人間の影響が豹とハイエナの力関係に変化をもたらす?タンザニアでの研究結果
これまで、アフリカのヒョウは人間活動を避ける傾向がある一方、ブチハイエナは人間の影響を受けた地域にも適応し都市部のゴミ捨て場周辺でも生息が確認されています。近年の研究により、人間活動の影響が大きい地域では肉食動物の活動パターンが時間的・空間的に近接し、ブチハイエナによるヒョウへの餌の横取り(盗み寄生)が増加する可能性が指摘されました。
ウズングワ山脈はアフリカ大陸で最も生物多様性の高い地域の一つで、ヒョウとブチハイエナが生息しています。研究チームはカメラトラップデータと最新の空間時間多種占有モデルを用いて、オスのヒョウ、メスのヒョウ、そしてブチハイエナの空間的共存、活動パターンの変化、一時的な場所の回避を通して、それぞれの種の優位性を評価しました。その結果、オスのヒョウとブチハイエナの共存は保護区の境界線(人間活動地域への近さ)と獲物の量によって異なることが明らかになりました。
具体的には、人間の活動地域に近い場所ではオスのヒョウとブチハイエナの共存率が低下する傾向が見られました。これは、ブチハイエナが人間の活動地域に近い場所を利用する場合、獲物が少ない場所ではヒョウとの競争に勝ちやすくなることを示しています。
一方、メスのヒョウはブチハイエナに対して異なる反応を示しました。メスのヒョウはブチハイエナの存在下では活動パターンを日中に移行させ、ブチハイエナが最近利用した場所は一時的に避ける傾向が見られました。これは、メスのヒョウがブチハイエナとの衝突(盗み寄生など)を避けるために、より日中に活動したりブチハイエナが利用している可能性のある場所を一時的に避けるなど、行動を変化させているということのようです。
オスのヒョウはブチハイエナよりも優勢であるように見えますが、人間の活動地域に近い場所ではブチハイエナと共存する可能性が低いことがわかりました。これらの結果は、ブチハイエナが人間の活動地域に近い場所を利用することで、獲物が豊富な場所ではオスのヒョウとの競争を有利に進めることができる可能性を意味しています。
さらに、オスのヒョウの中でもまだ大人の体格になっていない若いオスはブチハイエナが存在しない場合にのみ、より日中に活動するようになることがわかりました。これは、若いオスのヒョウはブチハイエナから身を守るだけの力がなく、潜在的な衝突を避けるために活動パターンを変えているということかもしれません。
引用元
タイトル:Sex and size matter: Intricate dominance relationships in an East African large carnivore guild
URL:https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecs2.4913
著者:Rasmus Worsøe Havmøller, Arielle W. Parsons, Linnea Worsøe Havmøller, Roland Kays
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