要約:なぜわれわれは死ぬのか 第9章

細胞内には数十から数千ものミトコンドリアがあり、これらは常に融合と分裂を繰り返している。細胞が分裂するときにミトコンドリアも分裂しますが、オートファジーと呼ばれるプロセスによって欠陥のある部分が分解されることもある。

ミトコンドリアは細胞内でフリーラジカルと呼ばれる化学的に反応性の高い分子種が大量に生成される場所だ。これらのフリーラジカルは細胞内の他の構成要素を傷つけ、細胞の機能低下や老化を促進する。特にミトコンドリアのDNAが傷つくと、次世代のミトコンドリアにも影響を与え、酸素の還元効率が低下して活性種が増加し、細胞全体に悪影響を与える。

ミトコンドリア・フリーラジカル説は、最初はあまり支持されなかったが、後に多くの観察結果から支持されるようになった。加齢と共にフリーラジカルの産生が増え、その除去酵素の活性が低下することが観察され、これが老化の一因である可能性が考えられた。抗酸化物質の摂取が万能薬として広く認知されたが、実際の臨床試験ではその効果が期待外れであることが示された。さらに、フリーラジカルの増加が寿命を延ばすこともある。実際、フリーラジカルのレベルが高い線虫やハダカデバネズミは、通常よりも長生きすることが観察されている。ミトコンドリアの損傷は老化を促進するが、その原因は複雑で、ミトコンドリアDNAの突然変異や欠陥が一因であることが示唆されている。

ミトコンドリアは単なるエネルギー生産所に留まらず、細胞の代謝に深く関わっている。加齢に伴うミトコンドリアの欠陥は、細胞の衰えを助長し、老化を促進する。幹細胞の機能不全は、組織再生の妨げとともに細胞老化や慢性炎症を引き起こすことがある。

老化の特徴のひとつに慢性的な低レベルの炎症があります。これは、ミトコンドリアが古代のバクテリアに由来するため、古く欠陥のあるミトコンドリアが破裂しやすく、DNAや他の分子を細胞質に漏出させ、細胞が侵入したと誤解されることから引き起こされる。特に神経細胞はミトコンドリアが老化しやすく、認知機能の低下の原因となる可能性がある。老化した神経細胞は、欠陥のある部分を取り除くリサイクル経路を使いにくくなり、加齢とともに認知症のリスクが高まる。

このような理由から、ミトコンドリアの健康状態が重要だ。細胞はカロリー制限やオートファジーを通じて欠陥のあるミトコンドリアを取り除こうとする。さらに、運動もミトコンドリアの機能を促進し、健康なミトコンドリアの生成を促進する。

ミトコンドリアの老化は避けられないものの、生殖細胞では淘汰やDNA修復能力の高さによって健康なミトコンドリアが保たれる。しかし、加齢によって生殖能力が低下することでミトコンドリアの老化が促進されることもある。

これらの機構は緊密に関連しており、細胞内のさまざまな要素が調和して働くことが重要である。細胞は単独では存在せず、組織や臓器として連携して機能するため、個々の細胞の老化が老化の病的状態を引き起こす原因となる。

いいなと思ったら応援しよう!