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大学教員の実態:オープンキャンパス編


オープンキャンパスってなんだろう

大学の夏休みと言えば,オープンキャンパスだ。
オープンキャンパスは主に高校生とその保護者を対象とした大学の広報活動の一つだ。
基本的には高校生や保護者が大学に来て進学希望先の学部や学科の説明や取得できる資格やカリキュラムを聞いたり,入試対策に必要な相談に応じてもらったり,模擬授業を受けたりすることができる。1日だけの開催の場合もあれば複数日にわたって開催されることもある。ときには,複数の大学が集まるようなイベントに参加することもある。

オープンキャンパスにも大学の特色がある

大学にとってオープンキャンパスは大きな宣伝効果のあるものなので,大学側の力の入れようはなかなかだ。大学によっては出店が出ていたり,サークルの出し物などがあったりと,ちょっとした学園祭のような状態になっているところもあるらしい。当然,教員も駆り出される。駆り出されて何をするのかというと,上に書いているような内容全般である。

オープンキャンパスに駆り出される教員数は大学によって全く異なる。私がかつて勤めていた大学では,毎回駆り出されていたし,毎年のように模擬講義を行っていた。
移籍した先や現在の大学でも模擬講義を担当したことはあるが,毎年ではなかったし,駆り出されなかったときもある。
また,オープンキャンパスも仕事の一つであるが,大体が土日に行われる。そのため,教員の多くは土日返上で働くことになる。では,手当があるのかというと,これも大学によってかなり異なっているようだ。私がかつて勤めていた私立大学では手当のようなものは一切でなかったし,それが普通だと思っていた。しかし,移籍した後にはきちんと手当が出たので驚いてしまった。

私が今所属している大学は年に1回しかオープンキャンパスはないが,かつて勤めていた私立大学などは2,3ヶ月に1回ぐらいのペースでオープンキャンパスをやっていたような気がする。だから,実はオープンキャンパスが夏休みに限って行われるというわけでもない。

オープンキャンパスの表側

来客の多くはその大学に進学することを希望している高校生である。最近ではオープンキャンパスに行くことを宿題として課しているところもあるようだ。いずれにしても,我々はオープンキャンパスでお客様達の心をがっちり掴まなければならない。つまり,優しく丁寧に,わかりやすく,である。学内の清掃や空調管理も怠ってはいけない。個別相談会や模擬授業で丁寧だった,優しかった,分かりやすかったと思ってもらえれば進学先の候補として残る可能性が高まるかもしれない。一方で,事前の大学案内などの資料では希望を抱くような内容だけれども,大学環境や人の対応がよろしくないと,第2候補程度であればすぐにランク外に落ちてしまう可能性もある。なので,教員としてもできるだけ優しく丁寧に,わかりやすくすることを心がけている人が多い。

オープンキャンパスの裏側

ところが,これは大学の仮の姿である。仮の姿というか,よそ行きの姿である。大学の雰囲気や講義の様子などはなんとなくつかめるけれども,あくまでもそれは営業用である。
例えば,オープンキャンパス用の模擬講義は通常講義よりも短いことが多い。また,高校生に受けそうな内容を別途作って模擬講義を行うことが多い。少なくとも私はそうだ。そのため,オープンキャンパスでは面白かったのに,入学してからの講義は面白くない,なんてこともなくはない。
また,オープンキャンパスでは在学生のプレゼンなどが企画されていることもあるが,在学生も普通の大学生である。オープンキャンパスでは(バイト代をもらって)にこやかに頑張ってくれるが,実際に入学した後はそのようなにこやかな学生ばかりではない。
教室に空調が効かなかったり,AV機器に不具合があったり,校舎にゴミが落ちている,ということだってある。しかし,オープンキャンパスではそのような不具合がないように,あらかじめ細やかなチェックが行われている。

つまり,大学本来の姿を見たければ,オープンキャンパスではなく通常期間中の大学に行って講義や進路の説明を聞く方が良い。通常期間中でも教員が認めれば講義を聞くことができることもある(もちろん,大学事務局を通す必要はある)。実際に,学校行事で高校生が授業を聴講しにくることもある。また,進路相談についても,通常期間中でも受け付けてくれるところが多い。ただし,事前連絡無しの飛び込みで行くと断られたり待たされたりすることもあるかもしれない。

結局行ったほうがいいのか?

この記事を高校生が読んでいるかどうかは分からなけれども,結論から言うと,行ったほうがいい。紙媒体の大学案内やHPはオープンキャンパスよりもさらに上手く作られている。オープンキャンパスもまたおめかしをしているけれども,実物を見て体験することで,何となく雰囲気を掴むことはできる。
ただし,オープンキャンパスで見聞きし体験したことが入学後も続くとは限らない。「今見ているものはよそ行きの姿」ということを頭の片隅に置きながら参加するぐらいの気持ちで良いのではないかと思う。

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