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ノウサギの食性とは?
第1章:総説
ノウサギ(hare)はウサギ科(Leporidae)に属する動物で、ウサギ(rabbit)とは近縁ですが、別のグループに分類されます。最大の特徴は、生まれたときから被毛があり目を開いている点や、後脚が長く高速走行に適している点などです。さらに、冬季に体毛の色を変化させる種もあり、雪原でも捕食者から身を守る能力を備えています。
ノウサギはヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米など世界各地の多様な地域に生息しており、草原、森林の端、農地、ツンドラなど、環境に合わせて柔軟に適応しています。生態系では、捕食者にとっての重要な獲物であると同時に、植生のコントロールにも影響を与える存在として重要な役割を果たしています。
第2章:ノウサギの食性と消化生理
2-1. 基本的な食性
ノウサギは草食性(ハーブ食)であり、主に草やクローバーなどの草本植物、若い枝や樹皮、芽などを食べます。夏場には柔らかい栄養価の高い植物や果実を好む一方、冬には木の芽や樹皮をかじる「ブラウジング(browsing)」が増えるなど、季節や場所によって食べるものを柔軟に変化させることができます。食料が乏しいときは、ふだん好まない植物でも生き延びるために口にするなど、環境に対する適応力が高いのも特徴です。
2-2. 季節や環境による変化
夏季には、ノウサギは草や花、野菜、農作物などの柔らかい植物質を多く摂取します。対して冬季には、降雪や低温により柔らかい草が減るため、新芽や小枝、樹皮など繊維質の多い硬い部分を食べる割合が高くなります。積雪の多い地域では、後脚で立ち上がって高さのある枝や芽にまで口を届かせるなどの工夫も見られます。
2-3. 種ごとの代表例
アラスカノウサギ(Lepus othus)は北極圏に近い地域に生息し、夏は限られた緑色植物を、冬から春にかけては低木の樹皮や小枝、地衣類などを食べます。サンホセ島のクロノウサギ(Lepus insulares)は島の限られた植生(草やハーブ、サボテンなど)に依存していると考えられています。マウンテンヘアー(Lepus timidus)は寒冷地の高山やツンドラに適応し、草本植物のほか、若木の芽や葉を食べるほか、昆虫や鳥の卵を少量摂取することもあります。ブラックテイルジャックラビット(Lepus nigricollis)は砂漠や草原、農地に生息し、草や多肉植物、低木の芽などを食べ、ヨーロッパノウサギ(Lepus europaeus)は穀物や野菜など農作物にも手を出しやすく、農家にとっては被害をもたらすこともあります。
2-4. 消化システムとコプロファジー
ノウサギは草食動物として、繊維質を分解するための多室構造の胃や腸内微生物を備えています。小腸では効率よく栄養を吸収し、大腸は比較的短いものの、大半の栄養が大腸に到達する前に吸収されます。さらにコプロファジー(糞便食)と呼ばれる行動によって、柔らかい糞を再度摂取し、消化しきれなかった栄養分や酵素を再利用する仕組みも発達しています。
第3章:子ノウサギ(leveret)の食事
子ノウサギは生まれた直後から体毛が生えており目も開いていますが、最初はまだ成長過程にあるため、母親の母乳に依存して過ごします。ノウサギの母乳は脂肪やタンパク質が豊富で、子どもがすばやく体力をつけ、独立に必要な運動能力を発達させるのに役立ちます。
生後3週間ほどすると、子ノウサギは草やクローバーといった植物を少量ずつかじり始めますが、生後8週程度までは引き続き母乳からの栄養がメインとなります。成長するにつれ、様々な植物を試しながら摂取量を増やし、自力で餌を探せるように学習していきます。
第4章:どのくらいの量を食べるか
ノウサギはウサギ類に共通するように、体重に対してかなりの量の植物質を必要とします。これは高繊維の植物をエネルギー源とするために、大量の摂取が不可欠だからです。ただし、実際の摂取量は、種や季節、利用できる食物資源の状態などによって大きく左右されることが知られています。
第5章:ノウサギが好む代表的な餌
ノウサギが特に好む代表例としては、まず草やクローバーのようなハーブ類が挙げられます。夏季にはこれら柔らかい緑色植物に加えて、農作物(ニンジン、レタス、キャベツ、小麦、大麦、オーツなど)を食べる場合もあり、人間の畑や庭に侵入して被害をもたらすことがあるほどです。
また、冬季には樹皮や新芽、小枝などをかじり、タンポポや野生の花の花びら、ベリー類やリンゴなどの果実を見つければ食べることもあります。マウンテンヘアーのように、虫や鳥の卵など動物性のものをまれに摂取する例外も報告されています。
第6章:ノウサギにまつわる興味深い点
ノウサギは強力な後脚を活かして時速70km以上で走ることがあり、跳躍では6mほどの距離を飛び越えることができます。長い耳は外敵の音を敏感にキャッチでき、危険を察知すると一瞬で高速走行に移れるため、捕食者から身を守りやすいのです。
さらに、雪の多い地域に生息する種は冬になると体毛を白く変化させ、雪原に溶け込む保護色として活用しています。一方で、農作物への食害などから人間と軋轢を生むこともありますが、生態系の食物連鎖を支える重要な動物である点も見逃せません。
引用元
https://www.animalwised.com/what-do-hares-eat-4583.html