任とは,すなわち職位(助教,講師,准教授,教授など)が上がることを指す。
一般的には,助教→講師→准教授→教授の順で職位は高くなる。かつては「助手」というポストもあったが,最近ではこのポストはほとんど見なくなった。あったとしても講義を担当しておらず事務的な作業をもっぱらの職務としている場合もあるようだ。
もちろん,助教から教授,ということもありえるのだが,大学の昇任とは一体どんなシステムになっているのだろうか?

結果から言うと,大学によって全然違っている。大学によって過去数年間(一般的には3年間から5年間,あるいは10年間)の研究成果数や学内の貢献度によって決まることが多い。

研究成果と言っても,国内外の査読付き論文の数や書籍の数,博士号の有無を細かくチェックする場合もあれば,主な研究業績を自己申告するタイプのものもある。公募のときのように研究業績調書を提出させられることもあるし,そうでない場合もある。
学内の貢献度とは委員会やらその他の事務的な活動にどの程度寄与しているのかを見るものであるが,これは本人よりも大学のほうが正確に把握しているんじゃないかと思ってしまうのは私だけだろうか。

昇任のプロセスもまた大学によって様々であり,加えて謎に包まれている部分が多く,私も多く語れるわけではない。ただ,少しは知っていることもある。昇任には立候補制と推薦制があり,決定のプロセスは闇に包まれていることが多い(多数決を取るというところもある)。
ポストには限りがあるため,空きが出ないと当然そのポストには上がれない。公募と異なる点は,大学としては教授が何名,准教授が何名,講師が何名,などの決まりを設けているところもあり,そこには専門性は関係ない。だから,◯◯学専門の教授が退職し空きが出た場合,その下にいる准教授や講師が教授に上がって,新規採用の教員が講師や助教などで採用される,というパターンもあるということだ。

前述のように,昇任プロセスは内部の人にも謎に包まれている場合もあり,明らかに何らかの操作が行われているような人事や業績0の人が教授になったりすることも時々あり,揉める原因になることもある。

一方,前の大学では准教授だったけど,次の大学に移籍して教授になった,というのは厳密には昇任とは言わない。

学長や学部長,学科長などの役職もある意味職位ではあるかもしれないが,一般的には教授職(つまり,教授の職位の人がつく役職)である。

昇任するとなんかいいことあるの?

職位によって研究費や出張旅費が異なっている場合がある。もちろん,職位が高いほうが研究費や出張旅費が優遇される傾向にある。また,給料も職位によって異なっており,こちらももちろん職位が高いほうが良い給料をもらえる。
また,「教授」という職位は称号のように捉えられる傾向もあるので,名誉ある肩書のように見てもらえるというメリットもある。ちなみに,名誉教授というのは,在職期間中に大学に貢献した教員が退職後にもらうもので,こちらはそれこそ称号のようなもので給料などは出ていない(非常勤で講義などをしていれば別だが)。もちろん,名誉教授に研究室も研究費もない。

このようにみると,昇任するとなんだかいいことばかりのような気がするけれどもそれは本当だろうか。

個人的には准教授で一生を終えたい気持ちでいっぱいである。なぜなら,教授になったところで給料がべらぼうに上がるわけでもなく,研究費もうちの場合は変わらない。一方で,教授にしかできない仕事というのがあり(例えば上記のような役職など)仕事は大幅に増えてしまう。場合によっては,役職と下の教員の間に挟まれるような気苦労もあり,もはや罰ゲームとしか思えないからだ(実際にそのように言っている教授もいる)。

特任,特定,客員◯◯

話は変わって,職位の前に,「特任」や「特定」,「客員」とついている場合がある。これらはそれぞれ大学によって位置付けが異なっているが,大体は終身雇用ではない身分であることを指すことが多い。つまり,特定期間だけ雇用関係にある場合や科研費などの期限付きの予算から雇用されている場合に「特任」や「特定」とつくことがある。また,退職教員が再雇用された場合にも「特任」などがつくこともある。だから,「特任(特定)教授」とただの「教授」は給与体系が異なっている場合が多い。もちろん,「ただの教授」のほうが優遇されている。特任とかついている方がなんかかっこいいのでそっちのほうがすごそうな気がするが,そういうわけではないのである。
では,「客員」はなんぞやというと,これは著名人や優れた業績を持つ人が大学に招聘されて非常勤講師のような形で講義を担当する場合に「客員」と呼ばれることがある。客員教員はその名の通り,「お客様」なので大学の運営に関わることはなく,教授会やその他の職務に携わることもない。もちろん研究室なども用意されていない(非常勤控室は使えると思う)。非常勤講師とほぼ同じ扱いである(給料は違うかもしれない)。また,「客員研究員」などというものもあるが,これは教員ではなく,お客様の立場の研究員,ということであり,よその研究施設を使わせてもらってデータをとったり共同して研究を進めていく立場の人を指す。

まとめ

今回は昇任,というか職位について思いつくまま書いてみた。
私は現在准教授だが,「教授になりたい人なんてテレビの中だけでしょ」,なんて思っていた。しかし実はそうでもないようだ。大学の教員の中にも上昇志向が非常に強い人もいる。そういう人は「教授」の職位をゲットするために精力的に色々な仕事を引き受けているように思う。大学教授になったら「上がり」と言っている人もいる。私からすると面倒な仕事が増えるだけなので,それを進んでやりたがるなんて信じられないと思うのだが,みんながみんなそう思っていると大学が回らないので,世の中うまくできているものだと思ってしまう。

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